米艦隊司令部が艦艇運用開発隊に指示
米議会の無人艦艇への不信感を払拭するため
2日付Defense-Newsは、昨年12月19日付で米海軍艦隊(Fleet Forces Command)司令部から艦艇運用開発隊(Surface Development Squadron)宛に出された指示文書を取り上げ、今年9月までに中型と大型の無人艦艇運用に関わるコンセプトと諸課題について報告するよう命じていると紹介しています
米海軍は現在の290隻体制から355隻体制への増強を悲願とし、厳しい予算状況と人材募集の中で、無人艦艇導入を積極的に推進しようと考えているようですが、米議会は運用コンセプトや導入に関する諸問題への対応が検討不十分な中で、安易に予算を認められないとの厳しい姿勢で米海軍と大激論の末、2隻の大型無人艦艇の試験的建造をやっと認めたところです
しかしその前提として米議会は、無人艦艇の設計を開始する前に、運用コンセプトや諸課題への対応をしっかり説明せよと米海軍に釘を刺し、かつ、予算を認めた大型無人艦艇にミサイル等の垂直発射機VLSの装備を現時点で認めないとの姿勢を堅持しています
米海軍は、中型の無人艦艇をISRや電子戦用に、大型タイプを水上戦での攻撃任務艦として構想しているようですが、シンクタンクの研究者などからは、米議会の懸念は当然だとの声が多く聞かれることも確かなようで、艦艇運用開発部隊(Surface Development Squadron)が命ぜられた2月の中間報告と9月に最終報告で、米海軍の本気度が試されることになります
2日付Defense-News記事によれば
●Defense-Newsが確認した12月19日付の文書は、艦艇運用開発部隊に対し、無人艦艇に関する「組織編制、人員配置、訓練体系、装備、維持整備、及び中型及び大型無人艦艇の水上艦艇部隊や空母攻撃群への融合要領」について報告することを求めている
●また文書は、「中型無人艦艇が多様なモジュール形式のペイロードを搭載して各種ISRや電子戦任務を行い、大型無人艦艇は水上戦闘における攻撃任務を主にする」との前提で、「無人艦艇の運用コンセプトを踏まえて、初期運用態勢確立の定義を明確にする」ことも求めている
●検討を命ぜられた艦艇運用開発隊(Surface Development Squadron)は、2019年に新設されたばかりの部隊で、ステルス駆逐艦ズムウォルト級DDG-1000や無人艦艇試験艦Sea Hunter等々の運用検討のために編成された部隊である
●同部隊はまた、無人艦艇の指揮統制、相互運用性、通信、受け入れ海軍基地に必要な装備、維持整備、運用に必要なセンサーなど支援システム、運用支援要員の教育訓練体系なども検討することになる
●昨年10月、米海軍の無人艦艇運用に関する準備や検討に懐疑的な米議会を意識しつつ、米海軍の戦力造成部長であるJim Kilby海軍中将は講演で、「無人艦艇の運用検討は容易なことではない。米議会から求められている説明をすることは、非常に難しい課題に分類できる」と語り、
●「米議会が期待しているのは、第1段階、第2段階、第3段階と言った具合に、順序を追って実績を積み上げて手法であり、海洋衝突法をまずクリアーし、次の段階に進むと言ったイメージである」と自身の認識を語っている
●米議会の上院下院と米海軍が結んだ合意文書には、「米海軍の研究開発担当次官補が米議会に無人艦艇運用や調達戦略等を説明するまでは、設計費の執行も認めない」との一文が記されている
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米海軍は現在の290隻体制から355隻体制への増強を悲願とする一方で、米国防省としてはうなぎのぼりの艦艇建造費のままでは許容できず、宇宙やサイバーや電子戦や超超音速兵器など将来戦力に資源を配分したい意向で、再び空母トルーマン早期強制退役案や、イージス艦や攻撃原潜等の建造ペースダウンをホワイトハウスと協議しているようです。
そこで負けじと米海軍は無人艦艇でコスト減を狙おうとしているのですが、あまりに急速な無人艦艇調達推進に米議会や専門家から、「しっかり検討した結果なのか?」と疑問を投げかけられている現状です。
米海軍艦艇の衝突時案や汚職事件、更には米海軍トップ候補の規律違反による就任直前の辞任など、良いニュースが絶えて久しい米海軍は、今後どこへ向かうのでしょうか???
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