米国関係者に対し、「日本政府(民主党政権)にもっと圧力を掛けるように」と密かにアドバイスしていた等々と報道されたのが理由かどうかは不明ですが、防衛省の防衛政策局長で次官候補No1だった高見澤氏が、昨年から防衛研究所の所長に人事異動しています。
そんな高見澤氏が昨年11月末、インドネシアで開催され22ヶ国が参加した第15回ASEAN地域フォーラム(ARF)国防大学校長等会議に出席し、急速に変化し複雑さを増す安全保障環境を念頭に表題のような「中身」のプレゼンを行ったようです。
ARF国防大学校長等会議は、ARF内の相互理解のために、まずは当たり障りの少ないアカデミック分野から軍事交流を図ろうとの催しです。参加国の持ち回りで毎年開催されており、来年は中国での開催が予定されています(日本ではH13年開催)
高見澤氏は戦略シンクタンクの役割を・・・
①問題や趨勢を先取りし分析する
②多様さを増す諸分野の専門知識を統合する
③現実性のある選択肢を提示する
④安保問題に対するユニークな洞察を提供し、地域・国際問題に対するその国の見方を提示する
また、東日本大震災の教訓のひとつとして、教育においては予測不可能な事態に対応できる知的能力及びマインドセットの育成が重要であると強調したようです。
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プレゼンの細部は公表されていませんし、「現役お役人」の高見澤氏が本音を語れるわけもありませんが、上記4項目は的を得た指摘と考えます。
また、これまで名誉職的ポストだった防衛研究所長が自らの意見(内容からしてそう思います)を打ち出した点でも評価できると思いますので、ここはまんぐーす流に細部を邪推してみたいと思います。
①問題や趨勢を先取りし分析する
憲法9条や専守防衛などの非国際標準の縛りを排除し、また時の政権のスタンスも超越した視点から、日本の将来の人口動態や財政状況、更には国際情勢を成るべく曇りのない目で見つめ、マスコミ受けや世論の動向に左右されない率直な分析を行う
②多様さを増す諸分野の専門知識を統合する
お役所の縦割りや学閥を廃し、官民学の人材(学生から国会議員からプレスから大御所まで)がフランクにかつ活発に意見交換や発表できる場が様々な形式や場所で頻繁に開催される。
このようなシンクタンクが複数共存し、互いに成果を競い合う形で切磋琢磨する。官邸でも10名程度の戦略会議を定期的に開催し、主要シンクタンクの提案を含む提案を議論し、公開する
③現実性のある選択肢を提示する
右翼系月刊誌のように民族主義を煽る過激なタイトルの論調を掲げたり、やたらと「国家プロジェクト」との決まり文句を持ち出さず、子供手当を全額防衛費にとかの安直な議論を持ち出さない。
安易な現状批判に満足せず、安直な民意やワイドショー的な話題にくみせず、投票率の高い高齢者層ばかりに迎合せず、厳しさも併せ持つ痛みを伴っても真に必要な政策を提案する
④安保問題に対するユニークな洞察を提供し、地域・国際問題に対するその国の見方を提示する
欧米の価値観からのアプローチだけでなく、アジアや極東の人々の価値観や社会制度のあり方の観点から積極的に政策提言を行う。特に民主主義の程度や人権問題に対する柔軟な対応に心がけた提言を行う
高見澤氏の4項目は、各国国防省のシンクタンクを念頭に置いてのモノかも知れませんが、政策アイディアをどうまとめて提案するかについては組織の垣根を越えて共通だと考えましたので。
「防衛白書担当官僚の代弁」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-03-1
「2+2は震災モラトリアム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-22
「災害を隠れ蓑にするな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-31-1