1日、米空軍協会主催の朝食会で講演した米空軍のJohn Cooper兵站部長(中将)は、3年半続いた約4000名の整備員不足への対処方針を決心し、2021年までには100%不足を解消したいと語りました。
ただ整備員養成数を増加させる等の措置を執るものの、「パイの奪い合い」「質の確保」「民間委託」等の課題が完全に払拭できるわけではなく、悩ましい状態が今後も継続する事に間違いなさそうです。
この問題は、A-10を退役させて熟練整備員をF-35に「振り回す」構想が頓挫したことや、対ISIS作戦の激化で航空アセットへの負担が想定以上に重くのしかかり、整備所要が急増している等々から生じており、「快刀乱麻」の解決策は存在しません
3日付米空軍協会web記事によれば
●Cooper兵站部長は朝食会で、3年半に亘って米空軍を悩ませている約400名の整備員不足を、2020年か2021年までに100%解消する計画だと語った
●米空軍は必要な人的戦力を(他の分野から)整備分野にシフトさせる決定を行い、そこ不足人員は既に3400名程度にまで減少していると説明した
●また整備員の養成数を劇的に増加させてもいると同中将は説明したが、人的戦力のシフトの状況を、どこかを犠牲にしてどこかを穴埋めしている状況だと認めざるを得なかった
●そして新たな整備員養成増加の実態として、整備員不足部署を若くて経験不足な新人で埋めざるを得ない状況にあると兵站部長は説明し、「整備員の量の問題には対処しているが、質の問題にも今後は取り組む必要がある」と語った
●またF-35部隊での整備員不足に対しては、教育訓練部隊には民間契約業者に整備を委託する暫定的な対策を取り入れ、戦闘部隊には現役兵士の整備員を配置する方向で対処していると説明した
●なおCooper兵站部長は、民間委託する場合と空軍兵士で整備を担当する場合の費用の差はほとんど無いと付け加え、民間委託による経費の増大批判には該当しないと主張した
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人的戦力のシフト(decision to move critical accession manpower to maintenance)が、どの分野を犠牲にして行われているのか不明ですが、とても興味があるところです。
整備業務の民間委託に関し、James前空軍長官は在任時、空軍兵士と民間整備企業が現場で接することで、「空軍兵士が民間企業に引き寄せられる(人材が民間に流出する)」事を危惧していましたし、そのリスクを覚悟の上の「民間委託」なのでしょう。
また「民間委託」により、空軍内の整備員育成が「細る」マイナス面も無視できず、その影響は長期に亘り空軍の現場に残ることになります。
トランプ氏は軍装備の増強を掲げ、海軍艦艇や空軍機の増強を訴えていますが、予算面での厳しさに加え、「兵站の重さ」を無視したビジネスマン手法は現場の混乱を招くので、国防長官等がしっかりもの申して欲しいものです
米空軍が整備員確保で苦悩
「航空業界全体で人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22