F-35からの撤退狙いか米海軍!?

F-35transonic.jpg米軍の中で海兵隊よりF-35調達予定数の少ない海軍(約370機)は、色々な場面でその「および腰」ぶりが話題になっていました。
開発の遅れが取り沙汰される度にF/A-18EF Super Hornetsの増加調達を持ち出し、最近では6世代艦載機の開発を打ち上げて想像図を出回らせるなど、枚挙に暇がありません。もっとも、6世代に関しては経費面から実現可能性無しとして消えましたが・・・
海軍外部からも、例えばシンクタンクCNASは緊縮財政下の米国防体制の提言レポートで、海軍のF-35調達数を半減するよう求めているところです。
「CNAS米軍改革案レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-26
Proceedings2012-7.jpgそんな中、海軍トップのグリーナート作戦部長が、7月号の雑誌Proceedingsに「Payloads over Platforms: Charting a New Course」との論文を発表し、その一部でステルス技術は絶対ではなく、対ステルス技術の進歩を侮ってはならないと警鐘を鳴らしました。
更にステルス技術に依存するプラットフォームへの投資集中から、遠距離から又は無人のシステムへの投資にシフトすることを考えるべきだ、とも述べています。
論文全体はそのタイトルが示すように、航空機や艦艇等のプラットフォームよりも、搭載ペイロード、つまり搭載兵器や電子機器の進歩が素早く、また最新技術導入が容易なため、ペイロードを最新にすることにより資源を投入すべきだと主張する内容です。
RIMPAC2010.jpgこの指摘は既に新国防戦略に繋がる流れの中で表明されてきており、米海空軍トップの連名論文「Air-Sea Battle」でも以下のように記述されている。
●我々は最高の技術の開発を継続するが、同時に既存技術の兵器能力を改良して領域拒否エリアで作戦可能にすることにも焦点を置く。
●これには、より融合された兵器、センサー、サイバー、EW、無人システムを含む。これらはプラットフォームや有人装備より進歩が早く、最新技術をより迅速に取り込むことが可能であり、Air Sea Battleに必要不可欠な要素である。
またProceedings論文の対ステルス技術の進歩を侮ってはならない」との説明部分では・・
GreenertJW.jpg対ステルス技術には、2つのアプローチがある一つは現ステルス技術が想定している航空機や艦艇正面からの電波反射や放出熱ではなく、機体等の側面や底や上部からの反射波や放出熱を利用して探知する技術
もう一つは現在のレーダーが使用していない、つまりステルス技術が想定していない低周波反射を探知する方法である。
●両対抗手段とも、現在の捜索側の情報処理能力では探知が困難であるが、側面反射や低周波反射波を複数の多様なセンサー情報を融合して迅速大量情報処理できれば、理論的には探知が可能となる
プロセッサーの処理能力が現在までの勢いで進歩すれば、遠くない将来にステルスVS対ステルスは現実味を帯びてくる
以上の指摘は以前ご紹介したCSBAの報告書にもありました
「ステルスVS対ステルス」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-04
3日付「DODBuzz」は作戦部長論文を解説し・・
GreenertJ.jpgF-35批判派は町中に溢れているが、F-35を飛ばそうとしている海軍トップがその仲間に加わった。グリーナート大将は明確にF-35やJSFとの言葉を使用しなかったが、F-35ジェンガ(積み木ゲーム)のタワーが倒れる時、それは海軍が積み木を引き抜く時だとの認識を更に確たるモノにしてくれた
●同大将は論文で、ステルス技術に固執しているよりも、我々はスタンドオフ(遠距離)兵器や新たな電子攻撃兵器を必要としていると主張したのだ。
●同大将はかつて公の講演で、F-35の運用や整備経費を考慮すれば、よりシミュレータ訓練を重視すべきだと述べ、F-35の本質を突き根の深い反対姿勢を示唆している。
●別の論文でも同大将は、高性能の長射程精密誘導兵器(巡航ミサイル等)は有人航空機が投下するJDAMのような兵器より、遙かに費用対効果が高いと力説している。
Tomahawk missile.jpg●トマホーク($1.2 million)とJDAM($30,000)の単純価格比較ではなく、JDAMを投下する航空機の訓練や整備コスト全体を考えトータルで考察しなければならないと主張している。
●Proceedings論文も含め、海軍トップの強固なF-35への反発が疑いなく明らかになったと言える。その証拠が海兵隊よりも少ない260機の海軍購入数に現れている。
●しかし一方で、グリーナート大将はF-35の複雑な背景を十分すぎるほど承知しており、また同時に長射程兵器過信のリスクも理解しているが故に、F-18に長射程兵器を搭載すれば十分だと強く感じていながら、高価で先進ながら役立つか不確かなステルスを受け入れているのであろう
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「DODBuzz」記事の論理展開は非常に強引ですが、海軍大将ならずとも常識のある人(戦闘機パイロット以外)であれば、海軍トップの気持ちは「DODBuzz」指摘に近いだろうとご想像いただけると思いますF-35はそれだけ問題の多い装備品です。
ところで、CSBAのAir-Sea Battleレポートや先日のAEIレポートに共通する欠点(信頼性を著しく下げている点)は、両レポート共に、中国対処に戦闘機の配備強化を重点ポイントとして上げている点です。(特にCSBAは日本に要求しています)
F-35Cformation.jpgこれらレポートは共通して中国の弾道・巡航ミサイルの脅威やサイバー・宇宙と言った新種の脅威を強く打ち出しながら、それら脅威に際も脆弱と思われる戦闘機の配備強化を謳っている点で多くの日本の心ある識者から疑問を持たれています。具体的には「研究資金を出してもらっているから戦闘機を応援している」との状況証拠十分の疑念です。
これらレポートや米国防省の戦闘機売り込みに何の疑問も持たず、米国との連携強化として推し進めているのは、我田引水の利害関係者(戦闘機パイロットを含む)でしょう。
逃げ言葉として「米国がこう言ってるから・・」を持ち出す人がいますが、自分の主張がないから流されるんです
戦闘機への投資を巡る議論
「戦闘機投資見直しVS命派対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-26-1
「空自OB FXはステルス無しでも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-16
「イスラエルがF-35で苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01
亡国のF-35
「韓国とノルウェーは強気」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-20-1
「再度:米会計検査院F-35懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-17
「カナダ検査院国防省批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-04
「米会計検査院のF-35批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-21
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過去の主要記事リスト(1100記事記念)を作成しました
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25

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