12日付の「海国防衛ジャーナル」が、同日付で「National Interest」電子版に掲載された米海軍大学等の研究者による中国巡航ミサイルに関する論文を紹介しています。
また16日付の同ブログでは、12日付論文の元ネタである同じ米海軍大学等の研究者による書籍から、中国巡航ミサイルの一覧を主要データと共に紹介しています
本当に分かりやすく、端的に中国軍の巡航ミサイルの現状と特徴等を整理しており、日本の「戦闘機命派」や「組織防衛しか知らない派」に是非読ませてあげたい内容です。
本日は恐縮ながら、まんぐーすの勉強と頭の整理のため、12日付論文紹介記事の概要紹介を試みます。是非、両方の記事を原文でご覧ください
なお大前提として米海軍大学関係者は、中国軍の優先事項は「台湾に対する軍事作戦。米国の介入を抑止もしくは失敗させること」と考えていますし、その通りだと思います
「海国防衛ジャーナル」の秀作セット
12日付論文紹介→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50727541.html
16日付CMデータベース→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50727662.html
12日付の論文紹介記事の概要
(論文タイトルは「China’s Cruise Missiles: Flying Fast Under the Public’s Radar」By Dennis Gormley, Andrew S. Erickson, Jingdong Yuan)
中国軍での巡航ミサイルの位置づけ
●中国の巡航ミサイル戦力の数と能力は、地域の安全保障と抑止に大きな影響を与え、台湾有事はもちろん、各所で係争中の海洋領有権問題においてもインパクトがある。
●中国は、A2ADの鍵として「暗殺者の矛:assassin’s mace」を得ようとしており、それが対艦巡航ミサイル(ASCM)と対地巡航ミサイル(LACM)である。
●にもかかわらず、また中国のLACM(対地CM)はグアム、ダーウィン、ディエゴ・ガルシアを射程に収めるのに、米軍を含めて巡航ミサイル脅威への対応は驚くほど疎かにされている。
巡航ミサイルの特性
●陸・海・空から発射可能で、射程も長く、精密通常攻撃任務に汎用性の高い兵器である。更に弾道Mとの併用若しくは短時間で特定目標への大量発射で敵防衛力を飽和させうる。
●キャニスターに収納され、過酷な環境下でも配備できる。コンパクトなため地上発射プラットフォームは高い機動性を持つ。撃っては移動する「shoot-and-scoot」戦術が可能で残存性が高い。
●超音速、低レーダー反射断面積、低空飛行の組み合わせにより、敵の海陸の防空システムに脅威を与え、突破可能性を高める。
●巡航Mの最適運用には、正確かつ即時性のあるISR、高い残存性、作戦計画、指揮・統制・通信ネットワーク、正確なBDA攻撃評価手段などが必要。
●中国は、米国のような他国の巡航M開発にも注目しており、第1列島線への対艦巡航M配備を提案したランド研究所の報告書)に関心を持っている。
対艦巡航ミサイル(ASCM)開発
●中国は露の超音速ASCMを輸入しつつ、高性能な国産ASCM「YJシリーズ」も開発。中国海軍のほぼすべての最新型水上艦及び通常動力潜水艦はASCM発射能力を持つ。
●中国海軍はこれらアセットをASCMの「移動式発射機TEL」として運用する、と米海軍大学のW・マーレー教授が指摘。
●中国は巡航ミサイルの誘導能力を改善し、衛星によるナビゲーション能力向上も進めている。しかし、水平線以遠の目標照準は依然として課題。
●中国の研究者は、いかに西側イージス防空網を打ち破るか、敵の脆弱性を突くかを考えており、ASCMの大量同時射撃でイージス防空システムを飽和させるようと準備している。
●国内研究の一貫したテーマは、中国艦船自身の巡航Mに対する脆弱性克服だが、敵艦を大量の火力で飽和・威嚇することで自身の弱点を補えると北京は考えている。
対地巡航ミサイル(LACM)開発
●2種類のLACMを配備;「YJ-63」空対地巡航ミサイル(射程200km:TV誘導)、「DH-10」地対地巡航ミサイル(射程1,500km)。DH-10はGPS誘導/慣性航法方式で中間誘導は地形照合システム、CEPは10m
●自国の北斗/コンパス衛星測位システムにより、巡航M誘導の米GPSへの依存を低減しようとしている。
