東日本大震災で日本が揺れた(今も揺れていますが)今年4月6日、防衛省の防衛研究所が「東アジア戦略概観」に並ぶ新たな定期刊行物(毎年発行)を発刊しました。
その名は「中国安全保障レポート」。約40ページほどの小冊子ですが、これまで防衛白書の数ページでは書き尽くせなかった部分を補うように、分かりやすくまとめられています。
また、わざわざ購入する必要はなく、防衛研究所のwebサイトで自由に見られる(2MBで重いですが・・)ので助かります。
そして今回はなんと、日本語だけでなく、英語と中国語版も同時掲載です。
さすがにレポートの目的として「日中両国間の安全保障分野における交流の深化」と「安定した日米関係の構築に寄与」することを謳っているだけのことはあります。これまでは防衛白書もかなり英語版が遅れて出来てましたから・・・
レポートの前提として、
●「本レポートは、研究者の立場から作成したモノであり、日本国政府や防衛省の公式見解でない」との断り書きが冒頭に記載されていますが、まあ一般的な政府防衛省関係者の見方を代弁したモノとも言えましょう。
レポートの中身については・・
●「今回は、海洋航空などの分野で活動を拡大している人民解放軍の活動と、役割を増している軍事外交について分析した」と冒頭に記述されているような項立てとなっており、「主な分析対象を海軍、空軍及び第二砲兵」としています。
●戦力投射能力の拡大やC4ISR能力の向上が著しい
●また、台頭する中国の多面性として、PKOやアデン湾の海賊対処に出てくる一方で、南シナ海や東シナ海での強引さ、軍備の近代化等々の多面性を指摘
●中国の外交姿勢を国家レベルで確認
●人民解放軍の活動範囲の拡大や訓練の複雑化を確認。
●軍事外交との表現で、PKOでの実務外交や多国間枠組みを活用した交流の強化を紹介。ただし日本との関係は「政治関係が優先」と記述
●装備の近代化として、潜水艦、フリゲート艦、駆逐艦、空母、戦闘機、指揮統制管制機AWACS、空中給油機、弾道ミサイル、長距離巡航ミサイル、宇宙空間における能力を紹介
●課題として、情報の共有が道半ばで、空中輸送能力も課題があるとしている。
●中国は、東シナ海諸国が懸念している事実を認識し、主権問題を平和的に解決する姿勢を明確に示すことや、人民解放軍の活動が周辺諸国に不安を与えないよう自制的な対応が望まれる。
●PKOや中東での海賊対処で示しているように、国際規範を共有し、その維持や強化に貢献することが中国には期待される。
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斜め読みなので自身がありませんが、米国で中国軍事戦略の説明で一般的となっている「接近拒否戦略」や「領域拒否」(あわせてA2AD)との表現は一切使用されていません。
日本独自の分析だ!、との主張でしょうか。それとも「拒否」との表現が隣国を刺激するとの配慮でしょうか・・・
今後の充実発展を期待いたしましょう。
米国防政策と最近の日本
「QDRから日本は何を読む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「2QDRから日本は何を読む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「新防衛大綱とAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19
「レビン提言とAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-14-1
「(2/2)「防衛白書」5つの背信」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-12
「(1/2)「防衛白書」5つの背信」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-11
「7年前のクリスマスイブ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-23-1