15日、シンクタンクCSISがアジアで軍事支出の大きい上位五カ国の軍事費分析レポートを公表しました。
同レポートは中、印、日、韓、台の2000年から2011年にかけての公表国防費を分析したもので、公表国防費の総額のほか、装備品等調達費、人件費、作戦及び維持整備費、研究開発費の側面から分析しているようです。
ただ同レポートはドル換算で国防費を分析しているため、上記5カ国すべてで過去10年間にわたり国防費が増加しているとの結論になっており、円ベースで防衛費が右肩下がりの日本にとっては「?」な部分もあります。
15日付ワシントン・ポスト紙はレポート概要を・・・
●上記5カ国でアジアの国防費の87%を占めている
●中国の占める割合は、2000年では2割だったものが、2011年には4割に増加している。ただし中国の国防費は不透明で60%の誤差がある
●2011年時点では、中国の$89.9 billionがトップ、続いて日本が$58.2 billion、次はインドが$37 billionで続いている
●中国の急激な軍事費増強に引っ張られる形だが、過去の1950年代や1970年代の軍拡競争とは異なる。
●中国は分析対象期間平均で年率13.4%の上昇を見せているが、この率は他国平均の3倍以上であり、最も低い台湾は僅か1.8%の上昇率である
●ただし、欧州各国の国防支出は低下し続けており、兵員・装備数も大きく削減されている
●同地域の経済成長は徐々に低下していく(tail off)が、不確実な地域情勢や海洋領土問題が国防支出をけん引するだろう
●中国と日本および南シナ海沿岸国との領土問題を巡る緊張は高まるが、台湾海峡をはさむ緊張は経済関係の強化により和らぐだろう
15日付「Defense-News」の記事は・・・
●上記5カ国のトータル国防費額は大きな額になるが、日本を除く4カ国の兵員一人当たりの国防費はそれほどでもない
●兵員一人当たりの額は、軍隊近代化程度の一つの尺度であるが、日本が$238,100であるのに対し、他の4カ国は$28,200から$43,600の範囲である
●日本以外の4カ国の一人当たりの額は、欧州や米国軍のそれとも大きく差があり、少なくともある程度は軍隊の質の差を現しているものと考えられ、今後もフォローする意味がある
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徴兵制の有無や物価水準等々、数字を分析するに当たって考慮すべき種々の要素が反映されているのか疑問の多い違和感のある分析結果ですが、紹介したWP紙のほか、WSJ紙もCSISのレポートを15日付で淡淡と報じています
比較的均質な欧米諸国の軍事力分析手法を、そのまま多様性のあるアジアに適応する辺りが、米国シンクタンクの危うい処なのでしょう。
日本政府や防衛省は、このレポートを使って米国政府に日本の防衛努力を訴えるのでしょうか・・・。米国の地域専門家には通用しないと思いますが。
「脅威の変化を語らせて」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08