民間衛星で商用電波を収集し安全保障に活用

民間会社「HawkEye 360」の衛星を利用して
中国漁船や中国の怪しげな調査船、密猟者の動きも
商用情報なので同盟国等との共有も容易

HawkEye360.jpg26日付C4ISRnetは、米国のNGA(米地理空間情報庁:National Geospatial-Intelligence Agency)が民間会社「HawkEye 360」と協力し、商用に使用されている無線やレーダー電波情報を収集して、従来分析対象だった軍事電波衛星以外の、広範膨大な商用電波情報を分析に活用する試験プログラムを開始していると紹介しています

従来安全保障当局が分析に使用していたのは、細部不明ながら限られた範囲の電波情報です。一方で今回対象とするのは民間船舶が使用する通信や海上捜索レーダー、商用衛星通信や携帯電話電波で、衛星からの情報収集で位置特定や特異な動きの兆候を察知できるようです

HawkEye3602.jpg民間会社「HawkEye 360」のwebサイトでは、中国漁船の違法操業や中国調査船の動きを捉えることが出来るとか、密輸や不正行為につながる艦船動向の察知とか、アフリカの動物保護区での密猟者の動き特定とか、武漢でのコロナ騒動を河川海上交通の動きから分析できるとか・・・商用無線通信情報の収集が様々な可能性を秘めているとアピールし、民間分野への情報提供だけでなく、安全保障機関との緊密な連携も紹介しています

軍事衛星情報との差は明確になっていませんが、商用衛星による商用電波収集で得られた情報は、同盟国等との共有に制限がなく、ややこしい情報共有や情報管理の取り決め仕組みやハード整備の必要がないことが売りで、友好国との関係強化の強いカードとして米国は重視しているようです

日本でも(株)衛星ネットワークが「HawkEye 360」のサービス提供窓口になっているようで、分かりやすいwebページが開設されていますので、一度覗いていただいてみてはいかがでしょうか

26日付C4ISRnet記事によれば
hawkeye3606.jpgこのNGAの試験プログラムは、2019年にNRO(National Reconnaissance Office)とHawkEye 360社が結んだ契約に基づくもので、これで同社が集める商用衛星による商用通信や商用電波情報が入手できることになった。そして国家機関であるNROはこれら情報を、国防省の関係機関や他の情報機関に提供している
HawkEye 360は、3個の衛星で1セットを構成する最初の衛星セットを2018年に打ち上げ、今年1月にSpaceXのFalcon 9で追加の1セットを打ち上げているが、今年後半には更なる衛星追加打ち上げを予定している

衛星セットを増やすことにより、より多くの情報を収集できることは無論だが、同じ目標の情報収集に当たる時間間隔を短くできる点で大きな効果が期待できる
HawkEye3603.jpg現在は5時間おきに再観測可能な体制だが、間もなく2時間おきの観測が可能となり、年末には1時間おきの観測間隔が実現可能となる((株)衛星ネットワークのwebサイトでは、今年から12-35分間隔の情報収集が可能と記載されている。恐らく日本周辺のサービスレベルは高いかも

また同社は地上インフラへの投資も進め、衛星情報をより迅速に顧客へ届ける体制構築も進めている
HawkEye 360社のCEOであるJohn Serafini氏は、「NGAは膨大な商用通信電波にアクセスせず、独自衛星の非常に高度な非公開情報だけで分析を行ってきたが、商用データを使用した分析結果は、同盟国やパートナー国との情報共有を容易にする」とその意味を説明した

世界中の商用電波を分析して得られる発信源の位置情報や電波の変化情報から、識別装置をオフにして活動する船舶の動きを把握したり、戦場での通信電波状況把握で兵士たちに貢献するなど、様々な活用法が考えられてい

(株)衛星ネットワークのwebサイトによれば
測定可能出力は、未知信号で5W以上で、既知信号:1W以上
HawkEye3605.jpg提供情報は
①電波発信場所の特定
②電波特性解析による対象物(船舶等)の特定
③指定電波の電波密度を測定し、対象エリアの変化を観測
●想定利用例
AIS情報の正誤判定、AIS以外の電波信号による船舶検出
不審船の追跡
電波ヒートマップからの異常検出
GPS妨害電波発信源の特定
レーダー電波発信源の特定

対象物から発信される電波(VHF、UHF、L-band、X-band 等)を受信解析し、その対象物の位置を特定
特定周波数の電波(レーダー、衛星TT&C信号、GPSジャミング信号 等)の電波密度を測定し電波ヒートマップを作成。その発信源の特定や電波パターンの変化による異常事態の発生を検知
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HawkEye 360社のwebサイト
https://www.he360.com/
(株)衛星ネットワークのwebサイト関連ページ
https://www.snet.co.jp/planet/hawkeye360/

HawkEye3604.jpg(株)衛星ネットワークwebサイトには、小型ミカン箱程度の衛星概要や、電波密度ヒートマップなどなど、様々な情報を掲載しています。日本でこの情報を誰を対象に売るのか興味深いですが、自衛隊や海上保安庁や・・・でしょうか?

衛星技術の進歩や衛星打ち上げの商用化推進によってこのようなビジネスが成立するようになって来たのかと思いますが、国の予算も投入して、上手く活用して頂きたいものです

電波関連さまざま
「5G企業へのCバンド売却で電波高度計に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-22
「炎上中:5G企業へのGPS近傍電波使用許可」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-14
「5G企業に国防省大反対の周波数使用許可へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-11
「米議会でも国防省使用の周波数議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-05
「ファーウェイ5G使用は米国との関係に障害」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「軍事レーダーの干渉確認」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「GPSが30日間停止したら」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-18
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14

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