追加情報:プロペラ攻撃機第2弾
10月25日の週、米陸軍協会の年次総会が開催されていた様ですが、そこでOV-1というベトナム戦争から湾岸戦争で活躍した陸軍のプロペラ武装偵察、光学及び電子画像偵察、赤外線偵察機が注目を集めました。
注目の原因は、OV-1にAH-64アパッチ攻撃ヘリ搭載の30mm機関砲を搭載したバージョンだったからです。折しも、米空軍が軽攻撃機の導入を計画して・・・との情報が飛び交う中でしたので尚更だったようです。
同機を展示したのはATKと言う企業でBroadbay GroupとMohawk Technologiesとの共同事業だそうです。
OV-1は、1959年から生産が開始され、計約380機が米陸軍を中心に使用された機体は、イスラエルとアルゼンチンも使用したようです。1996年に陸軍から引退した同機がアリゾナの砂漠に保管(放置)されているところをATKが譲り受け、30mm機関砲を搭載したとのことです。
ATKは米空軍への売り込みは考えていない様で、むしろテロ対策に取り組む予算総額の小さな国への売り込み又はレンタルを考えている模様です。機体はそのまま活用しつつ、グラスコックピット、光学及び赤外線センサー、センサーと連動した機関砲の装備により能力向上を図っています。
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イラクやアフガンでの経験を通じ、米軍はホスト国の軍を訓練して任務を引き継ぐことに懸命に取り組んでいます。その過程で米空軍は、地上部隊を支援して反乱分子を攻撃する米空軍のA-10やF-16が、必要以上の性能を持ち、かつ高価であることから、対象国が使いこなせないと考えました。
そこで浮上したのが、第2次大戦当時を彷彿とさせるプロペラ機をベースとした軽攻撃機(light-attack aircraft)や軽武装偵察攻撃機(light attack armed reconnaissance aircraft)の概念です。
昨年米空軍は関連企業に「情報提供要求書」を出して可能性を探り始め、現在T-6B練習機をベースとしたHawker Beechcraft AT-6Cで種々のテストや検証を行っている模様です。14日付米空軍HP記事によれば・・・。
軽攻撃機のコンセプトは・・・
●無人機と高性能戦闘機の中間に位置するもの
●ローテクの機体に新しい装備を搭載し、コスト面で効率的な攻撃と偵察任務をこなすことが出来るもの
●「8割の性能を、2割の価格で」が一つのモットー
現在テスト中の機体はT-6Bを原型にした2人乗りで
●エンジンは高出力のPratt & Whitney PT6A-68Dへ
●兵器管制システムはA-10C Mission System(データリンクも)
●偵察関連装備はMC-12Wと同じで、かつlaser designator/range finderを搭載
●運用経費は、A-10やF-16が時間あたり120~150万円に対し、AT-6Cは5万円程度
将来の想定搭載兵器は
●Hellfire missilesとAIM-9 Sidewinders
●他にもvarious other weaponsを視野に
米国内でも活用分野が
●麻薬取り締まりや国境警備、更には災害時の情報収集には、このタイプの軽攻撃偵察機が有効であろう
試験担当の中佐によれば
●イラク上空をF-16で100時間以上して地上部隊のために近接航空支援を行ったが、ほとんど成果を上げることが出来なかった。我々は現在F-16を飛行させることに多くの費用を使いすぎている。
●4世代機が引退の時期を迎えている今、イラクやアフガンでの任務は軽攻撃機が行いうる。
●テストは正規空軍と州空軍、それに契約民間技術者により、柔軟に効率的に行われている。
●試験に参加した他のパイロットも含め、皆非常にこの軽攻撃機に興奮している。そして我々が期待していた機体の改善案が続々提出されている。
●地上で航空機に指示を与えるJTAC(joint terminal attack controller)に安価で多くの搭乗機会を与え、能力向上を図れる。
●通常これまでは、機体を購入してからテストを行うことが多かったが、今回は開発段階から軍が積極的に関与し、誠治レベルでの購入可否判断に資する状況を把握することが出来る。(以上が記事概要)
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AT-6Cの開発方式がどのように従来手法と異なるかについて、きちんと理解できていません。あしからず。
イラクやアフガン等の対象国向けを当初考えていたものの、米国自身にも有効であり必要ではないのか・・・そんな声が聞こえてきそうです。
軽攻撃機の導入に関しては、限られた予算の中で「他に何を削るか」のハードルがあり、必ずしも空軍内でのコンセンサスがないようです。しかし政治家や国防省高官には、戦闘機よりもこの種の安価な兵器が好印象とのことです。
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