U字型の第一列島線

尖閣諸島を巡る中国の振る舞いが話題ですが、南シナ海での中国の強引なやり口は東シナ海でのそれを遙かにしのぐ勢いです。そんな話が盛んに日本の新聞でも取り上げられ始めましたが、15日付産経新聞の朝刊8面の「湯浅博の世界読解」では「最近米論壇論断で議論されている」という地図を掲げ「U字型の第一列島線」との考え方を紹介しています。
湯浅博・論説委員(東京特派員)によれば・・・
IslandChain1-2.jpg米国論壇で議論されている地図を見ていただきたい。西太平洋に引かれた2本の線は最高実力者だったトウ小平の懐刀、劉華清の戦略に沿ったおなじみの仮想ラインだ。しかし、よく見ると、左側のラインが少しばかり長くのび、南でU字型に跳ね上がっていることにお気づきだろう。
●第1列島線と呼ぶこの線は、日本列島の南端からフィリピンあたりまでのびる。さらに、中国が自国の領海と主張する南シナ海のU字型ラインとつながっていく。彼らの新しい近海防御戦略は、第1列島線を経て、右の第2列島線の防御ラインへと突き進む。これらで米国海軍の接近を拒否し、台湾の防衛を弱体化させるという。
●中国海軍の最近の動きは、2本のラインの内側すべてを「中国の海」として振る舞っているようだ。日本の尖閣諸島も含まれ、中国漁船の領海侵犯問題に対する高圧的な態度がそれを証明している。
戴秉国国務委員.jpgCSBAのクレピネビッチ理事長はこれらの戦略について、冷戦期にソ連が欧州で策したように、東アジアで「中国によるフィンランド化の脅威がはじまった」と米紙で警告した。フィンランドは戦後、名目上は独立国家でもソ連の外交規範に従わなければならなかった。
●丹羽宇一郎駐中国大使を休日未明に呼びつけた戴秉国(たい へいこく 写真)国務委員は、今年3月にも米高官に南シナ海をチベットや台湾なみに「核心的利益」と発言をした張本人である。
●米国は歴史的に、大東亜戦争で日本をたたいたようにアジア太平洋の覇権国の台頭を許さない。すでに、クリントン国務長官は1月の演説で「アジア回帰」を宣言した。
●次いで7月には、中国が嫌う南シナ海の領有権をめぐる多国間交渉の支持、航行の自由の確保が米国の国益であると宣言した。海洋政策研究財団の上野英詞調査役のいう「核心的利益」に対する「航行の自由」の戦いである。(以上が産経の記事)
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鄧小平は79年に副首相として来日した際、尖閣諸島に関し「次の世代、また次の世代に持ち越して解決すればよい」と述べ、我が国政府もメディアもこれを大歓迎したのですが、権力を強めたた92年2月には俗にいう「中国領海法」を定めて尖閣列島や南シナ海の島々の領有を中国として確定しています。
Yuasahirosi.jpgしかしこのような中国の態度に対し日本は、同年秋には江沢民総書記の訪日を歓迎し、秋には天皇皇后両陛下のご訪中を進めるという姿勢で対応しました。当時の首相は宮沢喜一氏ですが、大変な「親中」派だったのでしょう。
「いま米国は、中国が南シナ海のほぼ8割を領海と主張し、沿岸国を威嚇しはじめたことに注意を払う」とも湯浅氏(写真)は述べています。米国がどこまで本気で取り組むかは今後の注目ですが、日本自身も腹を決めないといけませんね。
18日付「国際情報センター」で茂田宏氏は・・・
●いまや中国側がこの事件を契機に単に自己の立場をレジスターすることを超えて日本の実効支配に挑戦してきていることは明らかである。
●中国国内での対日強硬姿勢を求める国民世論への配慮ということでは説明しがたい対応である。
ChinaFlag.jpg●こうなった以上、日本としても毅然たる対応をする必要がある。船長の件は既に司法の手に移っており、粛々としてその手続きを進めるべきである。
●将来、中国との間で尖閣をめぐる紛争が起こることは予期しておく必要があろう。鄧小平の問題先送り論は期限切れになりつつある。
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「対日強硬姿勢を求める国民世論への配慮ということでは説明しがたい対応」との主張に注意が必要です。
日本の新聞が中国政府の行為を、「中国国民のガス抜き」や「国民感情の暴走を危惧」と断定的に説明する姿勢には注意が必要なようです・・・・。

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