温故知新シリーズです
少しづつ昼間の時間が長くなり、別れや旅立ちの季節が近づいています。送別会や卒業式で、壮行会や謝恩会で、新たな挑戦に立ち向かう若者に言葉を贈る機会が増える季節です。
以下は過去記事の再録ですが、そんな機会に伝えたい言葉がたくさん詰まったスピーチです。
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信念は心の炎。人の心を温め、照らすもの。そして人が君たちに従おうとする力にもなる
自信を持つリーダーは、日陰にあって他(部下が)が注目や称賛を浴びることを見つめ、他の成長を妨げる大きな陰を作らない
2011年5月27日、ゲーツ長官は海軍士官学校の卒業式に臨み、この戦時にこの道を選択した士官候補生に敬意と祝意を表するとともに、卒業生にリーダーが備えるべき資質について述べました。いわば主催者側としての卒業式スピーチを、まんぐーすは初めて読んだ気がしますが、「直球ど真ん中ストレート」です。
今回の卒業生は、ゲーツ長官が就任後に入学した最初の学生であり、また国防大臣としての最後の士官学校卒業式でもあることから、その思いが原稿から伝わってくるような気がして目頭が・・・。30年前のCIAでの失敗から先日のビンラディン作戦成功まで・・こんな思いも抱えていたんですねぇ・・。
本当は、若者が「耳にたこ」ほど聞かされていても良い話(年寄りも)だと思いますが、最近日本であまり聞かないお話で・・ストレートにずしんと聞かせて(読ませて)いただきました。
うまくご紹介できるか自信がありませんが、挑戦する価値有りと思いますので・・・ぜひ原文で。
卒業生諸君(Notre Dame大学に昨秋フットボールで勝った)へ
●2007年、イラクで死傷者が最悪になり成功への道が見えにくかった時期に入学し、海軍のリーダーとしての選択をしてくれた今回の卒業生諸君である。
●ルーズベルト大統領は言った「国家の正否は平均的な国民の働きに掛かっており、平均的な国民が良くなければならない。同時に、国家指導者のレベルが図抜けて高くなければ、その国民のレベルを高く保つことは出来ないのだ」と。君たちは平均的な国民ではない。単に平均的国民であることに満足することは許されない。全てに高いレベルの指導者でなければならない。
●私も46年前に大学を卒業して8人の大統領に仕える公務をスタートしたが、真のリーダーシップとは、希にしか出会えない貴重なものである。それは人が部分部分しか持ち合わせず、全体として発揮されることが滅多にない。
リーダーの資質(brief thoughts on those qualities)
●Vision
日常やその日のことばかりでなく、将来を見通し可能性や潜在性に目を向けることである。そのためには他人がやらない又は出来ないことに目を向けることである。
●深いConviction(信念)
それは心の中の炎であり、人の心を温め、照らすものである。それは人が君たちに従おうとする力にもなる。
●Self-confidence(自信)
世の中に広く見られるエゴや過信とは異なる。それは他人に責任と成功の両方を与えるものであり、日陰にあって他人が注目や称賛を浴びることを見つめる能力である。つまりこれを持つ指導者は他の成長を妨げる大きな陰を作らない。
●Courage(勇気)
単に前線で見せる肉体的な勇気だけではない。新たな道を歩む勇気であり、見栄えのすることだけでなく正しいことを行う勇気をである。最近では軍でもビジネスの世界でも、チームワークが求められ君たちも学んだろう。しかしリーダーとして君たちは必ず、一人で立ち向かい、これは間違いだ、皆さんに同意できない、こうあるべきだと言わねばならない場面に直面する。この時こそ真の勇気を発揮すべき時である。
●Integrity(誠実さ)
これなくして真のリーダーシップはあり得ない。最近ではこれが、奇妙な目で古めかしいもののように見られている。今日成功したと伝えられる人達の中には、この要素を感じない人が少なくない。しかし真の指導者にとって、自立心、自制心、ほこり、正直さと言ったものは絶対的な構成要素であり、基礎である。
●Common Decency(上品さ・目下への誠実な態度)
君たちの周りの人、特に部下とどのように接するかである。公平さと敬意を持って接することである。トルーマン大統領は「君たちに反論できない人達とどのように接するか」と表現し、指導者のリトマス試験紙とも言われている。
失敗や成功にどう向き合うか
●人なら誰でも、成功も失敗も経験する。しかし失敗も成功も、君たちの信義に従い、正しく誇り高くあるべきことを知っていれば最終的な成功に導かれるだろう。大事なことは、どのように受け止め対応するかである。約40年前、ガソリン運搬船でブイに突っ込みエンジンをだめにしたような海軍士官がいた。私は今彼と毎日仕事をしている。マレン統合参謀本部議長のことである。
●約30年前、今も忘れない1980年4月24日の夜。私がCIA長官の上級補佐官として、計画段階から携わったテヘランの米大使館人質救出作戦の夜である。危険のある作戦だったが、正直私は成功すると信じていた。しかし違った。焼けこげたヘリの映像と乗員の遺体写真が遺体写真が世界を駆けめぐり、米国の威信を大きく傷つけた。
●しかし特殊作戦に当たる者たちは、米軍もともに、反省し改善し前を向き、ひたむきに訓練し批判にも耐えてきた。そして約1ヶ月前、私はホワイトハウスで同じように緊張の午後を迎えていた。ヘリ墜落の知らせに一瞬30年前がよみがえったが、作戦は別の結果を迎えた。大量殺人者は相応しい最後を迎え、世界は米国の軍事力に驚嘆した。国は正義の実現を目にし、政府が困難なことを正しく為し得ることを知った。民主的な文明に成り代わり、最も危険な恐れを知らぬ敵に一撃を与えたのだ。
私を支えてきた思いは・・
●今朝この会場を訪れて思い出した。大学の学長から国防長官に着任した当時の思いだ。Texas A&M大学では18-25歳の学生がTシャツや半ズボンで楽しくやっていた。しかし就任後最初に訪れた前線では、全く同じ年代の若者が、防弾チョッキに身を包みライフルを手に、米国民のために命をかけて戦っていた。彼らの何人かは国に戻れないだろうと思い、実際にそうであった。
●以来私は、制服を着て戦う若者を自分の息子や娘として、責任を持って責務を果たすべく毎日を過ごしてきた。君たちが誇りを胸に戦い、安全に帰還することを唯一の願いとして。君たちがこの道を選んでくれたことに忠心より感謝し、最大の敬意を持って君たちのために尽くすことを誓う。
●May you have fair winds and following seas. Congratulations.
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対ビンラディン作戦をゲーツ長官はこのような思いで見ていたんですねぇ・・・。30年の思いを込めて・・。
真の正しいリーダーとしての「自信」と「勇気」と「誠実さ・上品さ」・・いくつになっても大切にしたいです。そうだよな・・真のリーダーの自信とは・・・。
「君たちが誇りを胸に戦い、安全に帰還することを唯一の願いとして・・・」・
「暴露ビンラディン作戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-03
「秘話映像イラン人質作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-07
士官候補生への講演シリーズ
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2