21日、NATOがオランダを中心に共同で空中給油機を調達して運用する枠組みが成立し、今後具体的な機種選定に入ることが発表されました。
関連の報道にはNATOをはじめ多くの欧州関係機関名が登場し、その繋がりや役割がさっぱり判らないのですが、NATOの欧州諸国が共同で空中給油機を持つ方向で具体的な作業が始まる様です
背景はもちろん、予算削減の中でアジア太平洋リバランスに取り組む米国から、今後は空中給油支援を十分受けられないだろうとの見積もりがあります
より端的に言えば、米国から「自分たちで空中給油機を準備しろ」と言われたのかもしれません
24日付Jane`s電子版記事によれば
●21日、欧州諸国による、多国間多機能タンカー部隊計画(Multinational MultiRole Tanker Transport (MRTT) Fleet (MMF) project)が正式にスタートした
●欧州国防庁(European Defence Agency)が要求性能等を取りまとめてきたが、21日、NATO Support Organisation (NSPO)とOrganisation for Joint Armament Cooperation (OCCAR)の間で、協力合意が署名された
●OCCARによれば、合意文書はNATOに代わり空中給油機の調達を管理監督する枠組みや条件を規定したモノで、プロジェクトはオランダがリードし、ノルウェーも参加することになっている
●両国はNSPO内で協力関係を確立し、空中給油機の取得と運用維持(operational sustainment)を監督(oversee)することになる
●21日の合意文書には含まれていないが、ベルギーとポーランドも共同プロジェクトに参加すると見込まれている。
●機種の選定に当たっては、エアバス社のA330-200 MRTT platform、ボーイングのKC-46A(米空軍の次期空中給油機)、更にAirTankerとOmega Airが参加を見込まれている
欧州NATOが空中給油機の共同運用の背景は
●空中給油機能は、作戦上極めて重要である。例えばリビア作戦では、8ヶ月間に多国籍軍が飛行した計2万6千回の飛行のうち、25%が空中給油機によるモノであった
●これまで欧州諸国は、米空軍のKC-135空中給油機(英国の空軍基地配備)に恒常的に頼ってきたが、アジア太平洋リバランスや強制削減により、これまで同様のサポートを米軍から得られないと考えられている
●同様の取り組みは、輸送機の共同取得&運用面でも実績があり、現在NATOの10ヶ国とフィンランドとスウェーデンが、ハンガリーのPapa飛行場を拠点に3機のC-17輸送機を、「NATO Strategic Airlift Capability (SAC)」の枠組みで運用している
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何機購入する予定か不明ですが、恐らく3~6機程度なのでしょう。その程度では戦闘支援能力は僅かです。
それでも欧州としては、何とか姿勢を米国に示す必要があるのでしょう。
機種選定は大いに揉めそうです。なにせ、欧州代表エアバス社の候補機首の名称に、すでに「MRTT platform」が含まれているのですから。
米空軍の給油機選定は、エアバス社とボーイングが血みどろの戦いを繰り広げ、お互いのクレーム合戦で3回も機種選定をやり直した、「負の遺産」たっぷりの「因縁の対決」でしたから。
「高見の見物」をさせて頂きます・・・
「泥沼米空軍KC-X:3度目の発表」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25