2030年代を見据えた次世代の航空優勢獲得を検討する取り組みが、米空軍で始まっています。
2016年度予算案の発表時点で複数の米空軍幹部が触れていたのですが、本日は米空軍省で調達担当軍人次官であるEllen Pawlikowski中将へのインタビューを中心にご紹介します
「次世代の制空獲得を検討」との「回りくどい」表現になっているのは、検討の視点が単純に「第6世代戦闘機」となっていない点がポイントだからです
日本では、「心神」とか言う5世代戦闘機もどきの開発を「声高に叫ぶ」風潮があるようですが、時代は既にその先へ進んでいます。
少なくとも「戦闘機」との枠組みに捕らわれず、脅威の変化を精査し、「制空:air dominance」のためにどんな手段があり得るのか、白紙的に検討しようとの姿勢があります
米空軍は本分野で「同盟国との協力」も重視していますので、ある日突然米軍から相談され、「心神」を自慢げに持ち出して「鼻で笑われないよう」したいものです
20日付Defense-Techによれば
●米空軍は、2030年代を見据えて、新たな航空優勢や制空に向けた技術を見定めるための取り組みを開始している。
●中国や北朝鮮等の軍が備えるであろう先進脅威を想定し、革新的な技術を見極め実験するチームを既に立ち上げて検討を開始している
●Pawlikowski中将はインタビューで、「我々は米空軍と同等の脅威に直面するだろう事を想定し、同盟国とも協力し、全世界の技術市場の力を総動員して対応したい」と語った
●この取り組みは米空軍研究所や国防省DARPAとともに進められており、超超音速飛行、ステルス、先進センサー、サイバー技術、無人機技術、エネルギー兵器、宇宙システム等々の技術を吟味している
●同中将は「単に次世代戦闘機を考えるのではなく、制空や航空優勢のために何が活用できるかを念頭に吟味している」と語り、「シミュレーション技術を活用し、新技術の有効性を確認している」と説明した
●例えば、超超音速技術では、兵器だけでなく、航空機への応用も検討の対象になっていると示唆した。
敵の防空システム進歩に対応し
●また同中将は進歩を続ける防空システム対処に関し、「周波数ステップや情報処理速度の進歩により、ステルス機がより遠方で探知されるようになると主張する人がいる。それは間違いではないが、ステルス自体も進歩しており、ステルス機のあり方も以前とは変化をし続けている」と語った
●また「ステルスで全てに対応するのではなく、ステルスと他技術を組み合わせて敵の技術に対応するのだ。スピードやステルスは非常に重要だが、それだけに頼るのではない。敵よりも素早く対処することが大事になる」と付け加えた
●米海軍トップのGreenert海軍大将は、「ステルス技術は過大評価されている。ステルス技術が終わったとは言わないが、その限界にも向き合うべき。大気中を高速で物体が移動すれば、探知は可能なのだ」と最近講演したが、Pawlikowski中将も似た認識のように見える
●航空評論家のRichard Aboulafia氏は「ステルスは数十年前より効果が減少してきているが、だからといって直ちにステルスを捨てる必要はない。敵に探知されるのが少しでも遅れれば、それは我にとって有利なのだ」と語っている
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最終的には、F-22やF-35に続く、第6世代戦闘機のイメージが浮かび上がってくるのかもしれませんが、せめて最初は「戦闘機に捕らわれない」議論から初めて欲しいものです
日本は、米国よりも中国の脅威と身近に対峙する必要があるのです。米国よりもよく考える必要があります
だから思います。「心神」を自慢げに宣伝する気が知れないと・・・。「勇猛果敢・支離滅裂」だけでなく、「浅学非才・馬鹿丸出」と言われてしまいますよ!!!
ステルス関連の過去記事
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09