脅威の変化無し!?東アジア戦略概観(中国)

ASBM DF-21D.jpg東アジア戦略概観2012の中心は「中国」だと思うので、約36ページの第3章中国を読んでみました。単純化すると概要は・・・
●2011 年の中国は安定した国内環境と国際環境の構築を目指したが、多くの困難に直面した。18 全大会を控えた国内環境も安定しているとは言い難い状況にある。
米中関係は依然として安定した状態からは程遠い。また、中国は南シナ海で引き続き強硬な行動をとったことにより、東アジアの周辺諸国における中国への警戒感を高めてしまった
人民解放軍は引き続き装備の近代化や能力の向上に努めている。海軍は西太平洋に進出する遠海訓練や、ソマリア沖・アデン湾での護衛活動を継続的に行っている。引き続き不透明。
chinaFlag.jpgサイバー戦体制に力が入っているほか、後でご紹介する「ソマリア救出作戦」や「退役軍人再就職問題」に興味を持ちましたが、根本的には現状の防衛省の防衛政策や購入装備品に影響を与えない「差し障り無い」書きぶりになっています。
特に、中国が弾道ミサイルやサイバー等、非対称の戦いを重視しているとの諸外国で主流と成りつつある見方を完全に無視する姿勢が顕著です。
・・・ですので、まず米英主要研究機関等の中国脅威の見方をまずご紹介
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米国防省・軍幹部
gatesMarine.jpgゲーツ長官(当時):●今や潜在的敵対国は全て、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは得策ではないと学んだ。・・・潜在敵国は、米国に対して戦闘機や空母等の軍備拡張競争を挑み、破産する道を選ぶだろうか
●中国のような国を考える時、対称的な脅威、つまり戦闘機VS戦闘機、艦艇VS艦艇の様な挑戦を米国はさほど懸念する必要はない。・・・しかし中国のサイバー、対衛星、対艦兵器、ミサイルへの投資は、米軍の戦力投射力や同盟国の能力を脅かす。特に前線海外基地と空母機動部隊に対して。
海軍情報部長
●J-20は中国の装備開発が想像以上に進んでいることを示した。しかし空母と共に、それらを運用するにはまだまだ長期間を要するだろう。それよりも我々は、中国のサイバー戦や宇宙関連技術等(の非対称な能力)を警戒している。
「Balanced Strategy再確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
「空軍へ最後通牒」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
「海軍高官の懸念」→http://www.afpbb.com/article/politics/2781770/6633582
CSBA:中国は通常戦力で米軍等と正面から対峙しようなどとは考えていない。初動で弾道・巡航ミサイル、サイバー・宇宙兵器を多用し、米国等の作戦実施基盤を運用不能に。
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
英IISS:J-20や空母試験に注目が集まっているが誇大な評価だ。警鐘者が主張するより、中国の技術進歩はむしろ控えめである。J-20や空母の能力はたかが知れている。しかし、中国の対衛星兵器、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー戦能力開発は、他国の国防関係者の頭から離れない
「IISSミリバラ中国脅威は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-08
RAND:中国空軍は、米国の航空優勢獲得能力の優越を良く認識しており、米軍等航空戦力や指揮統制システムを地上で破壊して局所的な優位を獲得しようとしている。
「RANDが中国空軍戦略を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-29
ChinaNV.jpg米海軍大学:中国海軍の教科書や文献調査から、中国海軍は自身の海戦史をよく学び、結果として海軍版のゲリラ戦法を重視していることが明らかになってきた。日本は対中国のため、例えば琉球列島でミニA2AD戦略を遂行する備えをしてはどうか。
中国海軍は、遠洋海軍建造よりも近海地域での非対称戦に力点を置いている。在日米海軍は中国のミサイル攻撃等の脅威に対応し、豪州に移転し、南シナ海とインド洋の両方に睨みを生かせるべき
「中国海軍はゲリラ戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29
「米海軍:中国脅威への対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2
「中国軍の脅威を誤解するな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-28
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本題に戻り、「概観」の中国記述で興味ある部分を・・
リビア中国人待避作戦
KJ-2000.jpg●内戦状態に陥ったリビアに滞在する中国人の国外退避を支援するために、人民解放軍が投入されたことも大きな注目を。
●まず中国はソマリア沖・アデン湾で護衛活動の任務に当たっていたフリゲート艦を、中国人の乗船している船舶の護衛のために派遣した。
●続いて、4 機のIL-76 輸送機を医療部隊と共に現地入りさせ、医療行為と人員輸送に従事。中国空軍が自国民保護のため軍用機を海外に派遣したのは初めてで、空軍輸送機の最長派遣距離を更新することに。
●輸送機は、命令受領後の97 時間において、合計12 回43 時間のフライトを行い、その飛行距離は合計2 万9,397km 、軍用機による輸送人員数は2,000 人近くに
●新華社の発表によれば、今回の国外退避活動において、中国は人民解放軍の軍艦や軍用機のみならず、自国の民用機や船舶、さらには外国籍の飛行機や船舶をチャーターするなど、さまざまな手段を講じ、最終的に3 万5,860 人の自国民を無事にリビアから出国させた
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人員削減と再就職管理
●今後人民解放軍は、資源投入の効率化を目的として人員削減に着手する可能性は否定できない
●この10 年間で自主職業選択方式により再就職した退役将校は11.6 万人に達し、条件に適応する退役将校の42%を占め、この方式により再就職した退役軍人は地方経済建設の活力となっていると評価した。そして、党中央、国務院、中央軍事委員会は本方式による軍人の再就職を極めて重視
●一方、社会の就業状況の変化に伴い、退役将校の再就職管理業務は新たな状況と問題に直面していると指摘。その上で、退役将校への起業に対する優遇政策を法律によって明確化すべきと関係幹部が発言。
gateChinaDM2.jpg●一方で、地域間で退職金や就職支援に大きな差が。人民解放軍自身が認めているように、多数の退役軍人が就業不安に陥るような事態が進めば、社会の安定と発展に影響を及ぼすことは避けられない。
●実際、2011年6月に深圳で現役・退役軍人の家族が住宅問題をめぐってデモ。11 月に武漢で500 人からなる退役軍人のデモ隊が警察と衝突したとの情報や、12 月に広西チワン族自治区で中越戦争に従事した退役軍人によるデモ行進
●当局が世論統制を強めていることを考慮すれば、メディアが報じていない退役軍人のデモも少なくないと推察
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自主職業選択方式より以前はどうなってたんでしょうか?・・強制的に仕事が割り当てられていたんでしょうか? 又は自動的に国営企業が面倒を見ていたのか?
良くこの社会は維持できてますね・・・。
「前対中で北東から南東アジア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-03-1
「後対中で北東から南東アジア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-04
「中国の南シナ海進出をどう防ぐ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-07

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