第2次大戦末期の1945年4月25日、ヤルタ会談での合意に従い東西それぞれからドイツ攻略を進めてきたソ連軍と米軍が、エルベ川のほとりトルガウ近郊で初めて出会いました。戦局全般から見ると、この両軍の合流により、抵抗を続けてきたナチス軍戦力が南北に分断されることとなり、45年5月9日の終結に向けて加速することになります。
エルベ川での出会いの際、両軍部隊の指揮官が肩を抱き合いながら映る写真は世界中の出版メディアに引用され、両軍兵士が「二度と戦争を引き起こさない」と平和を誓ったとされるエピソードから「エルベの誓い」として日本では知られています。なお、この事件はソ連では「エルベ川の出会いと呼ばれ、米国では「エルベ・デイ」(Elbe Day)として記憶されています。
このエルベ川は歴史的にも地域の特性を分けていた過去があり、例えば19世紀までは、エルベ川がヨーロッパの東西を隔てる、大きな境界線の一つであったといわれています。
エルベ以西のフランス、イギリスなどで近世初期に農奴の解消が終わったのに対して、東側のプロシア、オーストリア、ロシアでは、19世紀初頭から中ごろまで農奴が存在した点などで決定的に性格が異なっていたらしいです。
旧ソ連軍と米軍の両部隊がナチス・ドイツ領内で初めて出会った「エルベの誓い」が4月25日で65周年を迎えました。そのタイミングを計ったように、22日からロシア軍参謀総長のマカロフ大将一行がワシントンを訪問しており、22日はゲーツ長官との会談、23日にはアーリントン墓地で合同献花式が行われています。
歴史的に見れば、「エルベの誓い」から僅か数年で「鉄のカーテン」での冷戦構造がスタートするのですが、冷戦が終了したといわれて20年が経過した現在でも、最近やっとの事で合意にたどり着いた新START条約の状況からすると、「エルベの誓い」の雰囲気にはほど遠いものがあります。
核問題をはじめ、ミサイル防衛、対イラン、中国や北朝鮮への対応姿勢などなど、何かにつけて厄介なロシアです。23日の墓地での両軍首脳の握手は一応穏やかですが・・・・
オバマ大統領とメドベーチェフ大統領の共同談話は「エルベの精神を持って、建設的に対等な立場で臨むことにより、両国が直面している課題に取り組むことが出来、効果的に21世紀の挑戦に立ち向かうことが出来る」となっています。その通りです。はい。
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