ICBM後継ミサイルの開発経費で意見相違

James AFA1.jpg9月20日、James空軍長官が米空軍協会総会で記者団に対し、ICBM「ミニットマン3:Minuteman III」の後継検討GBSD(Ground Based Strategic Deterrent)に関し、2018年度予算案への入れ込み検討を行っているが、経費見積額について米空軍と国防省の間で未解決の相違があり、話の進展が滞っていると語りました
空軍長官は、双方の見積もりの間に大きな差はないと述べ、今後入手する様々なデータを基に見積もりのズレが解消されるだろうと余裕を見せていますが、国防省側は他装備の状況から、企業と各軍種の見積もりに不信感たっぷりであり、そんなにすんなり進むとは考えられません
そもそも、米軍核戦力の維持改善には約10兆円必要との見積もりもあり、とても現在の予算や他の装備品計画からして収まるものではありません
Minuteman3.jpg例えば、戦略原潜オハイオ級の後継艦にしても、現オハイオ級が3000億円以下なのに、国防省設定上限でも4900億円で、実際の米海軍見積もりはその上を行く5400億円にまで現時点でも膨らんでいます。
また次期爆撃機B-21も、1機550億円縛りで80~100機購入を前提としてますが、早くも270機必要だとかの声が米空軍協会総会でも出ています
そんな中ですから、ミリミリ精査したい国防省側と、他軍種に負けないよう「パイをぶんどれ」の空軍との話が円滑に進むとは到底考えられない状況です
James空軍長官の発言概要
●20日James空軍長官は、米空軍と国防省の見積もりの間には「An unresolved discrepancy:未解決の相異」があると記者団に語ったが、その差は「not that high」であり、ICBM開発を40年間やってこなかったのだからコスト計算に色々な考え方があるのは致し方ないと表現した
James AFA2.jpg●同長官は、短期的にはWork副長官から提供されるインプット情報を基に、米空軍と国防省コスト分析&計画評価室が計算を行い、現在国防省内で行われている2018年度予算案編制に必要な数値を導出する事になると語った
●更に長期的には、10月末に本プログラムに参入する3社(ロッキード、ボーイング、NG)から各提案を入手し、より正確な見積もりを導出すると説明した
●「我々は情報を得るまで、つまり各企業から提案を受けるまで確かな情報を持てない。企業情報により、より細密なコスト見積もりが可能となり、米空軍として本事業に関する立ち位置を決めることが出来る」と語った
●そして「今後2~3ヶ月にわたり、正確な見積もりのためになすべき事を全て行い、予算計画サイクルに載せることに全力を尽くす」「ただし実際の課題は、来年以降に継続的に見積もりを精査して洗練させて予算サイクルに載せていくことにある」とも表現した
国防省側:GBSDはF-35以上に不透明かつ巨大
Minuteman3m.jpg匿名の国防省高官は、GBSDの試験&評価プロセス、つまり次期ICBMの試験評価は史上最大で、F-35以上になる可能性があると語った
●そして、ICBM試験の難しさは、直陸させられないことにあると表現し、海面に着弾させて破壊されてしまうからだとも述べた。そのため実試験までには、膨大で精力的なシミュレーションやモデリング分析が必要になると語った
●また、試験&評価を考える上で不確定な点が多すぎるとも指摘し、何発購入するのか、指揮統制施設の改修はどうするのか等々の疑問点も指摘した
おまけ:オバマ大統領を牽制?
国防省は「核の先制不使用宣言」には向かわない
Kirtland-nuke.jpg●27日、カーター国防長官は米空軍の核兵器開発の中心であるKirtland空軍基地で記者団の質問に対し、微妙ないい振りながら核兵器の先制使用を否定していない米国の現姿勢を、北朝鮮等を抑止するための同盟国等へのコミットメントだと表現しました
●そして「我々は将来に亘り、核の傘を提供している同盟国へのコミットメントに見合う能力を保持する予定だ」と語りました
●(記者からの、先制不使用宣言にYesかNoかとの確認の質問に、)「It has been our policy for a long time and it’s part of our plans going forward」と答えた
オバマが「核兵器を先制使用しない宣言」を検討中
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07
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James空軍長官は今回の空軍協会総会で、「今回の総会参加が空軍長官として最後になる」と時期は未定ながら退任を表明しています。
米空軍事業の3本柱、F-35とB-21とKC-46Aに一定の目途が立ったからだと説明しましたが、さぞかしお疲れだったのでしょうし、まんぐーすだったら「もうやってられない」との気持ちになっている環境だと思います
ICBM James.jpgそんな空軍長官から「実際の課題は、来年以降に・・」と言われると、お先真っ暗なんだろうな・・・と思います。
そう言えば同じ立場のケンドール国防次官も、3~5年先の計画ならあるが、その先は全く決められないと「さじを投げた感」の発言をしています。老朽装備品の更新や重要装備の調達計画が目白押しで、予算に収まらないことが明白で、何を削るかの議論に全く手つかずだからです
まだ米国はオープンに議論できるだけ増しです、日本など、何が何だか判らないうちに正面装備だけが膨らみ、組織のゆがみや現場の悲鳴を誰も聞かないし言えない状態ではないかと危惧しています
ICBM後継に関する記事
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「次期空母の建造費を削れ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-07
オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

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