速報分析&軍事的評価:露空軍のシリア作戦

Su-30 Russia3.jpg18日付Defense-News記事は、3週間目に入ったロシア空軍のシリアでの軍事作戦について、ロシア関係者を含む複数のソースの「現時点」評価を紹介しています。
ロシア製レーザー誘導爆弾やGPS誘導爆弾の初使用や、カスピ海艦隊からの巡航ミサイルの発射等、「失われた90年代の遅れ」をロシア空軍が取り戻しつつあり、能力回復ぶりをアピールしたのではないかと紹介しています
一方で、ロシア軍が攻撃で破壊したとする「攻撃対象」の車両や兵器を分析すると、相手がISが穏健なシリア反政府組織に拘わらず、「攻撃対象」の主要兵器は生き残っているはず、との評価も紹介されています
なお本記事では、ロシアが何を「攻撃対象」にしていたかについては突っ込んでいません。兵器技術に焦点が当たっています
露軍参謀本部のKartapolov主要作戦課長
16日の記者会見で
●9月30日に空爆を開始して以来、IS目標を456個攻撃した
●総計で669ソーティーの活動を行い、そのうち夜間攻撃は115ソーティーであり、272カ所の敵拠点を破壊した
(●BBC報道によれば、15日夜、シリア政府軍がHoms北部に対する攻撃を開始した)
ロシア国防省がSNSで最新作戦状況を発信
SU-24-1.jpg露国防省は、毎日のようにFacebookを更新し、彼らが言う対IS攻撃で、何をシリアで行っているかを示そうとした
15日の更新では、作戦開始以来初めて、1日の攻撃ソーティー数が40回以下となったと紹介されている。「攻撃対象」が撤退や陣地変更を企てていることから、露軍は当該状況を偵察して最新状況を把握している途中なためだと説明している
●出撃数が最大だったのは12日で、88ソーティーで対IS目標86カ所を24時間以内に攻撃したとしている。真実だとしたら、作戦機30機のよる攻撃とすれば相当の数である
IHS Jane’sのBen Moores主任分析官は
Russia Kh-25.jpg●Moores主任分析官によれば、ロシア軍は多様な兵器を使用した。クラスター弾、焼夷弾、無誘導の普通爆弾、ロケット弾、巡航ミサイルGPS誘導爆弾や光学誘導爆弾が登場し、ロシア空軍は基礎的な兵器しか使用出来ないとの概念をくつがえした
●また、Su-25は無誘導の普通爆弾だけを中高度から投下した模様だが、攻撃ヘリは低高度から相当積極的な激しい攻撃を行った模様
●更に、ロシア空軍は「攻撃対象」が離散する前に大きなダメージを与える事が出来たことは明白だが、攻撃後に残された装備や車両からすると、「攻撃対象」の重装備は多くが生き残っていると考えられる
IHS Jane’s:ロシアが空爆で使用した兵器
Russia KAB-500S.jpg●正確な使用比率は不明だが、大部分の空爆は無誘導爆弾で、露軍が初めて使用した精密誘導爆弾として、レーザー誘導爆弾Kh-25と露版GPSグロナス誘導爆弾KAB-500Sの使用が見られた。
●無誘導爆弾では、対人破片爆弾OFAB-100やOFAB-200が使用された。またクラスター爆弾RBK-500-SPBE-D、焼夷弾ODAB-500PMB、貫通弾BetAB-500 M62の使用が認められた
●米国NATO大使Douglas Lute氏のNATO本部での記者会見によれば、プーチンの誕生日である7日にカスピ海所在の露艦隊から発射された26発の巡航ミサイルは、イラン領空(イラクも?)を通過してシリア内の目標に到達した
●後に米政府高官は、26発の内、4発がイラン領内に着弾したと発表している
前露軍参謀本部スタッフのBuzhinsky退役中将は
Russia OFAB-200.jpgロシア空軍は、従来の地上部隊支援任務とは別に、西側軍のように精密誘導兵器で地上部隊から独立して目標攻撃を開始した。同空軍はWW2以来、防空と地上部隊支援で使用されてきており、地上部隊から独立して町や領域やインフラ攻撃を行ったことはなかった
●ロシア軍は、ISと西側支援の穏健反政府勢力を区別しておらず、シリアにいる全ての過激派を撃退しようとしている
●これは、軍事ドクトリンの変化と言うよりは、西側産業が遙かに進んでいる分野で、ロシア軍需産業が90年代の遅れを巻き返しつつある事を示している。
ロシア空軍が初めて精密誘導兵器を使用した作戦となった。西側が1991年の湾岸戦争で同壁を大量使用する中、露軍は本分野で大きく後れを取り、シリアでの作戦は露軍近代化の試験のようなものだった
露の軍事専門家Mikhail Barabanov氏は
Russia BetAB-500 M62.jpg●兵器が新しくなり、西側が過去20年間に見せたと似たような作戦を露空軍は行ったが、直接の地上部隊支援の比率が低かったのを除けば、アフガニスタンで当時のソ連空軍が行ったのと極めて似た航空作戦だった
●精密誘導兵器の使用は兵器の進歩による当然の変化で、単に90年代にロシアが経済的に困窮していたために遅れたものである
●ただし、ロシア軍が直面する大きな問題は、空爆では目標は達成出来ず、シリア政府軍による攻勢の条件を整えるだけだということである
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とりあえずの「速報分析」です。
ロシア軍が、「攻撃対象」のISRをどのように行っているのかにも興味がありますので、関連の報道等があれば勉強してみたいと思います
クラスター爆弾・・・日本は偽善の波にもまれ、大金を出して全て破棄してしまったんですよね・・・
ロシア軍は好き放題で使用してますよ・・・
ロシア軍が「精密誘導兵器」を使用したのは初めてなんですね・・・。それから、ロシア版GPS「グロナス:Glonass」を活用した誘導爆弾が使用された事も興味深いです
細部の効果分析が公開されるのか不明ですが、これも興味深いところです
ロシア軍のシリア作戦関連
「プーチン:地上戦はしない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-12
「ロシア軍が鉄の壁」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07
「2日連続トルコ領空侵犯」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-06
「露空軍空爆開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-30-1
「対ISに暗雲:露軍展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-21
「シリアは地政学チェルノブイリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23
「イラン核合意で中露が中東で好き放題」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-08

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