5日付DODBuzzが「予算問題で空母即応態勢が危機」との記事を掲載し、定期修理や燃料交換費用が予算強制削減で確保できず、緊急時に派遣する空母が十分確保できない状況になりつつあると伝えています
海軍艦艇は一般に、「作戦行動」、「修理」、「訓練」(更に「出動予備」確保の場合も)のパターンで船を回していくため、1つの任務に3~4隻が必要なのですが、その「回し」パターンが一度崩れると、取り返しには長期間と兵士への負担を強いることになります
記事「予算問題で空母即応態勢が危機」は・・・
●先週、海軍はやっとのことで空母リンカーンをノーフォークから定期修理場所ニューポートへ移送する経費を工面することが出来た。約2300億円(?)必要な定期修理費用の一部だが、これで2015年まで使用不能になる
●リンカーンの事例は一例で、予算問題は来週の海軍協会総会(Sea Air Space 2013 symposium)で大きな話題になるだろう
●昨年11月に空母エンタープライズが引退し、金食い虫の新空母Gerald R. Fordが就航するまで、米海軍の空母は10隻体制となる
●海軍トップのグリーナート大将は2月に議会で、「これまで通常は3隻確保していた作戦投入可能な訓練済みの待機空母が、2014年度一杯、たった1隻になる」と繰り返し強調したところである
●ちなみに現在の空母全10隻の状況は
— LincolnとRooseveltは燃料補給と大規模定期修理(Newport)
— VinsonとReaganは定期修理(San Diego)
— Nimitzは西海岸で、Bushは大西洋で訓練
— Stennisは中東からの長期派遣後で帰還中
— George Washingtonは母港横須賀に配備中
— Eisenhowerはアラビア海に展開中
— Trumanはノーフォークで即応態勢に
金食い虫:新空母Gerald R. Ford:CVN-78
●当初予定の建造費が4600億円だったところ、既に900億円の追加経費を注入している。3月マケイン上院議員は「この空母は当初予算を900億も超過している。繰り返す900億円である」と上院軍事委員会で訴えている
●同クラス空母の2番艦であるJohn F. Kennedy (CVN-79)について同議員は、1番艦価格上昇の原因を明確にして教訓を示すまで、2番艦への支出を抑制するとも述べている
CNASは空母投資の有効性に疑問符を
●報告書作成者(元空母搭乗操縦者)は「空母コンセプト誕生から100年が経過し、その戦略的有効性は急速に終焉に向かっている」と指摘
●更に「空母は既に海の(絶滅した)恐竜と化しており、衛星による偵察や長射程精密誘導兵器の登場により、運用に必要な距離まで目標に接近できず、生存も難しくなっている」と空母への投資を酷評している
/////////////////////////////////////////////////////
海軍協会主催の「Sea-Air-Space Exposition 2013」は、4月8~10日の間に開催されるようです。
様々な思惑をはらんだ発言が飛び出すと思われますが、気が向いたらフォロー致します。
空母の建造や維持にはお金がかかるんですねぇ・・・。ただ空母の定期修理費用が2300億円だとの部分は、あまりに高額なため「?」としました。原文には「$2.6billion overhaul the ship needs to rejoin the fleet」と表現されているのですが
なお、上記の記事も取り上げたCNASのレポートに関する記事は
「空母とF-35への投資を中止せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-14
「空母無人艦載機のRFP発出へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28-1
「空母カタパルトの革命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10
Facebook「東京の郊外より・・・」もよろしく
→http://www.facebook.com/holylandsonettokyo