23日、インド訪問中のカーター国防副長官は、国防相や外相等々と広く安全保障問題について協議した模様ですが、種々報道を見る限り、今回は「武器輸出商売人」の顔が前面に出ているようです。
歴史ある大国のインドは、米が望むほど対中国戦線に簡単には参戦してくれないのでしょうが、現在でもFMS契約世界第2位らしいですから、厳重鈍重な米の輸出規則を見直しつつ米軍需産業基盤のためカーター副長官は頑張ったようです
23日付「Defense News」は・・・
●米国はインド空軍に、追加で6機のC-130J輸送機を売却することで合意した。既に2008年に同じく6機の同型機の購入を決めたインド空軍が、追加で購入したのだ
●米軍需産業はインドの新戦闘機選定で仏のRafaleに敗れたばかりであり、インド国防省の壁面にRafaleの写真が掲げられている中での朗報である
●インド国防相は海外軍需産業との共同ベンチャー設立に意欲を示し、米国企業とのベンチャー開始をカーター副長官に要望した。
●カーター副長官はインド外相や国家安全保障補佐官とも23日会談し、本件を含む案件を協議した。なお副長官は、24日ハイデラバードにある米シコルスキー社のヘリ工場やインド自動車産業のTataを訪問する予定
●副長官の訪印目的を示すかのように、同行したのは、Lippertアジア担当国防次官補、Landay安全保障協力長官、Lemnios研究開発担当国防次官補であった。
23日付「DodBuzz」は・・・
●23日、カーター副長官はインド産業界や報道関係者に講演を行い、米国の複雑で時間の掛かる兵器輸出手続きの見直しに、積極的に取り組んでいることを強調して訴えた(写真左は手続きの複雑さを示すチャート。この図を見て改善していると)
●また、インドは信頼の置ける民主主義国家であり、米が提供した兵器を不正に再輸出したり、内部技術を流用するような懸念が全くない国であると讃えた
●その証左として、2011年の米国からのFMS取引額は約3600億円と世界第2位である。今後もインドが、高い技術の製品を透明性高く入手できるよう、米側の輸出手続きの改善に努力すると述べた。
ついでに対インド関係の心構えを大御所に
岡崎久彦氏は「WEDGE」の7月16日と18日版で
●インドは、建国以来、フェビアン社会主義と非同盟の長い伝統がある国であり、また、大国であって、容易に国の進行方向を変えられる国ではありません。インドを取り巻く情勢の変化に応じて、自らのダイナミックスで徐々に動く国です。
●米印は重要な戦略的パートナーとなりえますが、米国はインドの立場を考慮して漸進的アプローチをとるべきで、インドは対中外交の二面性ゆえに、インドにとり重要な戦略的選択をしそびれないよう留意すべきです。
●インドの国連における中立的態度などは、大した問題ではないと考えるべきです。
●確かに、中国の脅威が近年増大していることは否定できませんが、それも、インドにとっては、ベトナムや台湾のように差し迫った、また、国の存亡に関するような脅威ではありません。
●米国が中国を念頭に置いたアジア重視戦略に、当初からインドを明白な形で巻き込むことは、逆効果になりかねません。インドは、中国に明確に対立するような政策を取ることはしないでしょう。
●ただ、インドにとって中国が潜在的ライバルであることは明らかであり、特にインド洋のシーレーンの確保はインドの安全保障の要です。インドが対中政策でこの視点を見失うことはないと考えられます
●インドは、民主主義の価値観が極めて深く浸透している国の一つです。したがって、長期的に米印間の友好協力関係を進めて、相互の信頼関係を増していくのが王道でしょう。
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いち早く日本から進出していた自動車会社で従業員の暴動発生とか、やはりそう簡単に理解出来たと過信しない方がよい国が大国インドなのでしょう。
でも、かつて一度訪れた際、ヒンズー教国ながらイスラム教や仏教遺跡がキチンと保護され、遺跡や公園として維持されている様子を見て「寛容」な国なのかなぁ・・と感じたこともありました。
「武器輸出・共同開発の方針転換」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22
「武器輸出管理の仕組改善とQDR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-09
「パネッタ長官インド訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-06
「米印関係の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-27
「パネッタ長官シャングリラ12」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-24