「Politically Unpopular」な話題です
12日、米国防省が全体の2割以上を占める過剰な基地や施設の再編閉鎖を求めるレポートを議会に提出したことを受け、地元経済等への影響が大きいことから、政治的に反対する議員との間で激しいやりとりが始まっています。
基地の再編閉鎖BRAC(Base Realignment and Closures process)は、前回の2005年を最後に検討実施が止まっており、その間に20万人もの兵士と関連装備が削減されているのに、固定経費の維持費ばかりが無駄に支出されていると米国防省は主張しています
議員側は、再編閉鎖にも相当な予算が必要だとか、見積もりの前提が正しくないとか色々難癖を付けていますが、この問題は米国防省と議会の対立の象徴的分野で、無駄がある事は間違いないようなので、前線兵士に予算が回るよう双方が折り合って欲しいものです
米国防省の主張
●国防省の主張によると、全体で22%の施設が過剰である。軍種別で見ると、陸軍が33%、空軍が32%、海軍が7%、国防兵站庁が12%が過剰施設である
●この背景には米国防省や米軍の人員削減があり、前回2005年のBRAC以降、米陸軍は57万人から45万人へ、海兵隊は20万から18万へ削減される予定で、空軍は5万人と500機を、海軍は3.6万人を既に削減済み
●Work国防副長官はレポート提出に合わせ文書を発表し、「今回議会に提出した提案には、議会側が懸念している再編閉鎖経費に対する懸念にも回答するものである」と説明している
●更に副長官は「BRAC計画無しに経費を一律削減することで生じる軍事的損失は、BRACと比較して遙かに大きい」、「地域社会も計画的に影響に対処可能で、その影響を局限できる」とも訴えている
●また「5年以内に経費削減を生み出し、20年以内に関連施策が終了するように配慮して計画した」、「地域への社会経済的影響がある事は認識しているし、痛みを伴うものであることは承知しているが、維持経費の効率化で節約できる額は限定的だ」と説明している
議員側の反対
●Kelly Ayotte上院議員は、BRACに必要な経費を今後5年間のタイトな国防予算の中から捻出する事は、目の前にある戦いへの予算を傷つけることになりかねない。
●前回2005年のBRACでも、実行段階で必要経費が67%も計画より膨らんだことがあり、現下の厳しい予算状況でそんな余裕はないはずだ
●Tim Kaine上院議員は「不必要で偏狭なBRAC推進のために、膨大なロビー活動や弁護士活動が行われている」と国防省の動きを非難し、国防省のインフラ合理化にはより良い方法があるはずだと述べている
●下院軍事委員長のThornberry議員は、「議会が求めた2012年時点でのデータで分析を行わず、2019年時点での予測米軍構成を基礎に分析を行っている」と分析の前提にケチを付けている
●また「国防省が提出したレポートは、議会が知りたい情報が含まれていない」と述べ、2005年のBRACが、史上最大で複雑でコストが膨らんだ削減再編であったことに言及した
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米国防省は、F-35やB-2や沿岸戦闘艦LCSの開発遅延や価格高騰で十分評判が悪く、価格2倍の次期空母や次期戦略原潜でもさんざん叩かれている「前科者」です
でもBRACに関しては、「議会の機能不全」や「議員の選挙区への利益誘導」に目が向けられるべきだと思います。、「大統領選が近づくと無視されるだろう問題点」と皮肉たっぷりに表現されることがある課題です
米国防省も議会には期待していないでしょうが、世論に訴える機会としてアピールを狙っているのでしょう。
日本でもあります。北海道の陸上自衛隊を削減し、南西方面を強化しようとした際、政党としては自衛隊に反対姿勢の社民党や野党地元議員が、「自衛隊の削減反対」をぬけぬけと訴えるのです。
選挙で当選するためなら、何でもやる・・・こんな政治屋が山ほどいます・・・
有識者が訴えるBRAC
「研究者38名が国防予算改革を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-25
「研究者25名が国防改革を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-06
「4大研究機関が強制削減対処案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30