17日、米空軍参謀総長のウェルシュ大将が空軍協会主催の朝食会で講演し、予算強制削減に対応するため、A-10やB-1部隊の全廃も視野においていると語りました。
一方で、F-35の導入については、「4世代機で敵対者の5世代機と対峙することは、死ぬことを意味する」として議論の余地がない優先事項だと主張しました
強制削減が本年10月以降も継続する可能性が高い中ですが、依然として強制削減がそのうち撤回されるとの希望的観測を抱きつつ、「もしかして駄目かも・・」との思いから最悪に備える検討も進んでいるようです
A-10攻撃機やB-1爆撃機の全廃案
●仮に強制削減が2014年度やそれ以降も継続したら、米空軍は特定の機首、例えばA-10攻撃機やB-1爆撃機の全機を廃棄する決断することになるかもしれない。同機種の1部を削減するよりも、その方が遙かに経費削減度合いが大きいからである
●まだ決定したわけではなく、全ての案が検討段階にある状態だが・・・。必要経費や装備近代化予算を確保するためには致し方なくなるかもしれない
●厳しい選択だが、A-10の様な単一任務機種で経費を要する機体は、F-16のような多用途機よりも優先順位が劣ることになる。具体的にはA-10の経費面での問題は以下の2点である
●まずA-10の中に2タイプの異なるバージョンが混在し、維持経費を押し上げている点。つまり、新型翼を装備しているか、近代化システムを装備しているかによる違いである。もう一つは経費のかかる翼交換を控えた機体が多数存在する点である
(なお先週、同参謀総長は、強制削減により700機を引退させ無ければならなくなる可能性があるとも発言している)
F-35は議論の対象ではない(not negotiable)
●第4世代戦闘機がペーパー上で如何に効率的に見えても、4世代機だけでは航空優勢獲得任務は遂行できない。4世代機のF-15やF-16と5世代機のF-22やF-35を混合して運用していくのだ
●F-22の生産打ち切りを決めた事で、同時に2地域以上のエリアで航空優勢を確保し続けることは出来ない状態になっている。
●また競争相手は15~20年後ではなく、5~10年後に5世代機を運用開始するだろう。もし高列度紛争で我々が信頼に足る5世代機部隊を持っていなければ、大きな問題に直面する
●F-35に可能なことは、他には出来ない。生死に直面する前線で、4世代機で5世代機と直面すれば、4世代機が如何に効率的でも、それは死を意味する
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装備品の数量がいくつ必要か・・・。この見積もりは、極めて大雑把で人為的かつ恣意的な「積み上げ」によって計算されていることが多い模様です
人類史上、最大の兵器プロジェクトとされるF-35の取得数も同様です。
それらしい計算や見積もりがあったとしても、一つ一つの係数や基礎となる数字の根拠は極めて曖昧で、ひねり出した本人しか説明できないような論理で、多くの場合、結論ありきの逆算で定めた数字だったりする状態だと聞いたことがあります。
また多額の投資をするため、過去一度持ち出した計算方式や見積もり手法はなかなか変更できず、脅威や環境の変化に柔軟に対応できない「自縄自縛」を生み出す事になりがちです。
戦闘機に関して言えば、その背景にあるのがウエルシュ大将の「4世代機で5世代機と直面すれば」発言にも見られる「空中戦命」の考え方です。
米国防省提出の中国軍事力に関する報告書が、弾道や巡航ミサイルを、サイバー戦や電子戦を併用して初動で多用する中国軍戦略を冒頭で強調する中でも、「やっぱり空中戦」が基本だと語る米空軍トップの姿勢には突っ込みどころが満載です
先日ご紹介した、4大政策シンクタンクの国防省への提言で、いずれのシンクタンクも戦闘機数の大幅減案を提案していましたが、それほど現在の見積もりはいい加減で、簡単に削減可能なほど「お手盛り」されている状態だとも解釈可能です。
ちなみに、それらシンクタンクは多くの場合「空軍の内情に詳しい退役軍人」を研究員に迎えており、いい加減に削減案を出しているわけではありません。日本でもそのような提言が出来る、独立した研究機関が必要だと思うのですが・・・。
「4大シンクタンクの提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30