2012年度米国防予算から、一連の長距離攻撃能力(Long Range Strike family of systems)が具体的になり始めており、先日は新型ステルス長距離偵察爆撃機の開発予算が計上された事をご紹介しました。また、既存の技術を活用しながらも、それなりの開発時間が必要な理由についても先日取り上げたところです。
また、2日シュワルツ空軍参謀総長は、「family of systems」の中では、「巡航ミサイルが拒否戦略突破の鍵となるもう一つの焦点である」とも語っているところです。
しかし・・・対拒否戦略の長距離攻撃能力(LRS)の中には、もう一つ柱となるPGS(Prompt Global Strike)構想の実現化が課題として残っています。
この考え方は、地球上のどの地点でも数十分から1時間以内程度で攻撃出来る能力獲得を目指すものであり、対中国を念頭に置けば、中国の対衛星兵器基地、宇宙関連施設、指揮統制施設、固定ミサイル基地等がその目標になるのでは・・と考えられています。
そして具体的には、ICBMやSLBMの弾頭に通常弾頭や金属片を搭載しするCSM(conventional strike missile)や大気圏内をロケットやスクラムジェットを利用して超超音速で飛行するタイプの兵器(HTV:hypervelocity test vehicleやX-51A)の研究・実験が行われていたところです。
PGS構想とCSM等について
「核抑止の代替?CSMについて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25
「PGSのHTV-2試験失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
「X-51Aは初期実験段階」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23
そんなPGS構想に関する話題が昨年春以降はなかったのですが、ここ2週間あまりの間に米空軍首脳や研究者の発言が相次いだようですので、2日付「Defense News」記事からご紹介します。
●2月17日米空軍HQのスコット運用能力要求課長(Maj. Gen. David Scott, director of operational capability requirements)
トライデントSLBMの通常弾頭型をCSMとして、HTVとともに良く状況を見ているところである。
●2月17日ブリードラブ副参謀総長(Gen. Philip Breedlove)
トライデントに通常弾頭を搭載したタイプなどを考慮している。
●2月26日スコット運用能力要求課長
我々は、トライデントSLBMやICBMに通常弾頭を搭載するオプションを考えていない。我々の焦点は、HTVコンセプトを含む高速大気圏内飛行方式(boost-glide capabilities)にある。
●3月2日シュワルツ参謀総長
まだ何を選択するかは未定である(We don’t know yet)。要求事項に対し、技術的なチャレンジが少ないのはICBMやSLBMに通常弾頭を搭載するモノだが、技術的には未熟ながらHTVも潜在的候補である。HTVは近々試験を行う予定であり、状況を見守りたい。
●トンプソンLexington研究所研究員
ICBMやSLBMに通常弾頭を搭載するタイプは、相手国が核攻撃と誤認する可能性が高く危険であり、かつ大変高価なことも問題である。
////////////////////////////////////////////////
近々、欧州米空軍の作戦運用部長へご栄転予定のスコット課長(少将)の発言が具体的であり、そのポストからも信憑性が高いのでは・・・と考えています。
リスクが高くて高価では・・・中国相手には使い辛いでしょう。実験結果が報道されたらフォローいたしましょう。
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「1長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「2長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
コメント