全米航空宇宙工業会(AIA:Aerospace Industries Association)の会長(Marion Blakey女性)が先週のパリエアショーで、AirForce Magazineの取材を受け、米航空宇宙産業の将来への懸念を表明しています。AirForce Magazine Daily Archives28日付
AIAは、全米の官民用途を問わず航空宇宙に関わる企業を束ねており、主要なヘリ、航空機、ロケット、無人機、衛星、関連IT技術等々に関連する企業がほぼ加盟する強力な業界団体です。
この女性会長は2007年から5年任期で同職に付いており、前職は連邦航空局FAAの局長で、これまでにその手腕が高く評価され、数々の団体から表彰を受けている実力派です。
「売上げや儲け」以前に、ビジョンや夢が失われることが、この分野に挑戦する人材を失うことに繋がり、最も憂慮すべき事項である・・・と語っています。中国の陰にも懸念を・・・
Marion Blakey会長兼CEOは・・・
●航空業界の歴史始まって以来、初めて新たな設計の仕事がない事態に直面している。米軍は次世代戦闘機の開発に未着手だし、次期爆撃機計画も具体的なことが未定である。
●現状は、古い生産や修理のラインを維持しているだけで、何か新たなハードウェアを生み出す事業や投資を行っていない。
●いわゆる大企業が設計部門に継続投資を行っていないといった表面的な問題だけでなく、新しい優秀な技術者や科学者を業界に惹き付けられていない事への懸念を持っている。
●優秀な技術者や科学者は、彼らの成果が形になり多く生産される事を望んでおり、そうでなければ他の業種に興味を持つ。これがAIAメンバーの最大の懸念である。
●欧州の同業者も同じ心配をしており、優秀なタレントが東を向いている・・・中国等が先端技術に投資を増やしているのを見ているのである。
衛星分野も心配
●米企業は、商用衛星分野での市場を失いつつある。米国の輸出規制により、かつて先頭を走っていた我が業界は、他国企業との苦しい競争を余儀なくされている。
●早急に輸出管理規則を修正すべきである。衛星分野でも同様に、製品が売れなければ技術革新に投資が向かず、有能な人材も確保できない。
●オバマ政権が既に着手した規制見直しの動きを賞賛する。「乗り物」関連規制の7割を廃止する動きや、航空宇宙関連品への拡大検討を歓迎するが、その進捗速度が足りない。
世論のサポートは?
●世論調査によれば、米国民は厳しい財政下にあっても強固な国防が必要と考えており、指導者に適切な資源配分を求めている。
●世界が危機に満ちていることをあえて国民に警告せずとも、国民はそのことを理解している。しかし同時に財政赤字も懸念している。国防投資と財政健全化が相反するとは国民は考えていない。
●一方で、NASAへの投資には支持が多いが、宇宙開発と調査研究に対する評価は割れている。
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新規装備品開発が無ければ、優秀な技術者は夢や達成感を味わえず、他の業界に向かってしまう・・・
その分野が最先端の戦闘機や爆撃機でなければならないのか・・中国やインドやブラジル等々に本当に人材が流れているのか・・・
軍需産業の体質改善も同時に必要なのではないか・・・等々の質問もしてみたいのですが・・・AirForce Magazine誌自体が軍需産業の応援団のようなところがありますので仕方ないでしょう。
しかし輸出規制の見直しは早くやって頂いて、商売しやすい環境整備は急いで欲しいです。日本の武器輸出3原則にも外圧をよろしく。
「ゲーツの取得開発改革指針」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1
「米が武器輸出・開発の方針転換」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
不慣れながらTwitterも始めました・・・@Mongoose2011です。