森本前防衛相が「中途半端に」防衛構想を語る

morimoto4.jpg9月4日付産経新聞の「正論」に森本敏前防衛大臣が登場し、新たな防衛大綱策定に向けた議論に意見を述べています。
「積極領域防衛」という言葉で「専守防衛」を否定し、中距離地対地ミサイルや索敵地攻撃能力の強化、基地の強靱性・抗たん性の強化陸上自衛隊による地上発射ミサイル全ての運用、これらを含めた「統合的な防衛戦略」の必要性を訴えています
上記の主張は、まんぐーすがこれまで「チマチマ」訴えてきた方向と同じなので異議はありませんが、紙面の都合からか、わざと言及を避けたのか、これら政策の説明に不可欠な背景や「情勢認識」や「脅威認識」への言及が皆無なため、何となく読者に「響かない、唐突な主張」になっている印象は否めません
また元航空自衛官の森本氏が大臣として選定したものの、導入すれば森本氏が主張する防衛構想を破壊しかねないF-35や戦闘機について、「戦闘機の増強」の6文字だけで逃げている「不誠実」な態度も非難されるべきと考えます。
本日は森本氏の「正論」論考を理解するため、「勝手に邪推シリーズ」として、森本氏に代わり、背景や情勢認識や脅威認識や本音部分を補足いたします。
まず、4日付産経新聞「正論」での森本氏主張
Morimoto.jpg●激変する安保環境を前に、防衛力のあり方や保有戦力の前提となる防衛構想を明確にしなければならない。島嶼部攻撃への対応、警戒監視能力の強化、弾道ミサイル攻撃への対応は特に重視されるべき
●米国防費削減が「アジア回帰」に及ぼす影響を考慮し、米国の同盟国・友好国の多国間協力による相互補完促進が効果的。日本は、地域の多国間活動に積極的に参加協力し、地域国の能力構築に協力すべき
●日本独自の対処能力と周辺地域での活動を拡大し、日本の機能と役割を明確にすることが必要。「専守防衛」は成り立たないので、「積極領域防衛」の思想で防衛力を周辺地域に投射する態勢を確立する必要がある
●具体的には、対空型無人機、早期警戒機、対潜哨戒機、警戒監視レーダーなどを備えた警戒監視・情報処理能力の格段向上。領域防衛には、水陸両用部隊、輸送船、潜水艦を含む艦艇や戦闘機を増強し、地上配備型SM-3弾道ミサイル防衛中距離地対地ロケット、索敵地攻撃能力の強化が必要
自衛隊の統合部隊をグアムに常設し、日米豪や東南アジアの国々との多国間演習も周辺で行う。ジブチの自衛隊拠点も強化し、部隊展開、邦人救援の能力を強化
●防衛力の質、量を拡充するだけでなく、紛争状態に対応し得る戦闘技術、後方支援態勢、基地の抗たん性を含め統合運用による防衛態勢を改善
Morimoto3.jpgミサイル防衛では、陸上自衛隊が地上発射ミサイル・ロケットの全てを運用し、海上輸送部隊も保有することが望ましい。
●同盟や国際協力へ向けて周辺地域で防衛能力を発揮するためには、防衛法制や防衛体制上の整備をさらに進め、統合運用を強化する必要が生じる
●今回の在り方検討中間報告で、防衛力としての所要とその優先課題や重点事項を羅列したのはいい。だが、これらを全体として統合運用する防衛構想、防衛戦略を明確にすることが先決である
邪推:森本氏の情勢や脅威認識と本音
Chinese-BM-ranges50.jpg●大規模紛争の可能性は低いものの、基本的に中国は、作戦初動で弾道や巡航ミサイルにサイバー戦や宇宙戦を大規模に仕掛け、「地域の高列度軍事紛争に短期間で勝利することを意図」(「中国の軍事力2013年」報告書)している
●中国は、初動で制空権を確保した後は、海上海中アセットで第一列島線内を支配して「聖域」を確立、A2ADを行使する
●これら中国の猛烈な初動攻撃を察知し備えるため、ISR能力、BMD能力や基地抗たん性向上が不可欠
●ただどれだけ頑張っても、これだけの攻撃を受ければ日本は大被害を受けるので、グアム島に自衛隊の統合部隊を不断から避難させておき、有事の反撃に活用する。
暇な陸上自衛隊を、戦車や大砲中心から、BMDや攻撃ミサイル部隊中心に改編し、脆弱な戦闘機増強では期待できない抑止力向上に貢献させる。
●「組織防衛」能力の向上にのみ精力的な陸上自衛隊に引導を渡すため、陸自出身の佐藤正久政務官に「陸自ミサイル部隊化」を担当させる
米国がうるさく言うので、アジア太平洋諸国の「能力向上」にもそれなりに取り組む。その為、退任間近にゴラン高原やハイチのPKOは終了させておいた。
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後半は、まんぐーすの勝手な邪推です
ちなみに、陸軍のミサイル部隊化は、米国では既にシンクタンク等では正論として一般的に議論されている方向性です。米陸軍も無視できなくなっています
「米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
「陸軍トップがミサイル重視検討発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-17
最後に再度申し上げると、森本氏の上記防衛構想の最大の障害の一つは、森本氏が導入を決定した「亡国のF-35」です。
「亡国のF-35」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302846744-1
元防衛大臣・石破茂氏の防衛省観
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29-1
ishiba2.jpg●陸海空の装備が、本当に統合オペレーションを頭に入れて、陸は、海は、空はとこれだけという予算の立て方をしているかというと、私は3年間防衛庁や防衛省にいたが、絶対にそうだとは思わない。陸は陸、海は海、空は空・・それは絶対譲らない。シェアも変わらない。運用だけ統合でやっても、防衛力整備を陸海空バラバラにやっている
●陸海空がバラバラに内局へ行って、内局の分からず屋と言う話になって、政治が馬鹿だと言って、それでおしまい。そしてみんなが何となく天を仰いで、この国はだめだとか言っている。こんな事ではどうにもならない!
森本前防衛大臣が語るシリーズ
「退任直後:大いに暴露語り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-22-1
「大臣就任時の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25

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