F-35シミュレーターの連接問題

F-35-Full-Mission-Sim.jpg3日付Defense-Newsが、米国防省F-35計画室長Bogdan中将へのインタビュー記事を掲載し、米軍内及びF-35購入国間のシミュレータ連接が大きな課題だと紹介しています
技術的な問題ではないが、各軍種の違い」や「関係国間の情報セキュリティー」が連接上の大きな課題だと述べています
現状の米軍戦闘機(海、空、海兵隊)シミュレーターがどのような連接状態にあるのか、日本はどうしているのかに関し知識がありませんが、Bogdan中将の数多き悩みの一端をご紹介します
3日付Defense-News記事によれば
●3日、フロリダで開催された「I/ITSEC conference」での独占インタビューでBogdan中将は、順調に進めば米軍の3軍と少なくとも11ヶ国が使用するF-35は相互運用性の観点で優れているが、多様な軍種や軍隊所属のシミュレーター連接に関し大きな悩みを抱えていると語った
●同中将は「連接する技術が存在しないのではない。それぞれのシミュレーターが乗っているネットワークが各軍種や各国毎異なっているのが問題なのだ」と語った
Bogdan SIM.jpg●米軍内でも、海、空、海兵隊のシミュレーターは異なるシステム上で稼働しており、相互の情報交換が困難である。であるが故に、国防省が全軍を対象とした問題解決の取り組みを始めたのだと中将は語った
●どのように連接するかを具体化しなければならない。(技術的に)困難ではないが、どのような基準・規定で互いを連接するかが問題なのだとも説明した
●更に同中将は、この問題の解決には各軍種と国防長官室との協力・協議が求められるのだと説明した
●またこの問題を新たな課題と認識し始めたのが昨年からで、取り組みが始まったばかりであり、F-35計画室も連接問題解決のための予算を幾分か確保しているが、連接の方向性が不明確な現段階では予算の用途が決まらない状態だと認めた
国外のF-35購入国との関係では
●連接問題は米軍内だけに止まらない。11ヶ国以上と予想されるF-35購入国との連接問題も存在するが、その課題は国内問題とは大きく性格が異なるセキュリティーの問題だからだ
●同中将はその問題を「パートナー国が米国の模擬訓練システムとの連接を希望すれば、連接自体は大きな問題ではない。問題は、米システムが連接した相手国のシステムが、何処と連接されているかである」と表現した」
bogdan_gen.jpg●仮にトルコ軍のシミュレーターが米軍システムと連接された場合、トルコ軍の軍用サーバーがF-35のデータを提供したくない国のサーバーにつながっている可能性があるからだ
●このようにパートナー国との連接にはルールを定める必要がある。F-35計画室はその支援を行う用意がある
●しかし、このルール設定は国防省の別の部署が行うのだ。国家間のルール作成や相手国への要望は、F-35計画室の問題ではない。我々は他人の仕事に口出ししたくはないのだ
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2つ思うことがあります。
まず、軍事組織には、技術的には大きな問題は無くても、実現が困難な課題があると言うことです。つまり、軍種間の縄張り争いや組織防衛意識が、組織間の有機的融合や情報共有を妨げることがある点です
このシミュレーター連接などその典型でしょう。「お役所仕事」とか「官僚制の弊害」とも言えるでしょう
cyberwar.jpgもうひとつは、兵器の高度化に伴い、シミュレーターを活用した訓練が、軍事訓練の大きな柱になりつつある点です。
国民の権利意識や訓練経費の増大により、実際に人や装備を動かす訓練が困難を増す中、頭を切り換えて「バーチャルな模擬訓練」を積極的に取り入れる姿勢が、勝利を呼び込む時代かもしれません
「コンテナ入り簡易F-35用シミュレーター」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02

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