シミュレーション上での結果ですが
16日、ロンドンでDefence IQが主催して開催された「国際戦闘機会議」で、シミュレーション上ながら、有人戦闘機と人工知能AIが操作する無人機の空中戦を行ったところ、無人機側の性能や支援態勢をかなり抑えた設定でも「多くの勝利:numerous wins」を収めたと発表があったようです
発表したのはオハイオ州に所在する社員わずか3名の人工知能開発会社「Psibernetix」で、CEOのNick Ernest氏は、米空軍研究所AFRLが主導する研究を担っていると説明し、今後の航空作戦機の大きな課題を、「無人機の群れ」操作と「有人機と無人機のチーム編成」だと語って研究開発の状況を説明したようです。
18日付米空軍協会web記事によれば
●同社が扱っている人工知能「Alpha」は、2013年にボーイング社が空軍研究所に納入した敵の行動をシミュレーションするアルゴリズムを改善する目的のプログラムだった
●この人工知能「Alpha」を、Psibernetix社が「ファジー理論」を活用して劇的に改善し、無人機と有人機を組み合わせた様々な高度なシミュレーションに成功した
●16日の講演で同CEOは、操縦者が12機の有人機を模擬し、人工知能「Alpha」が操作する無人機と、どのような空中戦闘を繰り広げたかを解説した
●シュミレーション設定では、有人機はAWACSの支援を受けた上質の従来型戦闘機で、人工知能「Alpha」が操作する無人機は、最大速度を200ノット落とし、加速性能や旋回性能も抑え、AWACSの支援が無い状態で戦った
●この様に人工知能「Alpha」操縦の無人機は不利な条件下だったが、有人機との戦いで「多くの勝利:numerous wins」を収めた。
●「有人機2機VS無人機2機」の設定でも、「有人機4機VS無人機2機」の設定でもその様な結果だった
●人工知能「Alpha」は、他の同様の人工知能とは異なり、計算能力をそれほど必要とせず($35 Raspberry Piで動作)、自ら学習するだけでなく、学習結果が数秒間で生かされる優れたシステムである
●しかし同CEOは「Alpha」がまだ開発初期段階にあると語り、「現実の事象を正確に表現しているわけではない」「より素晴らしい結果を得るには、まだやるべき事が多く残されている」「しかし極めて興味深いデータが得られている」と説明した
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昨日はカーライル大将の同イベントでの講演をご紹介しましたが、この国際戦闘機会議(International Fighter conference)は非常に興味深いイベントです。
我が空軍も、三沢で英空軍戦闘機とチャラチャラしてるくらいなら、このような将来を考えるイベントに人材を派遣して「頭を冷やす」べきではないかと思います
「パイロットの7分頭」と申しまして、どんなにベテランで優秀なパイロットでも、重いヘルメットをかぶり、酸素マスクを付け、機体にベルトで固定されて上空に飛び上がり、戦闘機の状態を各種計器でモニターしながら敵機と戦うとなれば、地上で可能なレベルの6~7割程度の判断能力しかないと言われています
ですから、空中戦に参加している各機の位置や状況が把握できて人工知能にインプット可能であれば、「パイロットの7分頭」に人工知能が勝利する可能性は十分あるのでしょう。
詳細は不明ながら、無人機側の性能や体制をかなり抑えていても「numerous wins」ですから、実際上空のパイロットは「4分頭」程度なのかもしれません。
この人工知能をわずか3人の会社が進化させ、安価で大量投入可能な「無人機の群れ」制御技術と結びつけば、有人戦闘機パイロットがしがみつく「制空」の概念は根底から変化するのでしょう。
我が空軍が「亡国のF-35」に振り回されている間に、そんな時代を迎えることになるのでしょう・・・むなしい・・・
なお以下の表現は、無人機側の機動制限を記事が描写した部分です。専門用語で理解不能なので、有識者の皆様のために掲載しておきます
「They turned us down to 1.9 radial Gs, which is pretty low for a fighter aircraft」, Ernest said. 「And we were restricted to 0.19 max for linear Gs, which is about 75 percent of the acceleration of a Honda Odyssey minivan」
無人機の群れ関連
「国防長官が技術飛躍有りと」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04
米空軍の将来制空アセット検討
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
人工知能「Alpha」の日本語解説記事
→http://wired.jp/2016/07/04/ai-fighter-pilot/