表題は、一般社会では普通の感覚だと思いますが、軍需産業では違いました。
開発や生産の過程で見積もり違いや想定外の問題が発生し、コスト高騰に繋がっても、「今更止めて良いんですか?」、「独占企業だからほかには頼めませんよ・・」と口には出さないまでも、無言の開き直りで発注側の国防省に「青天井」の請求書を送りつけてきた業界が軍需産業です。(万国共通でしょう・・日本でも。産業基盤維持を錦の御旗に・・)
米国はこの慣習の見直しに取り組んでおり、その「試金石」となっているのが次期空中給油機KC-46Aです。
経費固定、やすく出来たら企業収入を増やす条項、コスト超過したら官民で分担も等々の新たな契約コンセプトを、難産だった空中給油機契約に盛り込んでいました。そのKC-46Aタンカーのコスト膨張をプレスが報じている件に関し・・
15日カーター国防次官はブルッキングス研究所で
●(コスト超過は)我々の問題ではない。本年2月に結んだ開発フェーズ契約のシーリング約4000億円を守れないのは、ボーイングの話(責任)である。
●価格固定契約は納税者の血税を守るための契約であり、提案要求書(request for proposals)段階から我々が取り入れた考え方である。契約に入っている限り、我々は企業の言いなりにはならない。
●ボーイングがコスト超過分で自腹を切ることを覚悟したのは、米空軍が179機を調達する生産フェーズで取り戻せるとの確信があるからでもあろう。
●納税者の立場からすると良いニュースである。これまではコスト超過分に関し我々は脆弱だったし、責任をかぶっていた。しかしこの空中給油機は違う。企業に対し、コスト管理を厳格に行う動機付けを行ったのだ。
●これまでコスト上昇を当たり前としてきた業界慣習へとの決別である。コスト管理を怠れば金を失うのだ。
ボーイングのバークスデール報道官は
●約4000億円のリミットを超えることは認めるが、どれほどの額になるかは不明。250億から800億程度かも知れない。
●種々の報道の細部については言及しない
●特に驚愕するには当たらない。対応可能な範囲内である。我々は責任ある機種選定の勝者であり、史上最高の空中給油機を低価格で開発生産し、適正な利益を株主に還元する。
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詳しくは分かりませんが、$4.4 billionが規定価格で、$4.9 billionが上限。その差額$500 millionの6割は国防省が負担しなければならない可能性も残されている、と報道されています。
カーター次官は、フロノイ次官やジョンソン法務官と並び、次期国防副長官候補と言われています。
軍需産業関連の諸問題に取り組む「シーザー」との異名を持つ辣腕で、「試金石」たる本件の成否が今後の予算健全化に向け注目されるところです。
また、18日カーター次官は全米軍需産業協会で
●我々の予算構造を分析すると、装備品の開発と調達に30セント使用するとして、その維持費に70セントを費やしている。
●同様に45セントを物資や兵器の購入に使用し、55セントをサービスの購入(役務)に費やしている
●今後12年間で約35兆円の国防費削減が必要だが、我々は総合的な観点から全てを見直さなければならない。
カーター次官は、上記でご紹介した以外にも、このところ連日同様の講演やアピールを各所で行っています。そろそろ何かが飛び出すか・・・パネッタ長官の動向も最近不明だし・・・。
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