米国安堵:露製ロケットエンジン届く

RD-180.jpg20日、米軍用の打ち上げロケットを製造するUnited Launch Alliance社のアラバマ工場に、ロシア製のロケットエンジンRD-180が2台到着した。
今年5月13日にロシアのRogozin副首相が自身のツイッターで「米国がペンタゴン用にRD-180ロケットエンジンを使用しないと保証したら、同エンジンを継続して提供する」と呟いて以来、もし来なかったらどうするんだと大騒ぎになっていたところでした
なお米国防省はUnited Launch Alliance (ULA)社の、「Atlas V」と「Delta IV」の2種類のロケットを打ち上げに使用しており、「Atlas V」が露製RD-180エンジンを使用しています
22日付米空軍協会web記事は
rocket.jpg●ULA社報道官は「発注していたロケットエンジンの納入は問題なかった。これらエンジンは重要な米国の任務を支えるであろう」とコメントし、「今年後半に更に3台が納入されるだろう」とも述べた
●今回ULA社が受領した2台のエンジンは、Rogozin副首相の発言があって以来初の入荷である
●今後のULA社は、10月に3台、2015年と2016年にそれぞれ8台受領予定である。
●一方でULA社報道官は「露製RD-180エンジンは優れた実績を持つエンジンだが、国産ロケットエンジンへの投資を考慮する良いタイミングがとも考える」と述べ、「国産エンジンに関する検討を開始しており、5年以内に利用可能となろう」と語った
米空軍は公式に代替エンジンの情報収集へ
21日、米空軍は代替エンジンの為と推定される情報収集を公式に開始した。
RFI(request for information)を政府の調達関連websiteに掲示し、「booster propulsionやlaunch systemのオプションについて、国家安全保障上の打ち上げ要求を満たす情報提供」を求めている
7月下旬に米空軍宇宙コマンド司令官は
●米国には15機のRD-180エンジン在庫がある。仮に入荷がストップした場合には様々なオプションが考えられるが、1500億円から5000億円までの影響が考えられる。
●コスト面で考えた場合、RD-180を使用している「Atlas V」より、もう一つのロケットである「Delta IV」の方がコストは高い
●また、打上げ予定の衛星を当初計画より長期間「保管」することで、高額な保管経費がかさむことになる。少なくとも1年、ケースによっては4年保管もありある
5月下旬時点での状況
Fanning AF.jpg●Eric Fanning米空軍次官はインタビューに「直ちに代替エンジン開発を追求すべきとは思わないが、RD-180への依存を減らす方向を目指す必要がある」と語った
●更に同次官は「多くの選択肢があり、代替エンジン開発もその一つではある。その場合にも、空軍独自で行うか、企業と共同で行うか等の複数のオプションがある」と述べた
●一方で同次官は「露副首相は確かにつぶやいたが、その後公式につぶやきの件をフォローしてはいない」、また「ULAも公式・非公式にかかわらず何の連絡も受けていない」と語った
●ULA社は、RD-180を使用していない「Delta IV」の製造を加速すれば、「Atlas V」の代替が可能と主張している。
●しかし米空軍の特別検討委員会は、更にRD-180エンジンを露から調達しないと、2016年3月以降は国家安全保障に必要な衛星打ち上げを十分支援できず、重大な遅れが生じると指摘している
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
3月末に本件を最初にご紹介した際、UAL社長は「2年分のRD-180エンジンを保有している」ので、慌てる必要はないと発言をしていたところです。
その後に危機感がピークに達し、代替エンジンについて検討を始めたところ、2台が予定通り入荷して「ほっと」している・・との状況でしょうか。
Rogozin-RDPM.jpg思いっきり意地悪なロシアを想定すると、次の納入を遅らせて1台のみ提供し、米国を混乱させつつ、米国が代替案を決定しそうになったら予定通り供給するとか・・大いに揺さぶれそうな気がします
新規参入を狙う「SpaceX」が、米空軍や国防省を「ULA社だけ優遇しすぎ」と訴えているので難しいでしょうが
最近は、イスラム過激派ISISの悪党具合が目立っているのでロシアが目立ちませんが、困ったものです
露製ロケットエンジンを巡る米国の困惑
「5月末の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-22
「3月中旬の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-18-1

タイトルとURLをコピーしました