11日、太平洋空軍司令官Carlisle空軍大将が「PACAF Strategic Plan 2013」を発表し、国防省としてのアジアリバランスや予算縮減の中で、太平洋空軍がどのような指針で任務を遂行していくのかについて示しました。
現物を見ていませんが、米空軍webサイト記事の解説によると、戦略と言うよりは「勤務するに当たっての重視事項や心構え」とイメージに近いような気もします。
ちょっと気になったのは、「5つの作戦重要要素」の中の「resilient airmen」を、空軍の記事が特出しのように詳しく報じている点です。軍人やその家族が「心配な状態」になってきているのでしょうか?
11日付米空軍web記事によれば
●太平洋空軍司令官が、アジア太平洋地域の安定と安全保障を維持推進するための戦略を発表した。公表された「PACAF Strategic Plan 2013」は、現下の財政状況で作戦の優先度を判断する指針となる。同戦略作成に当たっては、太平洋軍や地域の同盟国等とも調整や意見交換がなされている
●カーライル司令官は「米国がアジア太平洋にシフトする中、ダイナミックで挑戦に満ちた環境下で我々を導く、包括的な戦略を織り込んだ。この戦略には、3つの核となる目標(tenets)と5つの重視事項(five lines of operation to provide unambiguous direction)が示されている」と説明している
司令官は3つの核となる目標(tenets)について・・・
●expand engagement
我々が日々当地域で取り組んでいる事である。同盟国等や国際社会との協力や関係維持強化の重要性は、侵略行為を抑止し、安定を維持する上で言い尽くせないほど大切である。
戦力のローテーション配備の増加を通じ、戦闘能力から人道支援に至る多様なスペクトラムを重視する
●increase combat capability
厳しい財政下でも、米空軍の近代化を優先事項として維持し、特にF-35、爆撃機、C2ネットワーク、サイバー、統合防空ミサイル防衛を重視する
●improve warfighter integration.
統合での戦いや多国籍での作戦運用の手法を洗練していく。これには人道支援、新興の脅威対処、移動の自由確保における能力向上などが含まれる
3目標達成のための5つの重視事項には・・・
●theater security cooperation;
●integrated air and missile defense;
●power projection;
●agile flexible command and control;
●resilient airmen.
同司令官は5つの重視事項について「それぞれに達成に向けたroadmapを作成し、PACAF構成員にはこれを私からの指示として受け止めてもらいたい」と述べた。
また司令官は、特に「resilient Airman」が太平洋空軍の成功の基礎だと考えており、「PACAF構成員が全ての作戦を可能ならしめる原動力であり、その家族を含め、引き続き能力向上とケアを続ける必要がある」と強調した
記事は「Resilient Airman」を強調し・・・
●同戦略には「resilient Airmanとは、常に戦闘態勢にあり、包括的に情勢を把握してフィットし、責任ある選択をなし得る、多様な文化を横断する能力を備えた空軍所属員を指す」と示されている
●また「仕事の練度や体調だけでなく、個人的な部分でも健全な状態を維持し、命に応じて展開可能でなければならない」、また「個人の限界を知り、危険を察知し、同僚やその家族の支えで有るべき」とも示されている
●更に「resilient Airmanの見本となることにより、敵対者に対する非対称の優位性を確保することになる」と狙いを述べている
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
2012年1月発表の新国防戦略(DSG)も、アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアログ)でのヘーゲル国防長官の講演も、今回のPACAF戦略も、全ては同じ流れのものです。
ただ「Resilient Airman」の強調は、自殺者の増加や性的襲撃問題の深刻化、予算削減を受けた士気の低下、特に福利厚生面での予算削減をにらんだ強化項目なのでしょうか・・・
米軍や米空軍の兵士と接する機会のある方は、是非ご確認ください。
カーライル将軍の過去発言特集(エリートです!)
「カーライル司令官の昨年9月発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-22-1
「同2011年11月発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-05
「同2011年9月発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-30