28日付米空軍協会web記事が、「中国ステルス機開発の意図は?」とのタイトルを掲げ、3名の専門家の意見を紹介しています。
どの専門家も情報不足で驚くほどの内容ではありませんが、熱く語っているような気配もありませんので、その程度の関心程度かな・・と思った次第です
経緯を振り返ると・・・
●2010年末にJ-20の写真が出回り、ロシアが開発していた「MiG 1.42」との類似性が明らかに。2011年初にゲーツ国防長官が訪中の最中に、初飛行を実施
●2012年9月、J-31のプロトタイプ写真が出回り、その後間もなく、飛行テストと思われる飛行中の写真もネット上で確認された
●ちなみに、米国防省の「中国の軍事力2013年」報告書は、「中国のステルス戦闘機は、2018年以前に運用可能状態にはならないだろう」と分析し、「中国はステルス戦闘機開発で、地域での戦力投射能力向上と地域の航空基地等への攻撃能力強化を目的としている」と記述しています。
専門家への突撃取材からは・・・
Rick Fisher氏
(senior fellow at the International Assessment and Strategy Center)
●両方の計画から、米国に追いつけ追い越せとの中国の意図が伺える。中国は米国と対等では満足しないだろう。全ての大国がそうであるように、中国は軍事的優越を望んでいる
Mark Stokes氏
(executive director of the Project 2049 Institute)
●中国軍が何を行っているのか不明である。またこの新型戦闘機が、地域の防空にどのような影響をもたらすかもよく分からない。
●中国の軍事技術が進歩していることは確かだが、中国の航空産業に問題が多いことも確かである
Ross Babbage氏
(founder of the Kokoda Foundation in Australia)
●断定的なことは何も言えない。先進戦闘機開発についてかなりの革新的進歩があるとは思うが、その能力については深読みすることは出来ない。
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中国の戦闘機や空母を無視できるとは言いません。でも、これらに捕らわれ、これらを相手に、我が国は深入りしてはいけないと思います。
中国の立場に立てば、従来の通常兵器や核兵器で圧倒的優位にある米国とその同盟国に対し、通常兵器や核兵器で勝負しようと考えるでしょうか?
拡散し市場に出回る技術を活用し、弾道ミサイルや巡航ミサイルやサイバーや宇宙兵器に力を入れ、比較的容易に、かつ安価に、必要な範囲での軍事的優位を確保しようと考えるのが自然ではないでしょうか?
これらを国防長官として指摘したのがゲーツ国防長官(当時)でした
●米海軍艦艇の総排水量は世界最大で、少なくとも追随する13カ国の総排水量をも上回っている。しかも13の内、11カ国が同盟国である。搭載ミサイルに至っては追随20カ国の合計より多い。空母は他国の総計の2倍以上を保有しているのだ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
●全ての潜在的敵対者、つまりテログループ、ならず者国家、ライジングパワー、これら全てが共通に学び得たものは、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは賢明ではないとの認識である
●潜在的敵対者は、米国に対して通常兵器の軍備拡張競争を仕掛け、破産する道を選ぶだろうか
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
逆に我々の立場からすれば、戦闘機や空母に大きな投資をしてくれれば、西側のステルス機や誘導兵器の格好の目標になり、対応しやすいのではないでしょうか?
飛行場など多くの脆弱なインフラや事前訓練を要する戦闘機や、大きく攻撃容易な空母に投資してくれれば、対抗オプションの準備も可能で、抑止力を強化することが難しくないと思えます
現在の日本には、「西側のステルス機や誘導兵器」の能力を活用するに当たっての諸制約がありますが、今の雰囲気からすれば、将来克服することも可能でしょう。
だから中国はこれらを総合的に判断し、戦闘機対戦闘機や、艦艇対艦艇の戦いでなく、「地域の高列度軍事紛争に短期間で勝利することを意図」(「中国の軍事力2013年」報告書の表現)し、弾道や巡航ミサイルを初動で多用し、サイバーや電子妨害や宇宙アセット攻撃を併用した作戦を考えているのではないでしょうか?
暑さも和らいできましたし、そろそろ落ち着いて思索を深めたいと思います。