「潜水艦だと思うのだけれど、なぜ航空母艦を建造しているのだろうか? 中国のやることにはよく分からない」
再び、石破元防衛大臣が自衛隊応援団体の50周年記念討論会で昨年11月発言された内容を長島前政務官のコメントと共にご紹介します。
「中国軍の動きはよく分からない」、つまり全体として統制がとれていない、また軍全体の何となくの方向性があっても、各軍種が個々にやっていることはバラバラなことが多い・・と言ったことを感じておられるようですが、全く同感ですし、米国防省もそう感じているようですし・・
「1月のゲーツ長官中国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1
防衛費獲得のための道具としてステルス機や空母建造だけを通して中国を見るのではなく、もう少し冷静な視点も必要なようです。
石破政調会長は(ちょっと言葉を継ぎ足してます)・・・
●中国の意図がよく分からないところが正直有ります。90年代半ば、台湾総統選挙の際に中国は短距離ミサイル射撃訓練を台湾周辺で行い台湾を威嚇した。しかし米空母が周辺に現れて、見事に中国は沈黙させられた。あの悔しさは絶対忘れないでしょう。
●もう絶対米国をこの領域に入れさせないと、臥薪嘗胆、驚異的な経済成長を背景に軍拡を進め、第1、第2列島線内に米軍が入ってきたときにこれを拒否する力を持つ方向でやってきたのだと考えざるを得ないと思います。
●しかし、そうであるならば潜水艦だと思うのだけれど、なぜ(対艦兵器が発達して脆弱な)航空母艦を建造しているのだろうか? 中国のやることにはよく分からないことがあります。
●大陸国家が大海軍を持ってうまくいった試しは一度もありません。ロシアも、ドイツも、スペインも、フランスも・・理由は分からないけれども・・・。
●ただ、人民解放軍内での海軍の位置づけが変わってきたとは思います。元々陸軍だけだったところに、海軍と空軍が一部局のような位置づけから始まって、今や人事を見ると海軍がかなり力を持ている。
●しかし、海軍が抑制的でなくなったとき、その国はコントロールを失うところがあって、どこかの条約派と艦隊派ではないけれども、一抹の危うさを私は感じている。軍事的合理性を超えた動きがあるのかも知れない。
●もし軍事的合理性に外れているならば、日米同盟は、又は米韓同盟は、どのような抑止力を持ちうるかと言うことを防衛大綱に反映させなければならない。我が潜水艦部隊はどうあるべきか、パワープロジェクションはどう運用するのかを考えておかねばならない。
続けて前防衛政務官の長島昭久議員は・・・
●石破さんがおっしゃった、中国が不透明で、大陸国家が大海軍を持って成功したことがないのも両方正しいと思いますが、注意が必要な点もあります。
●中国は14もある他国との国境紛争を、インドとの部分を残しほとんどこれまでに解決してしまっている。かつての大陸国家が海洋に集中できなかったのは、他国との国境で揉めていた点が大きいのですが、これが中国にはほとんどなくなっている。
●従って、中国は今や海洋進出に国力の大半を投入できる。
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両者のお話を無理矢理組み合わせると、余裕ができて国力を海洋に投入しうる中国が、かつての海洋に不慣れな大陸国家のように、コントロールを失った国のように軍事的合理性とは異なる次元の活動(軍人の夢や妄想の追求)に漕ぎ出す可能性がある・・とも解釈できます。
中国と対峙する方は、軍事的合理性に基づき対応すれば、意外に簡単に見え見えの弱点を突けるはずです。軍事的合理性に基づけば・・・ですが。「戦闘機命」や「パイロット命」や「艦艇命」、更に「陸自の体制維持」などの意味不明な組織防衛に入るのは、軍事的合理性に沿っていませんから・・・
中国空母を考える
「論争:中国空母は脅威か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28
「中国海軍の何を恐れる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-08
本当の脅威は内側にあり
「石破茂・元防衛大臣の怒り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24
「災害を隠れ蓑にするな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-31-1
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16