米国の衰退には長期間が

SEIRONOCT.jpg月刊誌「正論」10月号に掲載されている岡崎久彦氏の連載記事の中で、同氏が繰り回される米国衰亡論について見解を述べています。
世界経済における米国とその同盟国の比重が低下していることは事実であるが、それは半世紀にわたって続く長期的潮流のの一部であって、長くても20年を考えればよい日本にとって、これを理由に日米同盟を軽視することは無用であり、国益にとって逆効果である、との主張です。
まんぐーすもそんなモンだと思うのでご紹介します。
日本における米国衰亡論は、為にする議論が多く、論理的根拠のあるモノはほとんど無い。私は40年前、アングロサクソンの覇権はいずれ衰退すると言われながら400年間続いている、と述べたが、今から20年後に米国は衰亡すると自信を持って言える人はどこにもいない
911やイラク戦争後の米国を、1899年のボーア戦争以降の英国と比較し、英国がドイツに追い越されて行く歴史と米中間の関係を比べる論文もある。しかし英国は当時の見積もりを超えて長期間帝国としての勢力を保ち続け、小村寿太郎が「一定期間」として推進した日英同盟は機能した。
Okazaki.jpg●米国の一人勝ちだった1945—65年に郷愁を感じる人は多いが、当時は中国の「喪失」、ソ連の水爆実験成功、イランのシャー政権の転覆等があった。イラクやアフガンで米国はダメージを受けているが、何も根本的な変化はなく、同盟国は離れていない
●確かに米国の民主主義は機能しすぎ、個々の利益集団の利益に政治が左右され、将来世代のための利益集団が存在せず、「パロキアリズム」(身の回りのことばかりにこだわり、広い視野を失うこと)が問題ではある
●これは日本も同じ、90年代の日米経済摩擦以降は産業政策を放棄し、エリート教育や科学技術教育と対極にあるゆとり教育により国際競争力の低下を招いた。
●ビル・エルモットがリーマンショック後に看破したように、ドルに関してはユーロの方がむしろ苦境であり、人民元は想定外の自由化でもしない限り代わりには到底なれない。経済の覇権は数十年単位の変化の話であり、世間が騒ぐほど喫緊の話題ではない
軍事力の面で言えば、米国の圧倒的優位は明白であり、空母機動部隊を中国が複数造って運用するとなると、少なくとも10年以上は要するであろう。
ChinaAF.jpg●米国は財政難であり、軍事費の増加は難しい。しかし中国の脅威は英国がドイツと競争した当時ほどではない。第1次大戦前の英独関係になるには時間がある。それに中国の息がどこまで続くかも分からない
英国の例にあるように、衰退が囁かれながら1世紀は持っている。当時の英の衰退を指摘するのはいずれの時代でも正しかったが、衰退をあてにした第3者のもくろみはことごとく外れた
●世界経済における米国とその同盟国の比重が低下していることは事実であるが、それは半世紀にわたって続く長期的潮流のの一部であって、長くても20年を考えればよい日本にとって、これを理由に日米同盟を軽視することは無用であり、国益にとって逆効果である
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盛りだくさんな論文ですので、短く紹介することにはかなり無理があります。是非原文をご確認下さい。岡崎氏の主張にも確固たる根拠があるわけではありませんが、世の中の中国脅威論よりは落ち着いています
ご参考:ゲーツ前長官のスピーチ
「米国の将来を悲観するな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-09
chinaFlag.jpg日本が、資源に乏しく防衛が極めて困難な小さな島国であることは間違いのない事実であり、日本が対峙する海を隔てた大陸で理不尽な大国が力を伸ばしてきている現実もあります。
今現在論壇で発言力のある方には、90年代の日米防衛摩擦を経験して骨の髄まで「米国嫌い」になった方も多く、日本単独でやるべきとご主張の方も多いのですが、冷静な視点を持つ必要があります
「他国はなぜ米国と付き合うか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-02
社会保障や教育や技術開発、老朽化した社会インフラへの再投資もの欠かせない中、国防にはぎりぎりの議論が必要です。
水没した6機のF-2を修理するために、1150億円もの血税をつぎ込むことなど・・・どんな新品戦闘機よりも高い修理費!!!
「石破茂・元防衛大臣の怒り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24
「北岡伸一氏を支援する・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-04
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16

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