最近、防衛省の研究機関である防衛研究所は、盛んに軍事における「イノベーション」や「軍事における革命(RMA)」を取り上げています。
例えば、10月26日には創設60周年の記念行事で「防衛力の戦略的マネージメント」と表面上柔らかなテーマを掲げながら、実際の討論では「軍におけるイノベーションには何が必要か?」が中心的議題でした。
そしてその流れを汲むように、防衛研究所紀要 第15巻第1号のトップに、「軍事における革命(RMA)」のこれまでの理論研究を整理分析する主任研究官の論文を掲げました。
あくまでも同論文は、RMA主要理論の効用と限界について論じることを主な目的とし、戦略文化と組織文化のRMA説明理論としての有効性を検証する目的を掲げたモノです。
しかし・・・防衛研究所内にもストレスがたまってきたのでしょう。
まんぐーすがチマチマ愚痴るまでもなく、中国の軍事増強を普通に見れば、複数の欧米主要シンクタンクが分析する中国軍事脅威の実態を素直に読めば、組織防衛意識から脱却した視点で見れば、戦闘機命や・・・組織防衛が「奇妙」であることは一目瞭然です
防衛研究所の研究者にもそのような危機感があり、米国を中心とする対外交渉に参画する研究者を中心に、組織防衛意識と時代遅れの脅威認識に立った陸海空自衛隊への不信感が高まっていると思われます。
そんな状況は、3年間防衛大臣を務めた石破茂・自民党幹事長が雄弁に語っています。それも自衛隊応援団体の会合で・・
●陸海空の装備が、本当に統合作戦を頭に入れて、陸は、海は、空はいう予算を組んでいるかというと、私は3年間防衛省にいたが、絶対にそうだとは思わない
●陸海空がバラバラで信用ならない。別々に内局へ行って分からず屋と言って、政治が馬鹿だと言ってそれで終わり。天を仰いでこの国はだめだとか言っている
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29-1
前置きばかり長くなりましたが、本日は、防衛研究所紀要の「軍事における革命(RMA)」に関する塚本勝也氏の論文から、如何に軍事組織が変革できない組織であるかを述べた部分のさわりをご紹介します。ほんの一部です。
●RMA第一人者であるスティーブン・ローゼン(Stephen Rosen)は、軍事組織において変革が行われないことは「法則であり、自然状態」なのだと主張している
●マハン(Alfred Mahan)は「いかなる軍隊も自己変革をするはずも、することもできない」、「外部からの支援が必要」と記述
●ポーゼン(Barry Posen)も、軍事組織は自らRMAを実現することはほとんどないと主張し、その理由として3 つの要素を挙げた。
—第一に、軍事組織は、不確実性を低減させることを第一の目的としており、既存のやり方を大きく変化させることはない。
—第二に、軍事組織は極めて階層的であり、RMAを促進するボトム・アップの情報の流れを妨げる。
—第三に、軍の幹部は既存の戦闘方法に熟練していることによって昇任したのであり、それを変化させるような動機は小さいということである。
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前置きばかり長い記事で失礼いたしました。塚本氏の論文は、多様な例を紹介している点で興味深いです。
人間組織の改革が理論で割り切れるとは思いませんが、色んな視点で軍事における変化の歴史を学ぶことは意義あることでしょう。
ちなみに防衛研究所60周年記念シンポジウムでの軍事イノベーション議論は
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-31-1