臨時国防副長官が米海軍の方向を語る

Fox-C.jpg11日、昨年末から臨時の国防副長官を務めるChristine Fox女史が、サンディエゴで開催の海軍関連軍需産業の会議「WEST 2014」で講演し、今海軍内で議論になっている事項について「ちらりと」持論を展開しました
本講演後の13日にRobert Work氏が正式な国防副長官候補として推挙されたのですが、社会の視線がWork氏に向く前に、自分の考えを訴えたいとの思いがあったのかもしれません
全体には、「タフな決断を先送りには出来ない」、「過去の軍縮時に問題となった空虚な軍にしてはならない」、「人員の削減はやむを得ない」、「過去10年間のように米軍が自由に行動できた環境は将来保証されない」等々の論調です
また、細部には言及していませんが、「2014QDRの取りまとめは終了した」と語っています
Christine Fox女史は講演で
Fox-C4.jpg●米軍には、我が有利な環境下で特定の任務にしか適さない「ニッチな」装備品ではなく、アジア太平洋リバランスを考えれば、より残存性が高く攻撃力の強い水上艦艇が必要である。より高等な敵軍を想定し、防御力が高く火力の強い艦艇がもっと必要だ。
●ニッチな装備品も海軍の装備として価値はあるが、より強力な火力と高い残存性が求められる。プレゼンスは必要だが、更に能力と目的遂行力を備えたプレゼンスが必要
航空アセットは、安全な地域や遙か彼方から攻撃が可能となる能力が必要だ。それがミサイルか、爆撃機か、戦術機か、有人無人にかかわらず
●我々には柔軟性を持った能力の組み合わせが求められており、全てのタイプの紛争や軍事作戦に対応する能力が必要である
●国防予算が削減傾向になると、最前線の戦闘装備保持や維持に注目が集まり、それら戦闘装備の効果を高める触媒(enablers)が犠牲になりがちだ。しかし我々は触媒が決定的な戦力増強効果を持つことを知っている
●我が軍がこれまで圧倒的であったため気にしていなかったが、潜在敵が電子戦の世界で我を脅かそうとするなら、それは極めて重要な触媒であり、今こそ新世代の電子戦分野に投資を開始すべき時である。
米海軍協会webサイトは本講演について
Fox-C5.jpg●Fox臨時副長官は決して特定の装備品名に言及しなかったが、脆弱性が高いと評判の良くない沿岸戦闘艦LCSを削減すべきと主張しているFox女史の動きに沿ったモノと考えられる
●航空アセットに関する発言は、現在国防省内でも議論が分かれているUCLASS(空母艦載無人ステルス機)の要求性能議論に関係しているのだろう。
●ISRを重視して攻撃能力を求めない考え方、ステルスかつ攻撃力を求める考え方、またステルスは程々で空中給油能力を要求する考え方等が、UCLASSを巡り交錯している中での発言である
●間もなく正式に副長官に就任するであろう沿岸戦闘艦LCS 推進派だったRobert Work氏が、3月初旬に提出される2015年度予算案にどの程度影響を与えられるかは不透明である
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「電子戦重視」の発言は、本会議の主催者の一つがAFCEAという電子や通信関連業界団体であることとも、関係しているかもしれません
ADIZ.jpg国防副長官人事と関連の「噂」から見ていると、オバマ政権やヘーゲル長官が、予算削減の過程で米軍をどのような方向に導こうとしているのか、はっきりイメージできません
軍需産業や議員や政党や外国関連のロビイスト等々、様々なプレーヤーがいるだけで、あるべき姿に導こうとする指導者がいない状況なのかもしれません
このような状況では、結局声の大きいモノに引っ張られるのでしょうが、「F-35と心中」や「迷走するUCLASS」や「意味不明なNIFC-CA」に日本が振り回されないことを祈るばかりです
関連の過去記事
「国防副長官候補にRobert Work氏」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-09
「2015年度予算の噂:空母削減!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-28
「意味不明な米海軍NIFC-CA」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26

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