本日は「温故知新」です
8月といえば・・・政府の各省庁がそれぞれの予算要求をまとめて財務省に提出する時期です。本年は消費税や一体改革の話など、中・長期的な課題と並行しての予算案ですので、どれだけ各省庁の予算案の中身に注目されて本質の議論がなされるか疑問です。そこで、ご意見番のご意見を反芻したいと思います。
話題は「防衛省予算の本質的問題点」と「中国脅威に関する視点」です。石破茂・元防衛大臣にご登場いただきます。
特に、中国軍の動きは良く分からない・・・の当たりは、本年の防衛白書も言及した中国軍と中国政府の一体感のなさを、2年前から指摘している点で再評価されるべきと考え取り上げました。
石破茂・元防衛大臣(以下は、2010年11月11日自衛隊応援団体での発言)
●防衛省改革というモノがどうして止まっているのか。
●つまり、陸海空の装備が、本当に統合オペレーションを頭に入れて、陸は、海は、空はとこれだけという予算の立て方をしているかというと、私は3年間防衛庁や防衛省にいたが、絶対にそうだとは思わない。
●陸は陸、海は海、空は空・・それは絶対譲らない。シェアも変わらない。運用だけ統合でやっても、防衛力整備を陸海空バラバラにやっている限り、信用がならないと思っている。
●陸海空がバラバラに内局へ行って、内局の分からず屋と言う話になって、政治が馬鹿だと言って、それでおしまい。そしてみんなが何となく天を仰いで、この国はだめだとか言っている。
●こんなことではどうにもならない。朝鮮半島、台湾有事等々、それぞれどのようなオペレーションになってどのような装備が必要か、みんなが頭をそろえて防衛力を整備しなければならないのに、そうなっていない。
●私は防衛力整備局を作って、制服も内局も入って議論して、防衛省として自衛隊としてこれがあるべき防衛力だと言えなければならない。そうでないと、結局財務省に足元を見られる。
●政権が変わって、しめしめと言って防衛省改革をつぶした、少なくとも遅らせたことを私は大変不満に思っている。
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再び、石破元防衛大臣が自衛隊応援団体の50周年記念討論会で2010年11月に発言された内容を長島前政務官のコメントと共にご紹介します。
「中国軍の動きはよく分からない」、つまり全体として統制がとれていない、また軍全体の何となくの方向性があっても、各軍種が個々にやっていることはバラバラなことが多い・・と言ったことを感じておられるようですが、全く同感ですし、米国防省もそう感じているようですし・・
「1月のゲーツ長官中国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1
防衛費獲得のための道具としてステルス機や空母建造だけを通して中国を見るのではなく、もう少し冷静な視点も必要なようです。
石破政調会長(当時)は(ちょっと言葉を継ぎ足してます)・・・
●中国の意図がよく分からないところが正直有ります。90年代半ば、台湾総統選挙の際に中国は短距離ミサイル射撃訓練を台湾周辺で行い台湾を威嚇した。しかし米空母が周辺に現れて、見事に中国は沈黙させられた。あの悔しさは絶対忘れないでしょう。
●もう絶対米国をこの領域に入れさせないと、臥薪嘗胆、驚異的な経済成長を背景に軍拡を進め、第1、第2列島線内に米軍が入ってきたときにこれを拒否する力を持つ方向でやってきたのだと考えざるを得ないと思います。
●しかし、そうであるならば潜水艦だと思うのだけれど、なぜ(対艦兵器が発達して脆弱な)航空母艦を建造しているのだろうか? 中国のやることにはよく分からないことがあります。
●大陸国家が大海軍を持ってうまくいった試しは一度もありません。ロシアも、ドイツも、スペインも、フランスも・・理由は分からないけれども・・・。
●ただ、人民解放軍内での海軍の位置づけが変わってきたとは思います。元々陸軍だけだったところに、海軍と空軍が一部局のような位置づけから始まって、今や人事を見ると海軍がかなり力を持ている。
●しかし、海軍が抑制的でなくなったとき、その国はコントロールを失うところがあって、どこかの条約派と艦隊派ではないけれども、一抹の危うさを私は感じている。軍事的合理性を超えた動きがあるのかも知れない。
●もし軍事的合理性に外れているならば、日米同盟は、又は米韓同盟は、どのような抑止力を持ちうるかと言うことを防衛大綱に反映させなければならない。我が潜水艦部隊はどうあるべきか、パワープロジェクションはどう運用するのかを考えておかねばならない。
続けて前防衛政務官の長島昭久議員は・・・
●石破さんがおっしゃった、中国が不透明で、大陸国家が大海軍を持って成功したことがないのも両方正しいと思いますが、注意が必要な点もあります。
●中国は14もある他国との国境紛争を、インドとの部分を残しほとんどこれまでに解決してしまっている。かつての大陸国家が海洋に集中できなかったのは、他国との国境で揉めていた点が大きいのですが、これが中国にはほとんどなくなっている。
●従って、中国は今や海洋進出に国力の大半を投入できる。
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両者のお話を無理矢理組み合わせると、余裕ができて国力を海洋に投入しうる中国が、かつての海洋に不慣れな大陸国家のように、コントロールを失った国のように軍事的合理性とは異なる次元の活動(軍人の夢や妄想の追求)に漕ぎ出す可能性がある・・とも解釈できます。
中国と対峙する方は、軍事的合理性に基づき対応すれば、意外に簡単に見え見えの弱点を突けるはずです。軍事的合理性に基づけば・・・ですが。「戦闘機命」や「パイロット命」や「艦艇命」、更に「陸自の体制維持」などの意味不明な組織防衛に入るのは、軍事的合理性に沿っていませんから・・・
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米空軍は、空対空戦闘と戦略爆撃に捕らわれすぎており、他の重要な任務や能力を無視しがちである。(中略)私が国防長官を辞したら、「空軍の本来の姿に戻れる」と考えている者が一部にいる。しかし、決してそうはならない
(3月4日 ゲーツ国防長官 空軍士官学校にて)
最も可能性のあるハイエンドの紛争が生起したら、それには主に海軍と空軍が関与するであろう現実に陸軍は向き合うべきだ。
大規模な地上部隊を、アジアや中東やアフリカへ派遣するよう大統領に進言する国防長官が仮に将来現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと個人的に思う。。
(2月25日 ゲーツ国防長官 陸軍士官学校にて)
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
中国空母を考える
「論争:中国空母は脅威か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28
「中国海軍の何を恐れる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-08
本当の脅威は内側にあり
「石破茂・元防衛大臣の怒り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24
「災害を隠れ蓑にするな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-31-1
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16
「7年前のクリスマスイブ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-23-1
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米海空軍トップが連名でAir-Sea Battleやるぞ宣言!
「概要海空軍トップのASB論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「抄訳海空軍トップのAS-Battle」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
過去の主要記事リスト(1100記事記念)を作成しました
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25