Why is the US spending so much on the F-35?
2月21日にAFP通信が発信した、Dan De Luce記者の記事「なぜ米国はF35に巨額を費やすのか?:Why is the US spending so much on the F-35 fighter?」が、日本語訳されて3月15日に紹介され、F-35を取り巻く問題を非常に端的に表現していると話題になっています
既に多くの方が取り上げ、本ブログでもご紹介済みの内容が多いのですが、「亡国」に繋がりかねない問題装備の話題ですので、要点に絞って再度ご紹介し、併せてまんぐーすなりに補足コメントさせていただきたいと思います
なお当該記事は
原文英語版→http://news.yahoo.com/why-us-spending-much-f-35-fighter-023405324.html
又は英語版→http://www.timesofisrael.com/why-is-the-us-spending-so-much-on-the-f-35-fighter-jet/
日本語版→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140315-00000011-jij_afp-int
Yahoo日本語版をつまみ食いご紹介
(かっこ内は勝手な補足コメントです)
●米国防省史上、最も高価な兵器計画となったF-35は、技術問題と開発遅延が続くなかでもキャンセルの予定はない。計画は予定より7年も遅れ、開発費用も当初予算を約17兆円も超過しているのに
●F35計画が継続されることに疑いはない。だが、最終的な製造機数や、開発参加国のうち何か国が導入するかは不透明
なぜ開発計画は中止できないのか?
●米空軍と海兵隊はF35の代替になり得る機種に投資しておらず、F35以外の選択肢がない。
●米海軍はF35をやめてF/A-18を追加調達することも可能だが、空軍などと歩調を合わせろという強い圧力を受けている。(海軍が抜けると、製造機数減少→価格高騰→外国も含め調達機数の更なる減少、との「死のスパイラル」にはいるから)
●主契約企業のLockheed Martin社は、全米50州のうち45州にF35関連の仕事を分散させ、(議員の地元経済へパイを分配して弱みを握っているので)米議会でF35計画は広い支持を得ている。
●複数の同盟国もF35計画に参加しており(させられており)、米政府はこれらの国にF35を提供すると約束している。
費用はどれくらいかかるのか?
●F-35は当初、米国の同盟国も参加して開発される多用途戦闘機なので、開発費用は抑えられるとされていた。
●だが、計画の費用は膨れ上がり、当初の見通しより68%も高額になるとの予想がある。現時点で米国防省は約40兆円で2443機を調達する計画。単純計算で関連装備を含め1機当たり約164億円。
●米会計検査院GAOは、退役までの維持整備経費も入れると、全体の費用は100兆円を超えるとしている。
開発遅延の理由と影響は?
●(最も運用開始を急いでいる海兵隊型でも、)2016年までは実戦配備されない見通しだ。(更にこの期限達成も既に怪しくなっている)
●試験が終わる前に生産開始し、現在も試験をしながら生産を並行していることが、進捗が遅れた主な原因。ソフトウエアのバグやその他の技術的問題によって作業や設計のやり直しを強いられ、生産の遅れに。
●2400万行に及ぶソフト開発は頭痛の種となり続け、(現在も完成の目途は無く、)F35の性能と信頼性は期待された水準に達していない。
導入を計画している国は?
●米国以外では豪、英、カナダ、デンマーク、伊、蘭、ノルウェー、トルコの8か国がF35の開発計画に当初から参加している。
●この他、イスラエル、日本、韓国、シンガポールが導入を決定または導入に関心を示している。
●既にF35を発注した国もあるが、1機当たりの価格は上昇を続けていることから、調達計画は今後変更される可能性もある(既に上記の国のほとんどが、当初計画から削減又は再検討を実施中)
おまけ
●米空軍参謀総長は人気TV番組で、「(F35と遭遇した敵機は)戦闘中だということに気づくまもなく撃墜されるだろう」と述べた
●パイロットは、先進的なヘルメットのバイザーに投影された映像によって、前例のない全周360度の視界を手にし、座席の床の下も透視できる
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まんぐーすが独断と偏見でコメント
機体レベル
●試験中に見つかった機体の不具合是正のため、継ぎ接ぎ改修を重ねた結果、機体重量がどんどん増加。これを相殺するため、安全や機体防護装備を削ってその場しのぎの状態。被弾に弱いとか、安全係数が低い等の指摘多数
●飛行試験の約半分を消化した時点辺りから、機体の「クラック:亀裂」問題が次々表面化。どの航空機開発にも付き物だが、機体隔壁やエンジン主要部品にも見つかり、開発スケジュールに暗雲が。。。
政治レベル
●工場を全米に分散させて米議員を黙らせているようだが、日本で国会議員らが問題にしないのはなぜか? 野党議員は単純に知識不足だろうが、与党議員はTPP妥結又は農業保護のため、F-35購入を貢ぎ物にしているのかと疑ってしまう
●国内の産業基盤維持のため、といえば聞こえは良いが、日本の地理的環境で脆弱性がますます高まる戦闘機に多額の投資を続けているのは、産業界との親密な関係も考えられる
軍事戦略レベル
●F-35調達数維持に固執で米海軍が奇妙な方向へ。有人機であるF-35を最前線のISRセンサーとして使用し、艦載無人機をステルス性不十分な空中給油機として活用する等の珍妙なNIFC-CA構想(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26)を推進中
●ちなみに、このNIFC-CA構想は米空軍との協議無しに進められており、米空軍関係者が困惑している
●米国の情報及び研究機関が、中国軍の脅威を、大量の弾道/巡航ミサイルによる初動攻撃やサイバー・宇宙での攻撃と捕らえ、日本の飛行場の脆弱性や米戦力の分散を主張している中、米側が東シナ海の航空優勢などを持ち出して5世代機の購入を迫る支離滅裂
国内問題
●中国は安価に弾道/巡航ミサイルや各種誘導兵器を量産しており、少なくとも日本の航空機運用基盤の脆弱性は加速度的に高まっており、戦闘機の有用性はウナギ下がり
●これまでの経験から、戦闘機を国内生産すると海外流通価格の2倍にもなりえる。F-35は1機200~300億円以上になることが確実。これで日本の防衛費は枯渇。
●つまり、ISRや電子戦能力の強化、指揮統制システムや作戦運用基盤の強靱化、サイバーや宇宙分野への人材と資源の投入、日本の弾道/巡航ミサイル部隊構築等々の必要施策は、「有用性はウナギ下がり」で脆弱な亡国のF-35に吸い取られてしまう
関連のF-35記事
「米人気TV番組がF-35を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-20-1
「続:国防省評価室が酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-31
「国防省評価室が酷評」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-30
「米議会とF-35の馴れ合い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-08
「TPPの貢ぎ物か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-06
「国内生産で価格2倍にも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-11