4日、米国防省が議会に作成を命じられている2014QDR(4年毎の国防見直し:Quadrennial Defense Review)を発表しました。QDRは、国防長官がそのビジョンを語り、国防戦略を再整理し、どのように統合戦力をその達成のために適応させていくかを語る文書で、文字通り4年毎に発表されます。
ただし、発表会見をWormuth副国防次官(次期政策担当国防次官にノミネート)を中心に、統合参謀本部の中将と国防省の会計監査官レベルで行ったことが示すように、2012年発表の国防戦略(DSG)に沿った特に目新しい中身のないご紹介済みの内容で、2年間ぐらい日光にさらされて「セピア色」になった写真のイメージがします
例えば、日本のメディアが盛んに取り上げた「米海軍艦艇の6割をアジア太平洋に配備」は、既に2012年6月にパネッタ国防長官がシャングリラ会合で発表しており、艦艇数全般の削減も視野にある中であまり意味をなしていません
また、中心的概念のアジア太平洋リバランスについても、太平洋空軍司令官が「強制削減や中東情勢の為に計画通りに進んでいない」と認めている状況であり、新たな具体的中身があるようには思えません(概要ペーパーを見る限り)
「パネッタ長官シャングリラ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「リバランスの実態を語る」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-11
たぶん最も主張したかったのは以下の部分
●(強制削減レベルの予算に上積みが認められた)2015年度予算案レベルであれば、米国の国益と2012年発表の国防戦略(DSG)を守り進展させることが出来るかもしれない。それでも、いくつかの任務についてはリスクが増加している。
●しかし、もし2016年度予算に強制削減が再びそのまま適応され、強制削減が見直されず、予算の将来見通しが不透明なままであれば、任務遂行リスクは急激に増大するだろう(以上は概要資料)
●強制削減が実施されれば、ほぼ同時に2つの戦いを行い勝利する国防省戦略は遂行不能になる。より小さな戦力では、同時に世界中に存在することは出来ない。関与や同盟国の支援をより選択的に実施せざるを得ない(会見で)
概要資料(2ページ)や会見からつまみ食いすると
●QDRはアジア太平洋の重要性を強調しているが、中東にも依然多くの「friction points」があり、テロは引き続き変化する侮れない脅威である
●国防省の取り組む3本の柱は、「protecting the homeland」、「building security globally」、「projecting power and winning decisively」である。
●これに加えて重視するのは、「innovation」と「adaptability」、適応力に関しては特に財政的制約下への対応に取り組む
●前方展開プレゼンスについて新たなパラダイムを視野に入れている。展開兵力をどう取り回しするか、同盟国との緊密な連携をどうするかをQDRで検討している
●イノベーションについては、技術的優位性を維持確保するため、科学技術分野での「種」の保護について検討している
●QDRでは、陸軍や海兵隊戦力の削減について、なぜそのレベルの削減が妥当かを議論している
●米軍全体が小規模になっても、戦略実行のために守るべき鍵となる重要分野は、
Cyber、Missile defense、Nuclear deterrence
Space、Air / Sea、Precision strike
Intelligence, surveillance, & reconnaissance
Counter terror and special operations
●国防省自身の改革やリバランスも重視分野。国防省(ペンタゴン)職員の2割削減や新たな基地の閉鎖や統合がなぜ必要かを説明している
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思いっきり手抜きになってしまいましたが、4日の発表から2日経過してもフォロー解説記事が出ないので、中身を読む気力が失せています
何か新たにご紹介すべき内容に気づいたら、取り上げます。。。たぶん
2014年QDRをしっかり確認したい方は
「2014QDR概要説明資料」→http://www.defense.gov/pubs/20140302_FINAL_QDR_Fact_Sheet_v13_CLEAN.pdf
「2014QDR特設webページ」→http://www.defense.gov/home/features/2014/0314_sdr/qdr.aspx
(特設webページには、2014QDR本文、記者会見内容、過去のQDR一覧、関連の解説記事等々が紹介されています)