12日付米海軍協会web記事は、米海軍が空母艦載の電子戦機EA-18Gの増強を進める理由を解説しています。
もちろん中国やロシアの強固な防空網を想定しての増強ですが、1個電子戦部隊当たりの機数を現在想定の5機から8機に増加させる「理論」を解説し、背景にある中国等の防空網強化が生み出す「違い」にも触れていますので、参考までご紹介します
根本にあるのは、強力なネットワークで米海軍航空部隊アセットを連接して戦う作戦構想NIFC-CAの推進であり、同構想をご紹介した過去記事を補足する意味でも取り上げることにします
「米海軍の航空作戦構想NIFC-CA」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
12日付米海軍協会web記事は・・
●米海軍は次世代の航空作戦構想に適応するため、電子戦機の増強を見据えている。2015年度予算案にも22機のEA-18G購入が盛り込まれている。
●12日の下院軍事委員会でメーバス海軍長官は本要求について「現在はミニマムの機数しか保有しておらず、ヘッジとして保険分を要求するものである」と説明した
●米海軍は、16個の電子戦飛行隊の保有機数を現在の5機から8機に増やすため、48機の増加を求めることになる。
●更に搭乗員教育用に12機と、損耗予備や定期整備用の予備として約10機が必要と考えており、計約70機の増強を要求する必要がある。現在の総要求機数は135機(積み上げ根拠不明)だが、これは各飛行隊5機での計画である
●米海軍の航空作戦構想を担当するManazir少将は、新たなネットワーク等を用いたNIFC-CA構想の説明で、2機のEA-18Gの同時投入して敵兵器の電波発射位置を特定する手法を想定していたが、軍需産業関係者によれば、3機同時投入がベストであり、2013年夏の試験でも3機戦法で確認試験がなされた
●E-2Dも優れたESM能力を持つが、EA-18Gほどではなく、脅威への接近も困難である事も背景にある。
●ここで想定している敵脅威は、機動性の高い中国HQ-9や露SA-21レベルのSAMや、ステルス機追尾能力が高いVHFレーダーを備えた高度な統合防空網統合防空網である
●従来は敵の防空ミサイル等の状況把握や位置特定に衛星や偵察機を使用していたが、より機動性の高い上記のような脅威には効果的でない。
●そこで複数のEA-18G情報を総合して脅威を特定し、他アセットによる攻撃を誘導したり、EA-18G自身で電子妨害攻撃を行うことが可能となる。
●しかし、現在は空母1隻に5機しかEA-18Gがなく、3機を同時に投入した場合、交代機が確保出来ない。
●そこでこれを8機に増強し、故障や整備による予備2機を確保しつつ、3機同時運用の連続性を確保するため8機態勢を追求する
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目標情報ISR(電子攻撃を含む)の為、EA-18Gを3機同時に連続して確保したいとの要求です。
NIFC-CA構想では、F-35をISRセンサーとして最前線で活用するイメージ(攻撃機ではない)が描かれており、EA-18G情報と融合し、メインの攻撃機であるFA-18E/Fの兵器を導く事になっています
今後の敵情偵察に「衛星や偵察機があまり効果的ではない」とか、「ステルス機追尾能力が高いVHFレーダー」とかの記述が気になります。今後に注目です
読者コメントには、F-35の遅れや性能への懸念から、FA-18やEA-18の生産ラインの維持も「陰の要因」にあるのでは・・との憶測も記されており、本当であれば極めて周到な計画です(あっぱれ!)
関連の過去記事
「米海軍の航空作戦構想NIFC-CA」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「FA-18の後継FA-XXを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-27
「35歳FA-18の将来方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-15
「母機よりも搭載装備を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-11