前半:アフガン後に迫る課題

AFMaga4.jpg4月号の「AirForce Magazine」が「Afghanistan and after」との記事を掲載し、10年にもわたる厳しいイラク・アフガンでの戦いが収束に向かっても、その間に放置されていた様々な問題への対応に迫られるだろう、との趣旨の見方を紹介しています。
既に本ページで「細切れに」ご紹介した内容も含みますが、こうして整理されると、公開情報をそれなりにフォローしているだけで米軍の状況や弱点がかなり把握できることを新ためて感じます。もちろん中国はそうしているでしょうが・・・。
ランダムにエピソードをつまみ食いします。本日は、アフガンでの活動状況、他方面での活動、GSCの苦悩及び欧州米空軍司令官の視点を、それぞれ断片的ながらご紹介します。
アフガンでの戦いの状況
C17Afgan.jpg●アフガンでのNATO全体の攻撃ソーティー数は、例えば昨年1月の157から今年1月では倍以上の387にまで増加している。本年2月までの6ヶ月間で集計しても、3700ソーティーと記録破りの飛行を行い特殊作戦軍の飛行が急増している。空輸分野でも、年度集計で2006年当時の2倍の輸送を行っている。
●C-17は優れた輸送機であるため、今時の戦いで200機あまりが既に200万時間以上の飛行時間を記録している。
●一方でアフガンの輸送ニーズは輸送機だけでは支えられず、同時にパキスタン経由のルートもリスクが高まっているため、バルト海沿岸からコーカサスを経由してロシア領内を通過するNDN(Northern Distribution Network)の陸上輸送に輸送全体の35%を頼るまでに至っている。
世界各地の米空軍は・・
MDmissile.jpg●アフガンの一方で、世界中の米軍は非常に多用な任務を与えられている。南米では、年間35兆円相当の麻薬取引、武器取引や密輸が地域の不安定化に繋がっており、欧州ではミサイル防衛での協力が難しい国家間利害の壁に直面している。太平洋では拒否戦略や接近拒否兵器の拡散と「near peers」の動きから目を離せない。
●南米のグアテマラのような国は、1000名足らずの空軍で空軍予算の9割が人件費に充てられている状態にある。このような国には、任務と予算規模に応じた低コスト高信頼性の空輸やISRアセットが求められている。このようなニーズにも対応が必要である。
NATOのミサイル防衛はそれ単独の課題ではなく、航空作戦全体で国家間の協力関係を強化し統合していく一部であるべきと考える。他方で、日常的に、関係国それぞれが抱える国内規制や政治状況により、進展が中断する。
戦略任務担当GSCの苦悩は・
●空軍の核戦力を担うGlobal Strike Commandの爆撃機とICBMの平均年齢は40歳を超え最も若いB-2でも22歳と言う状況にある。同コマンドの最優先事業は、ミニットマンⅢICBMの信管システムの維持近代化施策と言う有様である。新START条約を巡り、久々に核兵器に注目が集まって良かった。これで少しは優秀な人材確保が可能になる。
●B-52とB-2は少なくとも2040年まで活用する見積もりになっており、B-52に至っては約80年間の運用となる。
欧州空軍指揮官の視点は・・・
welshEUAF.jpg欧州米空軍の指揮官ウェルシュ大将(Gen. Mark A. Welsh III)は、「我々の航空優勢獲得能力があまりにも強力であったため、航空優勢無しの前提で考えることが困難になっている」と変化への対応の必要性を認めた。
●中国やロシアのステルス機試験に関してウェルシュ大将は、「危険な前提だと危惧する人もいるが、彼らがステルス機をものにするにはある程度の時間が必要だろう。限られた資源の配分優先順位を考える際は、このような前提を置かざるを得ない」、「我々は現有の戦闘機を100%全て5世代戦闘機に置き換えられるわけではない」、「太平洋地域には、より高い投資の優先順位が与えられるべきだろう」と述べた。
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明日は、太平洋空軍司令官の発言、人材・人的資源面、そして州空軍や予備役面のエピソードを記事からつまみ食いします。
航空機の使用頻度や飛行時間が急激に伸び、しかも砂塵が舞う劣悪な環境下で、エンジンや精密機器にどのような長期的影響が出るか手探りの状態で突っ走っている状況が窺えます。
ある日突然ポッキリ・・なんてことがあり得るかも知れません。

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