イスラエルF-35は独自装備に独自整備

ALISはミサイル攻撃を受けない国を対象に構築されている
F-35 Israel4.jpg4日付Defense-News記事が、F-35の形態や整備体制について米国防省が厳重に管理しているにもかかわらず、イスラエルが独自のC4や照準システム搭載、機体形状の変更を伴う燃料搭載量の増加、更には機体の大規模修理までを世界ネットワークを離れて独自に実施する方向で調整していると報じています
イスラエルはF-35の共同開発国ではなく、日本や韓国と同じように、後出しで購入を申し出た国です。
普通は「売って頂けませんか」と下手に出るのでしょうが、イスラエルと米国の関係は全く別格ですので、この様な要望を米側も企業を含め前向きに検討することになります。
冒頭紹介した言葉は、イスラエル独自のF-35大規模整備施設が必要な理由を、イスラエル空軍のF-35準備担当幹部が説明した言葉です。この言葉の論理からすれば、日本の愛知県小牧市にF-35のアジア整備拠点がある事は、望ましいことでしょうが・・・本当かなぁ・・・
4日付Defense-News記事によれば
F-35 F-16I.jpgイスラエルは、今年12月にF-35初号機を受領し、2017年末に初期運用態勢を確立する計画である。IOCに向けイスラエルは、Lockheed Martin社と米国防省F-35準備室と共に、イスラエル独自の装備搭載や形態の変更に取り組んでいる
●また、米国防省が熟慮の上決定した世界のF-35整備ネットワークとは別に、イスラエル国内に独自のF-35整備拠点を設ける方向で協議が行われている
●機体受領後に同国の航空軍事産業IAI(Israel Aerospace Industries)が、F-35搭載のアビオの上にイスラエル独自製造のC4システム搭載取りかかり、イスラエル空軍に新たな自由度を与える
●IAI社の担当部門責任者は「iPhoneにアプリを搭載するようなイメージで、中核アビオシステムに能力を付加する。航空機自体には一切手を出さず、最新の処理能力をイスラエル空軍に付与する」と表現している
Spice 1000.jpg●兵器関連では、F-35内部にRafael社の「Spice 1000 GPS&光学精密誘導爆弾」を搭載する協議が行われている。
●ロッキード関係者は「現在も検討開発を行っており、同システムと機体との適合について確認検証を行っている」と述べている
●また、Elbit Systems社の子会社とロッキードは、ステルス性維持に配慮しながら航続距離を伸ばすため、機体形状に沿ったコンフォーマル外装燃料タンクを検討している。イスラエル軍事産業筋は、本件に関してはF-35共同開発国の同意を得て進めると語った
被害前提でイスラエルは整備拠点を要望
●3日、イスラエル空軍参謀長は講演で、米国防省が決定しているF-35兵站支援組織を離れ、イスラエル独自に機体やエンジンを修理・定期点検できる体制が必要だと述べ、「イスラエル南部のNevatim空軍基地に兵站センターを設置する交渉を進めている」、「イスラエルは兵站面で最大限の独立を求めている」と語った
F-35 MHI.jpg●またイスラエル空軍F-35担当者は、「ロッキードのALIS(F-35自動兵站情報システム)は効率的で効果的だが、ミサイル攻撃を受けないような国を想定している」と述べ、イスラエルの空港や港湾施設が有事攻撃を受けて使用不能になった場合でも、F-35の運用を国内で維持できるようにしたいとの意向を示した
●同担当者は更に、「ALISへのフルアクセスを得られるだろう」とも述べている
●一方でロッキード幹部は、本格的整備は本計画が求める監視を含む厳格なセキュリティー管理の下で行われるべきで、「指定された施設で行うことが前提となっている」と原則を述べている
●ロッキードの担当副社長は4日、「慎重な検討の上、現在指定の北米、欧州、アジアの本格的な修理整備施設を指定している」、「しかしイスラエルは独自の維持能力保持を求めており、彼らが可能な範囲で出来るだけの作業が可能なようにしたい」と語った
●3日イスラエル空軍参謀長は、イスラエルがF-35に求める独自の要求や高い運用頻度は、世界のF-35計画全体に教訓となる情報を提供することになるとの考えを示し、「中東情勢からすれば、イスラエル空軍のF-35は、短期間で多様で膨大な運用経験を積むことになる。これらの経験はF-35開発に適応されるだろう」と述べている
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F-16-Israel.jpgイスラエル空軍F-35は、恐らくイラン核施設を攻撃するため航続距離を延伸する必要があり、コンフォーマル外装燃料タンクを必要とするのでしょう。
この空力特性やステルス性に極力影響を与えない増加燃料タンクは、左の写真のように、イスラエル空軍F-16Iにも改修が行われています
本来ならば、イスラエル空軍F-35は、イタリアの整備施設で大規模修理や点検を行うことになるのでしょう。これを無理矢理イスラエル国内で「やらせろ」とのご要望です
空港や港だけが被害を受け、整備施設は被害を受けないの???・・と問いただしたいところですが、巨額の維持整備費用が動く話でもあり、「魑魅魍魎」がうごめく舞台裏の交渉なのでしょう
記事の雰囲気からはイスラエルの希望を認める方向にあるようですが、イスラエルが「蟻の一穴」となり、例えば「韓国」が騒ぎ始めるのではないでしょうか?
アジアのF-35整備拠点は日本となっており、韓国の主力戦闘機F-35は、三菱重工小牧南工場で整備することになるはずですが、簡単に落ち着く話とは到底思えません
それから「ALISへのフルアクセス」との言葉も気になります。世界中のF-35トラブルを「のぞき見可能」にするのでしょうか? プログラムを見せるのでしょうか?何でもありのイスラエルです。
F-35の問題点を整理
「民間団体が辛辣なF-35現状評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-20
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「アジア整備拠点は日本と豪州」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-18
イスラエル関連の記事
「在シリア露軍とは意思疎通良好?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01-1
「露軍機が領空侵犯でも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-30
「露がイランに高性能SAM輸出へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-10-1
「史上最大の多国間空軍演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-03
「新統参議長:初海外はイスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20
「中東でイスラエルはF-35独占?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-13

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