27日、ユーロファイターTyhoonを製造するBAE社の報道官が、Tyhoon製造を中心とした英国内の航空機分野の人員約3000人を削減すると発表しました。
この発表には、Tyhoonの製造ペースを低下させ、同時にBAE社が関与しているF-35関連のパーツ製造を変化させることも含まれており、現在戦闘機のTyhoonを対象機種として機種選定を行っている日本のみならず、インドやオマーン等でも話題になりそうです。
でもこの話・・・軍需産業はしぶとく生き残り策を考えている・・・との実例として見ていただきたいと思います。
日本の企業は「武器輸出3原則」なる偽善の固まり政策により、このような海外企業との連携や共同事業から排除され、結果的に冬の時代に「2枚腰」を発揮できないのです。
BAE社の概要
●全世界でのBAE社の従業員は約10万人。英国内では4万人を雇用
●欧州全体での国防費削減や装備品調達の削減を受け、BAE社はここ数年で英国内の7500人を削減。BAE社全体では1.5万人を削減。ただし削減された社員には同社内の別部署に配属替えになったモノもおり、純粋な失業数とは異なる。
●今回削減になるBAE社の航空情報部門は、約1.1万人で構成されている。
Tyhoon製造ペースダウンの狙いは・・・
●製造機数低下の度合いは、2011年当初53機→43機、2012年当初43機→39機。削減は将来の製造ライン閉鎖を意識したモノでは全くない
●現在の生産ペースでは2015年に製造が終了になりラインが維持できなくなるが、これを長く細くすることでライン稼働期間を延長させ、更なる受注に備える体制を取る。
●現在Tyhoonを発注している英、独、伊、スペインへの納入時期を少しずつ先延ばしし、その分の支払いを分散して負担を軽減する。精算プラントは4カ国に一カ所ずつあるが、それぞれが生産減少分をシェアする。
BAE社の報道官は・・・
●Tyhoonの生産ペースダウンと、F-35の生産ペース上昇を緩やかにすることにより、Nimrod、Harrierの廃止、Tornado飛行隊削減の長期的影響を緩和することも考慮している。
●このように今時の人員削減は、単に英国政府の国防戦略見直しと国防予算削減にのみ対応するモノではなく、世界中の諸国が直面する予算制約の中で我々が競争力を維持するための施策である。
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BAE社の航空機部門が主に英国内にあることから、今回の削減は英国を対象に行われるようですが、共同開発国である独、伊、スペインも少なからず影響を分散負担のようです。
Tyhoonがだめでも、F-35で最小限の食い扶持を稼ぐ・・・。この保険のかけ方、業界間の連携、ビルトインスタビライザー機能・・が世界の軍需産業の生態をよく表しています。