19日付Defense-Tech記事が、フォード級空母の建造状況を紹介しつつその特徴を宣伝し、将来にわたり戦力投射の重要な一翼を担うとの海軍幹部の話を紹介しています。
記事のタイトルは「無人機に備える将来空母」ですが、10日の無人機X-47Bの初空母着艦に掛けただけで、あまり具体的な言及はありません
また、各種ミサイルや精密誘導兵器の発達と拡散による空母の脆弱性増大については全く言及が無く、空母の重要性について「ロシアや中国やインドが空母を建造していることが、空母の重要性を物語っている」と言葉を濁している記事ですが、フォード級空母やその方向性について学ぶ機会ですのでご紹介します。
フォード級空母関連のあれこれ
●フォード級1番艦(USS Gerald R. Ford:CVN 78)の進水式は本年11月に予定されており、その後各種試験や訓練を経て、2016年後半には任務に着く予定である。2番艦(John. F. Kennedy:CVN 79)は2025年までに、そして3番艦(Enterprise:CVN 80)は2017年までに運用を開始する計画である。
●同級空母はいくつかの新方式や最新技術を搭載する。まずより広い甲板、最新の原子力動力機、2バンドレーダー、改良型の着陸装備、飛躍的な発電量増加、電磁式のカタパルト(EMALS:Electro-Magnetic Aircraft Launch System)等である。
「試験映像と解説:電磁カタパルト」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10
●もちろん、10日に着艦に成功したX-47Bのような無人機の受け入れにも困難は無い。無人機は有人機にとって換わるのではなく、確実に将来の我々の装備品の一部となるだろう。
●特に発電能力は、4機の26メガワット発電機を装備し、ニミッツ級空母の3倍の能力を有している。これにより、2バンドレーダーや電磁式のカタパルトの運用を支えるほか、次世代の兵器であるビーム兵器又はレーザー兵器の搭載を可能にする
●ビーム兵器は、現空母の防御を支えるCIWS:ファランクスやSea SparrowやRolling Missileと共に、空母の防御を支えるだろう
●空母搭載システムの増加と自動化の推進を使用可能電力の増加が支え、その結果として省人化や維持経費の削減が可能になる。省人化により、50年間の運用期間で約4000億円の削減が可能と見積もられている。
●空母の電化により、省人化や自動化のほかに艦橋の小型化が可能になり、より広い甲板確保が容易になる。より広い甲板は「sortie-generation rate」や航空戦力運用の自由度を増し、戦力投射能力を向上させる。
●無人機は有人機よりも遥かに航続距離が長い(一般に2~3倍)が、甲板の拡大により無人機と有人機の両方の運用がより容易になり、空母の戦力発揮能力が向上する。これはA2AD脅威に対処するISR能力と攻撃能力両方のアップを意味する
空母の重要性と将来について
●専門家McGrath氏(オフショアコントロール論嫌いの軍事コンサルタント)は、「海軍は無人機の発進と着艦に特化した空母設計を考えるべきだ。無人機空母は、今後50年以上にわたり米国パワープロジェクションの強力シンボルとなり、代替出来ない存在となる」と語った
●フォード級担当の海軍少将は「大型甲板の空母は我が必要とするプレゼンスと戦力投射を可能とし、世界中の多様な任務に求められ、他で代替出来ないアセットである。ロシアや中国やインドが空母を建造していることが、何よりも空母の重要性を物語っている」と主張している
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冒頭で述べた空母の脆弱性問題と、平時からのプレゼンスや戦力投射能力をはじめとする有用論の対立は、今後も長く続けられるのでしょう。背景には組織防衛がありますから、妥協点を見つけるのは用意ではありません。誰かが決断しない限り。
恐らくその決断は、高価な空母の建造が継続できなくなる財政上の問題に導かれるのでしょう。3番艦までの計画をご紹介しましたが、現空母と1対1で後継艦を購入することは不可能でしょう
中国空母の話題がしばしば取り上げられますが、決してわが国の地対艦ミサイルや空対艦ミサイル積極導入には話が向いて行きません。海上自衛隊は艦艇の取得に影響が出ることを恐れているのでしょうか? 又は航空自衛隊の最優先「ゼロ戦の夢もう一度:空中戦」では無いために優先度が低いのでしょうか?
中国空母関連の過去記事
「中国空母艦載機J-15の評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-26-1
「画像中国空母Shi Lang施琅」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-08
「論争:中国空母は脅威か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28
「中国海軍の何を恐れる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-08
「石破茂・元防衛大臣の疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-21