サイバーと並び、新たな軍事ドメインとしてその脆弱性が喫緊の課題となっている「宇宙ドメイン」。
中国のみならず非国家主体も目を付ける、米国を始めとする西側のアキレス腱ですが、米国主導で始まった対処の第一歩「宇宙状況監視(掌握)」が英・加からNATOへ、更に豪へ拡大し、やっと日本も仲間に入って活動を始めるようです。
本年2月の安倍首相訪米時に開催が確認された、日米関係者による「宇宙に関する包括的対話」が11日東京都内で開催され、日本側から内閣府や外務、防衛両省など、米側からNSCや国務省、国防省などの担当者が参加した模様です。
時系列に沿って国内報道を振り返ると・・・
昨年8月22日・日経新聞・電子版
●22日、宇宙空間のごみと衛星が衝突する事態を避けるため、宇宙ごみのデータを共有し、監視を強化することに、日米両政府が合意したことが分かった。
●また、衛星が地球に落下するような事態には、落下地点を割り出し、地上の安全にも役立てる。
●日米は監視精度を上げるため、情報の共有化を進める方針。日本は米国に比べて態勢の整備が遅れているが、宇宙ごみを監視している望遠鏡やレーダーのデータを提供するほか、小さな宇宙ごみを発見する新たな技術開発を急ぐ。
●宇宙ごみを減らすための「国際的なルール作り」に向け、日米が協力して交渉に当たる。
昨年10月30日・産経新聞電子版
●30日、日米両政府が役割分担し宇宙監視を強化することが分かった。日本側はBMD用の地上レーダー「FPS-5」を、軌道上を漂う宇宙ごみ監視に活用する方針で、北東アジアでの監視を担う。
●宇宙空間では、中国が中国版GPSで精密誘導兵器を駆使する軍事作戦で、米国の優位性を脅かそうとしており、今回の監視強化は対中の一環。
●日米両政府は今年に入り、外務・防衛当局の審議官級協議や9月の日米防衛相協議を通じ、宇宙で「協力深化の作業を進めている」と表明
●米戦略軍が光学望遠鏡とレーダーで衛星や宇宙ごみを観測。一昨年9月には宇宙ごみを監視する衛星の初号機も打ち上げた。
●日本では財団法人「日本宇宙フォーラム」が岡山県で光学望遠鏡とレーダーを使い常時監視中。ただ、世界15カ所以上に観測地点を設ける米国の情報に依存しているのが実情。
●日米の「片務性」も改善する最初の措置が、FPS-5レーダーの活用。平成21年4月の北朝鮮による弾道ミサイル発射に際し、同レーダーが衛星の航跡を偶然捕捉したことに着目した。
●防衛省は25年度予算に同レーダーの「運用研究」費1億を計上。数年をかけ、衛星や宇宙ごみを発見識別できるよう技術的な検証を行い、実用化のメドが立ち次第、監視任務に投入する。
そして本年3月10日・産経新聞
●11日、両政府の宇宙政策担当者が「宇宙に関する包括的対話」で、航空自衛隊のレーダーを使った監視強化や情報共有のあり方について検討を始める。
●対話では他にも、以下の安保・民生両方の協力で同盟強化を狙う
—米国のGPS衛星の補完を目的に日本が開発している準天頂衛星を活用した防衛協力
—海洋活動の監視
—宇宙活動に関する国際行動規範
—ロシアへの隕石落下を受けた小惑星探知-など、
●米軍は稼働中の衛星との衝突などに備え光学望遠鏡やレーダーで監視を続けているが、能力を超える事態も予想されるため、同盟国に監視網への協力を働きかけている。
●日本は、FPS-5や「日本宇宙フォーラム」の光学望遠鏡とレーダーを活用して米に協力することを検討
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日本は米国の反対側にあり、豪州とともに欧米とは異なるデータが提供できる立場にあります。
まだまだ協力の「球」は少ないですが、日本の宇宙技術はなかなかのレベルです。ゴミ発見や対処の技術開発に協力したいものです
しかし日米の宇宙協力に関しては、何時も蝿のようにうるさい政党もダンマリ姿勢ですね・・・。知識がないからか、オスプレイで忙しいからか、票にならないからか・・・
いや、ロシアの隕石事件や海洋監視で中国を臭わせて、巧みにカモフラージュが効いたのかもしれません。
「国防省の新宇宙政策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-23
「米が豪に宇宙レーダー移設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15
「NATO宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「日米サイバー協議の壁」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-13
「米仏が国防協議 宇宙」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-09