1月26日に行われたパネッタ国防長官による2013年度予算案概要発表会見のトランスクリプト(質疑部分除く)が公開されました。
実質的な中身は、以前の記事で軍種別に削減メニュー中心でご紹介したのとほぼ同じですが、実際の会見では「戦略に沿って」5つのカテゴリーに分類して発表されていますので、その5つのカテゴリーに沿って、再び振り返りたいと思います。
「2013年度予算案の概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-27
必ずしも5カテゴリーと中身が噛み合って居ない部分もありますが、そこは米国防省の「心中を察する材料」と考えましょう。
削減数や細かな中身は上記の記事や記事内で紹介した米国防省公開の資料でご確認下さい
第1→軍は小さく細く、しかし敏捷で柔軟で緊急展開可能で技術的に先端。
●陸軍は朝鮮半島や中東で重いプレゼンスを維持、同時に特殊部隊に重点。一方でローテションによるプレゼンスを。海軍は前線プレゼンスを。空軍は航空宇宙を制し、展開能力を持つISRや無人機能力を提供。海兵隊は着上陸能力を持ち、州軍や予備役は有事に備える
●陸軍と海兵隊の兵員削減。しかし、911事案以前よりは大きいまま。空軍の空輸能力と戦闘機部隊削減。海軍はBMD能力が無く維持費のかかる巡洋艦や補給艦等を削減。
●行政上の無駄経費を継続して削減。競争入札の導入、ITによる業務効率化、人員削減、在庫管理、外注業務の整理
●兵力や装備の削減に併せ、大統領は議会に基地閉鎖再編手続き(BRAC Process)の許可を求める
第2→世界での態勢見直しとアジア太平洋と中東重視
●空軍は次期爆撃機で突破力のある長距離攻撃能力を求め、現爆撃機を維持する。併せて新空中給油機計画を進める
●重視地域における必要な海軍や海兵隊のプレゼンの実現。豪でのプレゼンス強化やフィリピンでの活動強化などを、相手国の意向を踏まえつつ協議しながら進める
●シンガポールにLCSを、バーレーンにパトロール船を。空母11隻体制の維持。潜水艦への継続投資(バージニア級攻撃潜水艦への巡航ミサイル追加搭載の設計や潜水艦発射PGS開発)
●海空ミサイルのセンサー開発、電子戦や通信能力への投資
●陸軍はフルスペクトラムの訓練を再開。アクセス拒否エリアへの侵攻も含む。朝鮮半島と中東でのプレゼンス
第3→革新的パートナーシップと同盟強化
●欧州陸軍で2個旅団削減するが、全地域コマンドから1個旅団をローテーション用に充て、欧州で展開訓練させる
●NATOとの共有能力強化に強く求められているISRやBMDに投資
●他地域では、911派遣が減少するのを受け、特殊部隊による支援や助言の機会を増やし、パートナーの能力向上に充てる
第4→多様な侵略にどこでも迅速に対応し撃破
●従来の脅威だけでなく、新たな技術的脅威に直面しており、対処のため技術的発展を追求
●宇宙、サイバー、特殊作戦、長距離精密攻撃等々における進歩で多様な脅威に対処
●核抑止の3本柱を維持するが、戦略原潜開発は2年遅らせる
第5→鍵となる分野の技術や能力への投資を維持優先
●維持又は増加させる分野:サイバー能力、拒否エリアへの投射能力、特殊作戦、本土ミサイル防衛、WMD対処、科学技術関連プログラム
●F-35計画は、更なるテストを完結させるため、及び大量購入前に必要な変更を加えるため、調達を遅らせる。
●不確かな将来の変化に備えるため、陸軍は中間クラスの士官や下士官をより厚く維持する。彼らは経験豊富で、必要時に戦力造成が必要な際に核となってくれる。また、予備役の維持に配慮する
●健全な軍需産業基盤の維持や無理なコスト負担を避けるため、種々の施策を講ずる
最後に→志願制維持のため。また2001年以来、9割も増加している人件費の問題。給与、医療費、退職者保障等の経費の問題
●給与削減は無し(2回繰り返し)。しかし2015年以降、給与上昇率を抑制
●医療経費の伸びを抑制するため、退役者への医療費値上げや治療費増を行う。ただし退役者の負担増後でも、一般市民よりは割安なサービスを受けられる。現役兵士やその家族へは影響を与えない
●退職制度検討のための特別外部機関設置の要望。
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最後にパネッタ長官は議会に向け、削減を伴う痛みの部分については全ての州や地域に影響を及ぼすモノであると述べています。議員が地元の基地が閉鎖されるとか、地元の工場に影響があるとかで騒がないように要望しています。
また、これ以上の削減は後世に渡り、安全保障上のダメージを与えると訴えています。
今後具体的施策が表面化すると、このトランスクリプトの5分類意味が徐々に染みてくると思います。フィリピンへの海兵隊や特殊部隊の話のように。