おでこちゃんは3日退任

「はじめは何の歌か分からなかったが・・・忘れがたい瞬間だった」
Flournoy1.jpg1月30日、「おでこちゃん」ことフロノイ国防次官(政策担当:3日退任)が最後の公式スピーチを行い、3年間の任期を振り返ると共に、政策課題について語りました。世界情勢全般にわたり触れているのですが、個人的な好みでつまみ食いして中身をご紹介します。
スピーチは予備役将校の団体による安全保障問題シンポジウムで行われた様ですが、本日ご紹介している写真は、同日ペンタゴン内で行われた送別セレモニーの様子です。
昨年5月2日の夜・・・
ビンラディン邸を襲撃したあの夜、その推移を私も見守っていた。そして作戦成功後、関係各国に知らせるためゲーツ長官が電話をするお手伝いをした。
●オバマ大統領がテレビに出演して「正義が実行された」と国民に伝えた後、私はホワイトハウスを後にした。ホワイトハウス周辺に人々が自然に集まって来ていることなど思いもよらなかったが、遠くで歌声がするのが聞こえた
●最初は何を唱っているのか分からなかったが、立ち止まって耳を澄ますと、それが「Star-Spangled Banner」(米国を讃える歌)だと気がついた。それは本当に忘れられない瞬間だった。
対リビア作戦は将来のモデル
対リビア作戦は将来のモデルとなる作戦である。米軍は、米軍のみが提供可能な空中給油、ISRや指揮統制インフラで支援したのみで、限定的な役割しか担わなかった
●米国は利害関係を有しているが、関係国がより高い関係や利害を有している場合、そしてそのパートナーたる関係国の能力をアップ出来ていれば、その関係国がリーダーシップを執ることが出来るようになるのだ
●対リビア作戦やアフガン作戦はNATOが同盟国であることを示したが、欧州関係国の経済的課題が大きくなるにつれ、どのように国防組織や国防投資を維持するかが問われる
NATO諸国(欧州諸国)は、それぞれのアセットを全体としてストックし、賢明に安価に能力を提供する道を模索する必要があろう。どのように互いの能力をレバレッジするか? 経験の蓄積が失われることをどう防ぐか。個々の総和でなく、全体としてより大きな能力を発揮することを考える必要がある
大変革はトルーマンに学べ
Flournoy1-1.jpg第2次大戦から5年後。旧ソ連との冷戦関係が明確になり、新たに誕生した共産主義の中国と北朝鮮による韓国侵攻に対処しなければならなかった1950年のトルーマン大統領から我々は学ぶべきである
トルーマンと真に優れた彼の補佐官集団は、この急激で大きな安全保障環境の変化に対応し、一連の施策に着手した。
●欧州におけるマーシャルプランであり、独立した空軍の創設であり、国防省やCIAの創設である。その努力はNATOや国連の創設にもつながったのだ
「Reversibility」の意味
●国防省の新国防戦略発表後、コメンテーターの何人かはこの「Reversibility」を取り上げ、「基本方針がまだしっかり定まっていない証拠」であるとか「重要決定事項が変更される可能性がある」と勝手に分析しているが、全くの勘違いである
●「Reversibility」とは、戦略や経済や技術変化に対応し、進路修正が可能な能力を確保しておく重要性を述べたモノである。例えば我々は、本戦略や計画で中級幹部を比較的高い比率で維持することにしているが、これは変化に応じて新たな部隊を編成する際のニーズを考慮している。このような施策を「Reversibility」は指しているのである。
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「米国のみが提供可能な能力を提供し、後は関係国の能力をアップしてリーダーシップを執ってもらう」、「対リビア作戦は将来のモデル」・・・これはNATO諸国だけへのメッセージでは無いと思います
60minutes.jpg空虚な軍(組織的な形はあるが、兵器や兵士や弾薬や訓練が不十分な軍)にはならない。柔軟で機動力があり即応体制を維持する。技術的な優位性を確保する。兵士との間の信頼感を損なわない。との重要方針と並び、同盟国の能力アップを図るのが米国防省の大きな柱となる方針です。
対ビンラディン作戦は、やっぱり手に汗握る大変な「賭け」だったんでしょう。30日に人気TV番組「60 Minutes」に出演したパネッタ長官も、「40年のキャリアで関わった作戦の中で、最も驚嘆すべき素晴らしい作戦」と語っています。
「国防次官候補者の発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-25
「フロノイ次官の退任」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-13
「フロノイのアジア政策授業」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-30

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