米軍や米空軍の細かな動きや、予算を巡るいかにも軍事官僚制と産軍複合体の生態ばかりを最近フォローして性格まで暗くなりそうなので、チョット目線を変えて中国に関する論説をご紹介します。
本日は中国経済を巡る議論です。
手抜きですが、両論とも岡崎久彦氏のブログよりです。米国の論文と岡崎氏の論評が混在していますので・・・。
中国の経済社会構造の限界を見よ。悲観するな
●ある国を見る場合、経済や社会の表層ではなく、その構造がどこまで自律的・持続的発展を可能とするものかが重要です。その意味で、中国社会がイノベーションを支えるものかどうかは重要なポイント。
●西暦1000年頃の中国宋王朝は、経済、技術で西欧の600年先を行っていましたが、産業革命は起きませんでした。市場の飽和もありますが、科挙に合格したエリートが富と地位を独占したことが大きな要因だったと思われます。
●現在中国も、共産党が全てを決め、功績を独占していますが、それは全ての責任を背負うことです。そして失敗は、暴動とそれに乗じて登場する新王朝の「革命」によって贖われてきたのが中国の歴史です。
●西側経済の苦境を前に、中国の一部は「中央集権は民主主義に勝る」と誇っていますが、一党独裁の集権制は、決定は速くても、現場がその決定を表向きだけ実行して結果が伴わないことも多く、その実例が相次ぐ鉄道事故と言えます。
●また、中国のモノづくりの費用も増加しており、「輸出基地」としての中国の意味は落ちています。今後の中国経済成長は、建設と消費への依存を一層強めることになるでしょうが、いくら人口が多くても、内需が急速に拡大するわけではありません。
●他方、米国も基幹産業がなく、金融は化けの皮がはがれ、ITは外注が主、というように、十分な雇用を生んで中産階級、大衆を潤わせるような経済構造が失われています。また米国は平等でも豊かでもなくなって、魅力が薄れて、ソフトパワーは米国から去りつつあります。
●世界は、中国への輸出依存度が増えるにつれて中国に個別撃破され、米国も「国債の大顧客」である中国に鈍くなるでしょう。
●そうした中で、日本としては、安全保障・外交両面で台頭する中国に対するバランス確保の手当を着実に続けていくしかなく、米国没落論ばかりに動揺してばかりではいけません。
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中国の為替より補助金を非難せよ
中国の補助金体系は、
①重要部門の全ての国有企業・国家統制下企業には予め保証されたに等しい市場シェアが約束されている、
②ほとんどの銀行が国有・国家統制下にあり、国有・国家統制下企業は、優遇金利に基づく政策融資の恩恵に浴すことができる。更に企業の借入金利が物価上昇率より低く抑えられているため、企業は借りれば借りるほど利息を稼げる。
③土地が公有であることから、国有企業は簡単に安価な土地を入手できる。
●このように中国国有企業は、外国企業も含めてそれ以外の企業とはまるで異なる有利な競争条件下にある。超過利潤により、海外の資源確保に乗り出している。例えば、中国石油天然気集団公司(CNPC)とChina Mobileの二社で、中国の最大の私企業500社を合わせたよりも大きな利益を出している。
●土地は生産要素として重要で、その配分を共産党が恣意的に決めることこそ、内外差別の最たるものであり、また共産党が腐敗と汚職から逃れられない構造的要因です。
●ところが、これほど重要な競争条件の非対称性を、米国の中国経済アナリストはこれまで十分指摘してきていない。
●米国は対応策として、技術的困難はあるにしても先ず補助金を金額にして計算し、中国の補助金を可視化することでWTOへ持ち込み、二国間協議の場でも補助金削除を突きだすことができる。
●人民元高をいくら求めたところで効き目はなく、それよりも米国は、中国の重層的な補助金体系を明らかにし、その非を鳴らし続けるべき。
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どちらも既にどこかで耳にされた見方かもしれませんが、最近はギリシャ危機と国内のTPP問題ばかりで飽き飽きですので、過去にさかのぼって取り上げました。
「予想より早期に中国が派遣国?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-03
「バイデン訪中と米中妥協」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12
「なぜ中国は最近高圧的か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-12
「中国インフレの混乱と処方箋」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-27