19日、米下院が2017年度予算関連の法案を公表し、5年前に製造ラインが廃止されたF-22を再製造する場合の必要経費を見積もるよう、米空軍に要求することが明らかにしました。
当初は749機を製造する予定でしたが、当時のゲーツ国防長官が190機あまりを製造した時点で製造中止を決定した戦闘機で、この決定に不満な態度を示した当時の空軍長官と空軍参謀総長が同時更迭(核兵器部隊に不作為や無人機導入への抵抗も背景に)され、日本ではあの田母神空幕長(当時)が「のどから手が出るほど欲しい」と発言した戦闘機です。
運用開始後しばらくは酸素供給装置の不具合で実戦投入が遅れましたが、対IS作戦では第4世代機と編隊を組んで「戦力増強剤:Force enabler」として高評価を得ており、韓国や沖縄や東欧諸国に展開して戦力誇示や抑止効果発揮にもプレゼンスを示しているところです
19日付Defense-News記事によれば
●米下院軍事委員会の戦術空陸戦力小委員会は、2017年度の国防政策法で米空軍に、追加で194機以上を調達する場合の関連経費見積もりを行うよう米空軍に命じる
●法案は、「敵対国が技術格差を縮めて米国の航空優勢に対する脅威が増し、同盟国等からもその高い性能と多用途性が悪化しつつある安全保障環境に適していると派遣要請が増加していることから、本委員会はこの見積もりの提案に意義があると信じている」とその趣旨を説明している
●しかし、これまで米空軍幹部は繰り返し、その膨大なコストからF-22再生産はあり得ないと発言している。
●2010年に米空軍の依頼により行われたRANDの研究によれば、75機のF-22を再び生産するためには、約1兆9000億円(1機当たり約230億円)が必要と見積もられた経緯がある
●なお同小委員会は、2017年1月1日までに見積もり結果を報告するよう米空軍に命じる
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「costs associated with procuring at least another 194 F-22s」と記載があるので、「追加で194機以上を調達する場合の関連経費見積」とご紹介しました。
これだけの機数調達を「一応」検討すると言うことは、F-35の機数削減とセットなのでしょうか? F-35の出来具合が明らかになり始め、F-35の調達機数を削減してでも、F-22追加導入を考えたいのでしょうか?
実現する可能性は極めて少ないと思いますが、その気持ちが知りたいです
なお亡国のF-35に関しては、米国の会計検査院GAOが、完成後の機体改修経費に5年間で4000億円近く必要になる見積もりがあるが、それだけの規模の予算が必要なら、本体予算に混ぜ込んで曖昧にするのではなく、別事業としてしっかり手順を踏めと「警告」しています。日本での対応が気になります
ちなみにゲーツ国防長官(当時)はF-22に関し、脅威の変化を見据え、老朽装備更新が重複発生する事が予期されている中で、空軍が制空主任務のF-22に膨大な投資をする事への疑問、戦闘機族への根本的不信感などから中断決定しました
追伸:衝撃の再生産見積もり背景
Randy Forbes下院議員(共和党)が選挙区を変更することになり、新選挙区にF-22の母基地(Langley)があることから「再生産見積もり」を行わせるとのDefense-News分析記事
同議員は一応、F-22とF-35は役割が異なるので、F-35調達とのトレードオフは考えていないと発言しているようです。何を考えているのやら・・・どろどろの政界模様です
→http://www.defensenews.com/story/defense/air-space/2016/04/21/facing-election-fight-forbes-pushes-f-22-revival/83352746/
F-22関連の記事
「フィリピンにF-22を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16
「5世代と4世代機の融合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-08
「F-22もシム活用で飛行削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1
米軍事メディアの「心神」への冷徹な視点
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16