●国産のLACMを補完するために、中国は外国のシステムを購入。代表例がイスラエル製の対レーダー無人機「ハーピー」とその自国複製品。ロシア製「3M-14E クラブ」を保有し、キロ級潜水艦に搭載の可能性も
●DH-10の空中発射型を「CJ-10」といい、H-6K爆撃機(6発搭載可能)からの発射試験も報告。CJ-10はトマホーク ブロックIVに匹敵する。核弾頭搭載LACM「CJ-20」も開発中らしい
●中国メディアは、H-6Kは日本の軍事基地をCJ-10で一斉攻撃可能で、戦略的抑止力を持つと主張。
●最近の報道によると、海軍はASCM「YJ-18」とALCM「DH-10」を同時搭載して海上試験を実施した模様。多くの中国海軍キャニスターは8~16発格納で、ASCMとLACMはトレードオフの関係。
●将来、最新駆逐艦052D型がASCMとLACMを同時に搭載可なVLS(垂直発射システム)を装備する。すでに052C型駆逐艦もYJ-62も搭載可脳
台湾有事におけるASCMとLACM運用法
●台湾有事の際に米海軍戦力や基地を攻撃するA2AD能力。大量の弾道Mと併用し、LACMは台湾の防空処理を複雑化
●敵のミサイル防衛を破る最良の手段がLACMと弾道ミサイルによる大規模一斉攻撃であるとも考えている
●中国の作戦計画者は、LACMと弾道ミサイルの同時使用は敵空軍基地に衝撃と麻痺を与え、後続の航空攻撃の効果を高めると強調する。空港のハンガーや指揮・統制施設への精密攻撃にLACMが効果的であると見ている。
●中国は、台湾の重要施設を射程に収めるLACM・弾道ミサイル「ランチャー」を255~305基配備している。
中国ASCMやLACMの課題3つ
●1つは、C4ISR能力は十分か?
•マーレー教授は、「ASCMは、遠方目標照準に大きく依存。中国は何が必要かを正しく評価して積極的に投資している。OTHレーダーと偵察衛星がその証拠」と指摘。
•同教授はまた、目標照準データを各アセット間で共有するネットワーク能力が中国には必要だと言う。
•亜音速のDH-10/CJ-10は、1,500km先の目標まで1時間以上かかり、先進的な防空システムを備えた相手は、途中で撃墜する可能性がある
●2つは、複雑かつ多面的な航空・ミサイル攻撃の組織化
•作戦の成否は、人と技術の両ファクターに依る。ミサイルの波状攻撃という繊細な作戦を成功させるには、担当の各部署間の調整が死活的に重要
•協同火力運用センター(Firepower Coordination Center(FCC))を統合戦域司令部(Joint Theater Command)の内部に設立する構想を持つが、中国が複雑な統合作戦を調整する自信を持っているのかどうかは不明。
●3つめは、ミサイルの効率的な運用・効果的かつ正確な攻撃判定(bomb damage assessment(BDA))が効率的なLACM運用に必要。
•トマホークの最新型であるブロックIVは、初期型配備の1970年代から運用データを蓄積・分析して今日に至る。中国は30年も不要だろうが、時間と労力は必要。
•中国は実戦経験が不足しているため、独自の学習プロセスにフィードバックを反映する能力に乏しい。中国の指揮・統制能力は不明
米軍や関係国への提言
●ASCMの利点を考えると、米海軍水上艦がハープーンしか持っていないのは怠慢で数量も少ない。米側がASCMの種類も量も制限しているのは不適当。
●中国の巡航Mに対する防衛力は存在するが、技術上・作戦上の対抗策を開発する努力を続けなければならない。
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付け加えることはありません。
でも、もう一度だけ言わせて・・日本の「戦闘機命派」や「組織防衛しか知らない派」は絶対に読みなさい!!!
「海国防衛ジャーナル」の秀作セット
12日付論文紹介→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50727541.html
16日付CMデータベース→http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50727662.html
世界共通の中国軍事脅威観&シナリオ(日本を除く)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30