久々に米国防省関連の話題です。
国防長官等の主要幹部の交代や夏休み、更に政府予算全体の政党間・議会内議論の中で、なかなかこれと言った動きが見えない(無い)最近の状況ですが・・・。
パネッタ長官がクリントン国務長官と、米国防大学で開催された公開討議に臨んだ様子と、リン副長官が軍需産業団体の会合でサイバー戦について語った内容をご紹介します。
16日、パネッタ長官は・・・
●$350 billionを今後約10年間で削減する事は国防省として何とか対応可能と考えるし、また政府の一員として必要な協力だと考える。
●しかし、議会での議論がまとまらず、更に$500 billion削減を迫られるようなことになり、削減が倍増する様なことになれば、国防に破滅的な影響を与える。国務省に対してもだ。
●真に国家の負債削減を考えるのであれば、国家予算の中で国防予算のような「自由裁量に当たる経費」(discretionary spending)ばかりに目を向けていてはだめだ。
●(削減幅を倍増するような)国防予算削減は空虚な軍を生み出してしまう。更に重大なことは、兵士やその家族と国家との間の信頼感を損なう事になる点である。
●(退役制度の変更に関する質問に・・)今月末に検討委員会の報告書が提出されるが、まだ何も決まっていない。多様な影響について考慮する必要があり、信頼感を損ねない配慮が必要である。しかし、全ての案がテーブルの上にはある。
NHKが17日正午のニュースで大きく取り上げたクリントン国務長官の発言部分は・・・
(国務省の海外援助資金も削減の対象になるでしょうね・・との質問に対し)
●国務省の外交官や援助担当者は、米軍と一体となって共にそれぞれの役割を担いながら世界各地で米国の国益のために働いている。21世紀の安全保障のためには、国防省と国務省が共に補いながら役割を果たす必要がある。
●パネッタ長官と私は、この立場になる90年代から様々な問題に共に取り組んできた。予算削減の問題は、国防省とか国務省とか米国援助省の問題ではない。米国の安全保障の問題である。
●メディアのヘッドラインを飾ることのない将来の課題についても考慮すべきである。我々は太平洋地域でのプレゼンスの大切さを再度訴えている。
●我々はPacific powerである。これは全ての安保上の要素が揃っている必要性を示している。中国の台頭にどのように対応するかとの長期的な課題に直面している時に、突然撤退することなど出来ない。
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16日、リン副長官はDefense Information Systems Agency’s Customer and Industry Forumで・・・
●国土安全保障省と共に、国防省のネットワーク運用に関連する約20の企業と開始した試験的協議(Defense Industrial Base Cyber Pilot)は、様々な成果を生み出し始めている。
●これら企業と非公開のサイバー脅威に関する情報を共有することで、サイバー防衛の体制を整え、政府ネットワークへの外部からの侵入を遮断できる可能性を示している。
●90日間の試行期間の半分の現時点でも、これまで出来なかった数百の攻撃兆候探知と不正侵入阻止を行うことが出来た。
●参加した企業は、米サイバーコマンドやNSAが得た情報を元に各企業のサイバー防衛を強化でき、引いては彼らが国防省に提供するネットサービス向上につなげることが出来る。
●過去10年間で、我々の軍需産業はテラバイト単位の貴重なデータを盗まれたり破壊されている。多くは装備品の小さな一部分の情報であったが、極めて重要な情報も相当程度含まれていた。
●今後は、この試験的協議枠組みを他の分野、すなわち電力、交通等、社会インフラ分野にも適応できないか関係省庁と話を進めたいと考えている。
●国防機関が保有するノウハウを生かして口火を切り、官民が協力して国家としてあらゆるサイバー攻撃に対する防御能力を持ち、サイバー戦能力の向上につなげたい。
●サイバー分野では軍だけの防御を固めても効果が薄い。社会全体が寄って立つところの緊要な社会インフラ無くしては、軍のみならず国が麻痺してしまうからである。
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NHKのニュースは、クリントン長官の発言を、予算の削減程度によっては太平洋地域からの米軍削減もあり得る、と力を入れて報じていました。
まぁしかし、予算がそのままでも、脆弱な日本からは引いていくのです。米軍は・・・
それと・・NHKが騒ぐほどの発言かというと・・・海外援助予算の話題を避けたかった様な雰囲気が感じられます。トランスクリプトからは・・・
「米海軍は日本から豪へ移動」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2
全く異なる話題を二つお届けしました。
予算とサイバー、共に今一番ホットな話題でしょうか・・・。週末には少しは過ごしやすくなるようですので・・ご自愛下さい。
「35兆円削減の影響分析は9月末」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-28
「政治家よ目をそらすな議論を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
「パネッタ長官が使命感と信条を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-07
「国防省サイバー戦略発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-15
「googleとサイバー戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-18
「サイバー国際戦略を発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-17
「サイバー戦略5本の柱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-20-1