不同意の共有が第一歩

mullenIsrael.jpg来週退役するマレン統合参謀本部議長は20日夜、暗殺されたイスラエルのラビン元首相を追悼関連行事で講演し、40年にわたる自らの軍人経験を踏まえ、人とのつながりこそが物事を変化させ、引いては紛争を防止するとの考えを語りました。
ゲーツ前国防長官も中国との対話推進を語る際、ほとんどそれ自体は成果を生まなかった旧ソ連との戦略兵器削減交渉等を例に、定期的に関係者がテーブルについて会話することにより、誤解や誤算を避け、緊急時に事態の悪化を避ける手がかりとなることを、記者会見等でしばしば語っていたところです。
マレン議長は・・・
最も関係維持強化に努力した一人がパキスタンのカヤニ陸軍参謀長(Gen. Ashfaq Parvez Kayani:陸軍トップだが、実質国防相よりも権力者)である。議長在任中の4年間に27回パキスタンを訪問し、非常に緊密な関係を築くことが出来た。この関係は間違いなく、相互不信を乗り越え、テロに直面する両国の国益を前進させるのに役だった。
●米国は過去、1989年にパキスタンを見放し、1990年から2002年まで関係を絶ってきた歴史を持ち、パキスタンの人々はそのことを「昨日のことのように」記憶している。米国は911事案以降パキスタンとの関係改善に努力しているが、パキスタンの人々の懐疑と疑いは根強いモノがある
●パキスタン国内で米軍がビンラディン殺害作戦行った時、またパキスタンのアフガン国境管理が甘い事やハッカーニ組織とパキスタン情報機関の接近が明らかになるなど、両国の関係は平坦ではない
激しいやりとりを行ったこともあったが、決して絶縁に至ることはなく接触を続けてきたし、対話を継続してきたのである。
●この点、イランのカウンターパートとの対話が全く無いことは残念だ。仮にそれが完全な不同意で終わったとしても、我々は対話を持つことを歓迎する。なぜなら、現時点で何か問題が生じ紛争に至った場合、双方に関する理解が全くないままに誤解が誤算を生む可能性があるからだ。
mullenchina6.jpg中国との間では、Gen. Chen Bingde(陳炳徳)総参謀長が5月にペンタゴンを訪れ、2ヶ月後に私が中国を訪問した。我々は双方の関心懸念事項である多くの話題を議論し、5月の協議から長い道のりの一歩として幾つかの分野で双方が取り組みを始めている
私と中国総参謀長の間には、多くの事項で不同意部分があった事は認めざるを得ない。しかし同意できる部分もあった。この関係を継続し、相互理解を促進し、我々の疑問である中国の軍事力増強とその透明性、また中国の南シナ海での行動が平和的な解決を促進すると考えている。
エジプトのムバラク大統領を退陣に追い込んだ反体制運動に対する対応に関し、エジプト軍の自制の効いた対応は素晴らしかった。私は30回近くエジプト軍トップのエナン中将と話をし、民主主義に向かう過程を賞賛したモノである。これも長年にわたる両国軍の信頼関係に基づくものだと考えている。
同中将は我々との関係継続を望み、その重要性を強く感じていた
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mullenOriki.jpgマレン議長にとって、離任のスピーチを除き、最後の政策的スピーチであったろうと思います。いろいろなテーマが頭に浮かんだでしょうし、予算削減を巡る考えを述べることも可能だったと思います。
それでも他国との関係をテーマに据えたところが、軍事力の新たな時代を担ったマレン議長らしいところだと思います。そして、マーシャル元陸軍参謀総長(国防長官と国務長官も歴任)の考え方に学んだという点なども、ゲーツ長官の下で薫陶を受けたところが忍ばれます。 お疲れ様でした。
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追加情報速報!!
22日、上院軍事委員会にパネッタ長官と共に出席したマレン議長は、かつて無い最大級の警告をパキスタンに対して発しました。
本件を伝える「DODBuzz」は、「米軍最高位の幹部からこのような発言を聞くのは極めて希である。マレン議長が勤務間で最大の尋常でない情報を公開の場で暴露し、警告した」と表現しています。
mullenSASC.jpg●我々はパキスタンが、米軍を襲撃するテロリストや過激派を支援していることを承知している。パキスタンがそれを辞めなければ後悔することになろう
●カブールの米大使館攻撃や2008年インドでホテルを攻撃した者たちがパキスタンと繋がりを持ち、アフガン駐留米軍を悩ませている。
ハッカーニ・ネットワークはパキスタン情報機関の手先として機能している。
●パキスタンはアルカイダ追跡と米軍への地上補給ルート提供を行っているが、パキスタンは米国と近接戦を戦っているに近い状態にある。パキスタン情報機関が操っているのだ。
●マレン議長は不満を募らせているだけでなく、パキスタン軍指導者達との協力や交渉が無駄になる恐れを感じているのかもしれない
●軍事委員会の主要メンバーであるマケイン上院議員は、国防省が有効な対策を打てなければ、パキスタンへの経済援助をうち切る案を提示した。
これもこれまで積み上げた関係があるからなせる技なのでしょうか・・・
「マレン議長がアジア政策を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-27
「マレン議長訪中と美人通訳」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-12
「中国軍トップ訪米と美人通訳」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-18
「1月ゲーツ長官の中国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1

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