米空軍の新「Space Fence計画」を学ぶ

Space Fence.jpg27日付Defense-Newsが、米空軍が予算に苦しみながらも推進しようとしている宇宙監視システム(新Space Fence計画)の現状について紹介しています
宇宙監視とは、宇宙ドメインでの戦いを遂行するには、まず宇宙で何が起こっているかを把握することが重要だとの認識の下、地球周辺に漂う50万個もの衛星や宇宙ゴミを、レーダーや光学センサーで発見追跡しようとする任務です
「新Space Fence計画」と呼称するのは、従来の旧システムが予算削減のため、2013年10月に運用停止しているからです。1960年代初頭に産声を上げ、海軍から空軍に引き継がれてきた任務でしたが、宇宙物体の5%程度しか把握できない性能等から運用停止が決定されたようです。
新「Space Fence計画」の概要と状況は
Space Fence2.jpg●米空軍宇宙コマンド司令官William Shelton大将は、「新Space Fence計画は米国の宇宙能力において極めて重要であり、高い優先度を持つ事業だ」と昨年の空軍協会総会で訴えている
●新Space Fence計画は昨年運用を停止した宇宙監視システムと混同されやすいが、性能は全く違う。米空軍の発表によれば、新システムはソフトボール程度の大きさの宇宙物体を、1200マイルの距離で発見、大きさ判読、追尾可能である。
●現在システムの機種選定が行われており、Lockheed MartinとRaytheonが米空軍の決定を待っている。強制削減の影響やSCMR検討等により、提案要求書の提示や選定業務が1年遅れとなっているが、5月には決定されるだろう
5月19日から22日に開催の宇宙シンポジウムの時までには、勝者が明らかになっているだろうといわれている
●ロッキードの担当副社長によれば「マーシャル諸島のKwajalein Atollに設置される、かつてない大きな第1号のSバンドレーダーは2018年運用開始の計画であり、容易な開発ではないため準備期間も確保されている」と質問に答えた
●レイセオンの報道官も「Space Fence計画は、わが国の安全保障に欠かせない宇宙情勢認識を確保する上で必要な情報収集を強化する」と回答してくれた
Space Fence4.jpg●この種のレーダーは、赤道近くに配置することにより東西方向に最大広角の視野を確保できる。地上固定のレーダーが「フェンス」のように、地球の自転にあわせ宇宙空間をカバーして監視する。なお旧システムは、米本土内に3つのレーダー波送信基地と6つの受信基地で構成されていた
米空軍は、第2号のレーダーを豪州に設置したいと考えているが、予算の関連で凍結されている。2つのレーダー情報を総合して宇宙の状況認識を高める全体計画であるが、第1号機が運用開始した時点で2号機の判断を行う模様
その他にも米空軍は・・・
●米大陸Antiguaに配備していた「C-band radar」を豪州に移設中
DARPAが開発した光学センサーも豪州に設置予定で、静止軌道にある宇宙物体の状況掌握能力を大きく向上させる予定
●昨年11月の「日米2+2」では、JAXAが持つ衛星監視情報を米国の宇宙監視網と共有する方向で合意
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Space Fence3.jpg非常に基礎知識が不足している分野ですが、強制削減の影で「犠牲になっている」分野のようです
Space Fence計画の重要性や効果が判然としませんが、状況が掌握できても手出しが出来ない、無法者が得をする世界、なのかも知れません。
残念ながら、何か大きな事件や問題が生じないと、人々の関心が集まらない分野なのでしょう。
宇宙状況監視の過去記事
「日米2+2で宇宙協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04
「豪へ宇宙監視レーダー移設合意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15
宇宙での戦いを訓練
「国際宇宙演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19
「サイバーと宇宙演習の教訓1」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「サイバーと宇宙演習の教訓2」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

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